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「野球部は中井家の家業みたいなもの」広陵高校、甲子園出場辞退も監督だけが“記録更新”…大きすぎる代償

8月7日におこなわれた広陵高校1回戦での、中井哲之監督の様子(写真・馬詰雅浩)
「そもそも広陵は中井哲之監督の御子息が部長でコーチ、夫人が寮母。広陵高野球部とは中井家の家業みたいなものなんですよ」
こう語るのは、高校野球関連出版物の編集者だ。野球部内の“暴力事案”をめぐり、SNSでの炎上状態が続いていた広島県の広陵高校が、現在おこなわれている第107回全国高校野球選手権を大会中に出場辞退。主催する朝日新聞社と日本高野連から、8月10日に発表された。
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広陵高校側からの辞退の申し入れがあり、当日の朝に学校側から決定が知らされた野球部員らは、発表前に宿舎を出て広島への帰路についたという。暴力事案を取材した全国紙の社会部記者が明かす。
「暴力事案が告発されたのは、大会直前に投稿されたSNSでした。学校は、2025年1月に『部員間の暴力を伴う不適切な行動』が起きていたと日本高野連に報告。3月5日の審議委員会を経て厳重注意処分を受けたと明らかにしました。
報告書では加害生徒は4人で、『胸ぐらをつかむ』、『頬を叩く』、『腹部を押す』といった暴力が確認されたそうです。被害生徒は3月に転校しているということでした」
高野連が学校から受けた報告とSNSの告発内容とは加害生徒の人数や暴力の内容の一部に齟齬もある。しかし暴力事案があったのは事実で、これを公表していなかった理由を同校では、「被害生徒及び加害生徒の保護の観点」と説明していた。
同校は処分を受けたまま、広島県大会を勝ち抜き、そしてさらに全国大会でも1回戦を突破していた。ここに至って出場辞退を余儀なくされたのは、1回戦の当日の7日、SNSで別の“暴力事案”が選手と指導者の実名を上げた別の告発があったからだ。
「6日に学校が、『本校硬式野球部をめぐるSNS上の事案について』という調査内容を付けた文書を公表。高野連も出場の可否に変更なしとしました。ところが、7日のSNSでは別の暴力事案について、詳細かつ具体的な告発がされました。本当であれば、性加害と取れる内容もあり、非常に深刻な事案です。
高野連も、元部員から新たな事案として情報提供があったことを、7日に明らかにしています。学校側に確認したところ、『確認できなかった』と回答があり、さらに、『第三者委員会を設置して調査中』との発表でした」(同前)
現状2つの事案が浮上していることは事実で、学校側の暴力事案への一連の対応が不適切であったのは間違いない。冒頭の編集者は、広陵高校の評判について、こう明かした。
「暴力事案は、高校野球の取材者の中ではある程度、知られていました。ただ以前のように、部員個人の不祥事が連帯責任になりチームごと出場辞退になることは、高校野球界全体で、最近はほとんどなくなっているんです。なので調査をしつこくしていれば、処分は一部の生徒にとどまり、ここまでの混乱はなかったはずです。
じつは1回戦の勝利で、中井監督は春夏通算で41勝。歴代の高校野球監督で単独7位になりました。今年のチームは全国優勝も狙える戦力で、中井監督が出場を強行したのは、彼自身の成績が狙いだとも言われています」
中井監督個人の成績は華々しく更新されたものの、野球部生徒らにとっては苦しい思いだっただろう。前出の編集者がこう続ける。
「SNSの投稿には、加害生徒とされる部員の実名が上げられていますから、出場を強行したことで顔も全国放送で流れてしまいました。実際、中継映像からの切り取り写真もSNSには投稿されています。この責任を学校はどう取るつもりなのでしょうね……。
もっとも、出場辞退を発表した堀正和校長は、『出場辞退は生徒を守るため』としつつも、『爆破予告があった』ともいう学生寮に部員を待機させる方針だと発表しました。出場辞退は中井監督から言い出したことのようです。学校も、中井監督も、今をもって、ことの重大さを理解していないのではないかと思います」
騒動はまだ収まりそうにない――。