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【甲子園】広陵高野球部の暴力事件報道 「注意は公表しない」と高野連…“連帯責任”での出場停止文化の変革か

2025年8月5日に開幕した『第107回全国高等学校野球選手権大会』(写真・共同通信)
8月5日に開幕した『第107回全国高等学校野球選手権大会』。大会3日めとなる8月7日、第4試合に登場する広島県代表・広陵高硬式野球部の暴力事件報道について、日本高等学校野球連盟(高野連)は、「学生野球憲章に基づく『注意・厳重注意および処分申請等に関する規則』では、注意・厳重注意は原則として公表しないと定めています」とした。
広陵高の説明によれば、事件が発生したのは2025年1月下旬。当時1年生だった野球部員が寮内での禁止事項を破ったため、指導と称して複数の2年生部員による暴力行為を受けたという。その後、事態を把握した学校側が関係者に聞き取りを行い、広島県高野連と日本高野連に報告。3月上旬に高野連から処分を受けていた。
また、大会初出場となる富山県代表・未来富山高でも部員による暴力行為が発覚。事を把握していながら富山県高野連へ報告を行わなかった野球部長に対して、3カ月の謹慎処分を科した期間については、被害部員と加害部員の和解を認識したことからだった。
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「かつての日本高野連なら、特に暴力問題に関しては敏感でしたね。報告義務を果たしたり、当事者同士で問題が解決していても出場停止への流れは、確かにありました。そこには日本独特の“連帯責任”があったと思います」(アマチュアスポーツ担当記者)
その流れが変わったのが「今年2月の終わりだった」と続ける。
「日本学生野球協会が都内で評議員会を開き、高校、大学の野球部員の日本学生野球憲章違反行為と野球部への措置への運用内規について、処分基準を明確化したんです。いくつかの変更がありましたが、大きなものは“連帯責任”に関すること。内藤雅之事務局長が『連帯責任の処分をできるだけ避けて、違反した選手には出場登録資格を停止する措置を明確化した。違反事犯に関わっていない人は、出来るだけ大会に出てもらいたい』と明言したのです。これにより今大会に広陵、未来富山の両校が出場できる流れとなったのでしょう」(同前)
ちなみに歴代の甲子園大会では春に13校、夏に6校と計19校が出場辞退となっている。なかにはコロナ禍など致し方ない事案もあったが、たった1人の違反選手がいただけで部全体の責任が問われて出場停止、あるいは甲子園辞退に追い込まれた高校は過去に多く存在するのだ。
「これまでの出場辞退に関しては、『そこまでやらなくても』といった意見が多かったのは事実です。反面、『責任を取るのは当然。今回の広陵高の問題にしても、被害生徒は転校しているようなので、辞退しないのはおかしい』→といった声もあります。そこは、いつの時代にも賛否両論に分かれるのでしょう。ただ、“連帯責任”の流れから一歩、抜け出たことは評価されるべきだと思いますね」(スポーツ紙デスク)
今大会、始球式を務めたのは、中京大中京高の女子軟式野球部に所属する森本愛華さん。これまで元プロ野球選手が務めることが多かったなか、女性は第99回大会以来8年ぶりのことで、高校生は初めてだった。
変化はほかにも見られる。長い高校野球の歴史のなかで派手なユニホームは敬遠されがちだったが、今大会に出場する栃木県の青藍泰斗高の濃い青のユニホームは「まるで青空だ」と評判を呼んでいる。また、猛暑を考慮して式典短縮や試合時間の変更がなされるなど、少しずつではあるが甲子園大会が変わろうとしている。