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WBCをネトフリが独占!「資金力は民放の10倍とも」テレビ関係者が明かした裏事情と、すがる“屈辱のおすそ分け”

WBC2023年大会の会見の様子
「完全に日本のテレビ局が“黒船”にやられた象徴的な出来事になったと思います」
こう語るのは大手広告代理店関係者。8月25日、米動画配信サービスのNetflixが、来春開催のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の日本国内での独占放映権を獲得したと発表したからだ。在京テレビ局関係者が次のように語る。
「Netflixが獲得したのは、WBCの日本国内における独占配信パートナー契約。WBC全試合において、日本国内での生配信とオンデマンド配信の権利になります。
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Netflixは、今や日本国内だけでも1000万人が加入している一大メディア。更なる拡大を図る同社とすれば、ライト層を取り込むにはWBCのような一大イベントはまたとないチャンスです。まだ現時点では正式に決まっていませんが、『WBC見放題パック』などを設定して廉価で加入を促すなどの施策が考えられます。
一方で、地上波テレビ局はWBCの高視聴率が見込めても、CMを売る枠は決まっています。そのため、仮に中継で1本400万円のCMを試合前、試合後、各攻撃の終了ごとに流しても、売り上げはせいぜい約8億円。事前、事後に関連番組などを流しまくっても、15億~20億円程度が天井になる。民放が放映権料に資金をつぎ込めるのは、限界でも10億円台前半になるのではないでしょうか。
一方のNetflixは、少なく見積もってもその10倍近くを支払っているだろう、というのが業界の見立てです。これでは全く相手にされなくても当然です」
WBCの前回大会では、プライムビデオとテレビ朝日、TBSが並行中継を実施。今春のメジャーリーグ開幕戦は、日本テレビとプライムビデオが並列中継した。「民放とネットが同時に中継する」という選択肢もあったのかもしれないが……。
「これまでは、主催のWBCI、すなわちメジャーリーグ機構側が、日本のテレビ局の顔を立てていた、ということでしょう。来春のWBCからは、その“配慮”が無くなった、ということになる。本来なら、日本テレビも関連会社の配信サービスであるHuluで獲得したかったが、とてもそんな放映権料は払えなかったため、断念したといいます」(前出の関係者)
では、日本のテレビ局はWBCから完全に“締め出し”を食らったのか。
「まだ一縷の望みを信じて抵抗しています。次に目指すのは、Netflixから権利を有償で分けてもらい、録画中継すること。いわば、“屈辱のおすそ分け”ということですが……。
それでも、スポーツニュースで試合の様子を放送する際は、基本的に『報道番組で24時間以内、3分以内は無料』の大原則があります。しかも、権利侵害をしないために試合終了まで待たなければいけないなど、制約も多い。前回大会のように、ワイドショーや夕方の報道番組が総力を挙げて盛り上げる光景は、もしかすると消えるかもしれません。
こうした状況にいちばん困っているのは、日本野球機構(NPB)でしょうね。WBCが地上波放映されないとなると、サムライジャパンの活躍の注目度が下がる。現役プロ野球選手の露出が減れば、当然NPBにスポンサーもつきにくくなるでしょうから」(同前)
野球人気低迷につながらなければいいのだが……。