
背番号「31」をつける阪神の早川太貴投手
阪神がセ・リーグ最短Vに邁進中の7月、OBを中心に “ある事件” が勃発していた。
事の発端は、7月13日、早川太貴投手が契約金1000万円、年俸420万円で支配下選手契約を結んだことだった。
「早川選手は、2024年育成ドラフト3位で阪神に入団しました。阪神では、長年『育成指名された投手がなかなか成長しない』と言われてきたんですが、早川選手はここまで2軍で13試合に登板し、7勝1敗、防御率3.06をマーク。支配下選手にランクアップするには十分な成績となりました」(阪神担当記者)
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ここまでなら普通の選手登録に関する話なのだが、ややこしいのが、早川の背番号。育成時代の129から、新たな番号を31としたのだ。
「阪神で『31』となれば、誰が背負っていたかは、虎ファンのみならず多くの方が思い出すはず。そう、掛布雅之氏の番号なんです」(同)
掛布氏といえば、ドラフト6位という下位指名ながら、血の滲むような努力の結果、強力な猛虎打線の4番を任されるまでに成長。本塁打王3回、打点王1回、さらに守備の名手に贈られるダイヤモンドグラブ賞を6回も受賞するなど、攻守に優れた名選手として知られる。
虎ファンも「4代めミスタータイガース」と認める存在で、しかも阪神のOB会長も務めるレジェンドだ。その功労者の番号を、球団が育成から上がってきた選手に与えたことで、阪神OBが噛みついたという。
「阪神では、藤村富美男さん、村山実さん、吉田義男さんがつけていた番号が永久欠番となっています。掛布氏もこの3人と匹敵するくらいの活躍を見せましたから、31番は永久欠番になってもおかしくなかったのです。
ところが、球団は『準永久欠番』という中途半端な番号にしてしまった。これは、その背番号を一時的に欠番とし、将来的にその番号にふさわしい選手が現れた場合に引き継がれる可能性があるということです。
そのため混乱が起き、OBのなかからは『育成上がりの選手に31番を与えるとは、掛布さんに失礼だ!』という声があがっているのは事実です。かわいそうなのは早川選手ですね。31番になることはギリギリまで知らなかったようですし、自分が望んだわけでもありませんから」(同)
ただし、阪神OB以外の反応は、想像したものとは少々違うようだ。
「年配の虎ファンのなかには、OBと同様の反応を示した人もいたようです。ただ、それは少数で、Xに書き込むような若いファンの反応は別。《早川君おめでとう!31番これからも頑張れよ!》といった意見がほとんどでした。
というのも、彼らにとって掛布氏はレジェンドには違いありませんが、現役時代の活躍を知らない。OBが怒ってもピンとこないのが本音でしょう」(スポーツ紙デスク)
早川は、支配下登録から3日後の7月16日に一軍初登板を果たすと、その後、二軍での調整期間を経て、8月27日に一軍に再登録。その日の横浜DeNA戦でプロ初先発。中4日での登板ということもあり、途中足がつるアクシデントがありながらも5回を零封した。勝利投手の権利を得て降板し、そのままプロ初勝利を果たした。
阪神で育成出身の新人投手勝利は球団初の快挙で、歴史に名を刻んだ。さらに早川のこの勝利がなければ、結果的には阪神のセ・リーグ最短Vは計算上なかったことになる。
わずか1勝ではOBたちを黙らせることはできないが、阪神における「31」は掛布から早川へとつながれ、新しい時代を迎えようとしている。