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日本ゴルフ女子、“韓国1強” 時代終了で「賞金1億円超」7人の黄金期に…躍進のきっかけは「舎短取長」戦法

米女子ゴルフのポートランド・クラシックでツアー初優勝を果たした岩井明愛(写真・共同通信)
8月17日(日本時間18日)、米オレゴン州のコロンビア・エッジウォーターCCで『ザ・スタンダード ポートランドクラシック』最終日がおこなわれ、2打差の首位で出た岩井明愛がさらにスコアを伸ばし、通算24アンダーでLPGAツアー初優勝を遂げた。
双子の妹・千怜も5月におこなわれた『リビエラヤマオープン』で優勝。過去に姉妹による優勝は数例あったが、同年に双子V達成は史上初の快挙だ。
世界中のトップ女子プロが集い、勝敗を決するのがLPGAツアーだが、2025年シーズンでは日本の女子プロの活躍がすさまじい。1月30日開幕の『ヒルトン・グランドバケーションズ トーナメント・オブ・チャンピオンズ』から、8月20日現在、21試合を消化しているが、うち5試合で日本人チャンピオンが誕生している。
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3月の『ブルーベイLPGA』で竹田麗央が先陣を切り、4月の『シェブロン選手権』で西郷真央、5月の岩井千怜、8月には『AIG女子オープン』で山下美夢有、岩井明愛がそれぞれ初優勝を飾った。しかも西郷と山下はメジャー大会でのことだ。日本女子プロの層の厚さを見せつけている。
国別で優勝者の数を見ると、トップの日本に続くのが韓国の4試合だが、6月の「ダウ選手権」はダブルス戦だったため、優勝者は日本と同数の5人となる。3番めはアメリカとスウェーデンが3試合となっている。
長年LPGAツアーを取材してきたゴルフライターが語る。
「1950年に始まったLPGAツアーは、主戦場がアメリカのコースのため、当初はアメリカ人の賞金女王が多く誕生し、それは1990年代まで続きました。ただ、2000年代に入るとアメリカ人選手の低迷が続き、代わって出てきたのが欧州や豪州の選手たち。そして2010年代に入ると韓国勢が台頭してきます。
韓国の選手は、選手のみならず、家族がアメリカに移住し、あらゆる面のサポートを受け持ちます。意気込みからして他国の選手たちと違っていました。
その結果、2009年から2013年までの5年間で、賞金女王は5人中4人が韓国の選手という “1強時代” になりました。あまりの強さに、『コース上からアメリカ人ファンが極端に減った』と言われたほどです。
韓国勢の強さはその後も続き、さらにタイ勢も加わり、いつしかLPGAツアーは “アジアツアー” と揶揄されるほどになったのです。そんななか、同じアジアの日本勢は、残念ながら “蚊帳の外” 状態でした」
その傾向が変わったのが2024年からだという。
「宮里藍が引退し、日本人選手が勝てない時代が長く続きましたが、笹生優花が全米女子OP、古江彩佳がアムディエビアン選手権と、ともにメジャーに勝ったことが大きかった。
この結果を見て『私たちにもできる』と思った女子プロが大勢いたのです。実際、今季は史上最多の13人がLPGAツアーに参戦しています。まさに黄金期でしょう」(同)
しかし、いくら多くの日本人選手が参戦するようになっても、いきなり勝てるはずはないと思うのだが……。
「勝てるようになった、あるいは活躍できるようになった理由はいくつかありますが、まずあげられるのが試合ごとのスポット参戦ではなく、アメリカに拠点を構え、腰を据えて戦うようになったことですね。そこは大きいと思います。
また、スコアメイクに対する考え方を変えたのも大きな変化でしょうね。日本人選手は体格面で劣るため、飛距離が出ない。そのため、宮里のように勝っていても飛距離を出すためにスイングを変えたり、渋野日向子のように肉体改造に着手する選手が多くいました。その結果、失敗に終わり、かえって不調に陥ることも多かったわけです。
でも、いまの選手は、違った考え方をする。たとえば山下は身長が150cmで、第1打では他の選手に飛距離で相当置いていかれるわけです。でも、彼女は遠くに飛ばすことよりも、セカンドなどの寄せを磨くことを選んだ。
ようするに、短所を見直すよりも長所を伸ばすことを選んだわけです。“舎短取長” 戦法の結果、現地で山下のショットは『精密機械』と呼ばれています。
長年、“韓国女子一強” と呼ばれた時代が続きましたが、LPGAにおける勢力図が変わりつつあるのは間違いありません。それは、韓国が弱くなったのではなく、日本が急激に強くなったんです」(専門紙記者)
現在、賞金ランクでも日本人選手が上位に数多くいる。竹田が約3億7700万円で3位につけ、ほかにも4位山下、6位西郷が3億円を突破。1億円プレーヤーとなると、37位の古江の約1億1500万円まで、じつに7人にも及ぶ。
これだけ見ても日本の躍進は顕著だが、それ以上に誇らしい記録がある。それは開幕から17戦連続で日本人選手が必ずトップ10入りしたことだ。ようするに、毎週誰かが優勝争いを演じるのだ。
これも、LPGAツアーの勢力図が変わりつつある証拠だろう。