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阪神、セ・リーグ制覇目前でも素直に喜べない「理想の1番打者」近本光司の引きとめ問題

近本光司
9月2日現在、阪神は2位巨人に16ゲーム差をつけ、マジックは一桁の「7」。本来なら阪神の“背広組”は歓喜の瞬間をどの球場で迎えるのかなど、喜びに満ちた思いで裏方仕事の準備に追われているはずだ。
しかし、「そこまで喜べない理由がある」と阪神担当記者が語る。
「2023年以来のセ・リーグ制覇で、しかもぶっちぎりの優勝ともなれば、1年間の苦労が報われると、ウキウキしている時期でもあります。
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しかし現在の“背広組”は、それ以上に向き合わなければいけない問題に直面しています。それは、国内FA権を取得した近本光司外野手の引きとめです」
近本の今夏の権利取得は予想されていたことだけに、阪神は2024年オフの契約更改の席で「複数年契約」を提示した。ところが、近本は「1年で勝負したいと思った。球団の思いもたくさん聞かせてもらって、それでも『単年でいいかな』と思いました」と、好条件に断りを入れている。
「昨オフ、4番の大山悠輔内野手が国内FA権を行使し、巨人への移籍が噂されるなか、5年総額17億円で契約しました。これで阪神は『ホッとした』との報道がありましたが、実情は大きく違います。
阪神としては、大山以上に評価していた近本が翌年にFA権獲得するのが確実でした。そのため、大山の評価を上回る5年総額20億円を提示したようですが、断られてしまった。好条件で自信があっただけに、阪神は真っ青になったといわれています」(同前)
近本への評価は「理想の1番打者」で定着している。じつは、一流打者の証である打率3割は、2021年にマークした.313の一度だけなのだが……。
「打率がいちばん低かったのは、入団1年め、2017年の.271。あとはすべてコンスタントに2割8分以上を打っています。入団6年で盗塁王は5回、守備の名手に与えられるゴールデングラブ賞も2021年から2024年まで4年連続で受賞しています。
その実績を見ると、やはり理想の1番打者であり、12球団一の1番打者でもある。現在、どの球団も1番打者と捕手はほしいので、近本は当然、今オフの目玉になります」(同前)
現在、近本争奪戦には資金力のある巨人とソフトバンクが参戦すると言われている。阪神とて黙っているわけがなく、粟井一夫球団社長は「彼は完全にチームリーダー」と言い切り、全力で慰留をアピールしている。残留条件の提示は、2024年をさらに上回って5年総額25億円以上ともいわれている。
近本は、生まれから小・中・高まで兵庫、さらに大学も関西学院大と、ずっと関西圏で生活してきた。卒業後に進んだ社会人野球も大阪ガスだったことを考えると、関西を離れるイメージはわかない。いくら資金力豊富な球団からラブコールが続いても、そうそうOKはしないようにも思える。
スポーツ紙デスクが、こう指摘する。
「一流の選手でも、FA権を行使するのは一度ということがほとんどです。それだけに、野球人生の後半を決める大事な選択となります。これまでも、近本のように出身地がクローズアップされることがありました。
たとえば2018年、広島の丸佳浩はFAを行使したうえでの残留が有力視されました。しかし、当時の巨人・原辰徳監督に口説き落とされ、移籍を決意したと言われます。
ただ、取材の結果、奥さんの存在も大きかったとわかりました。丸の奥さんは小中学校の同級生なんですが、場所は千葉県。そのため、一度は関東近郊に帰って夫を支えたいという思いがあったようです。丸も、奥さんの気持ちに応えたかたちです。FA移籍の決定打とは言いませんが、大きな要素であったことはたしかです」
近本の妻も、中学の同級生とのこと。丸のFA行使の件を重ね合わせれば、「行使→残留」となりそうだが、はたして――。