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日ハム 新庄剛志監督「就任初勝利」贈った元投手が語る “宇宙人” の素顔…「高校野球の監督を!」意外な提案の理由とは

奇策と呼ばれる常識外の作戦を繰り出す新庄剛志監督
4年目の悲願達成へ、首位・ソフトバンクを猛追する日本ハム・新庄剛志監督。2ランスクイズ、“日替わり打線”、“6番投手” など奇策を繰り出しながら勝利を積み重ねてきた。その常識を超えた采配の魅力を、新庄監督の就任初勝利を “プレゼント” した元投手の立野和明さんが語る。
2021年11月4日、札幌市内でおこなわれた新庄剛志の日ハム監督就任会見には、多くのメディアが詰めかけた。そこで新監督は、「北海道日本ハムも変えていきますし、僕自身がプロ野球も変えていきます」「僕が帰ってきたからにはコロナはなくなる」「僕のことは監督と呼ばないでください。BIGBOSSと呼んでください」など、期待どおりぶっ飛んだ発言を連発したが、誰もが驚いたのが次のひと言だった。
「優勝は狙いません!」
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2019年から3年連続で5位と、ふるわないチームの再建を託されて就任しただけに、“宇宙人” の宣言に会場内はざわついた。
選手は当時、どう受け止めたのか。入団2年めの投手だった立野和明さんは、この年、初めて一軍のローテーションピッチャーとして開幕を迎えた。
「すべての選手の気持ちを把握していたわけではありませんが、『なに言ってんだ?』といった声は聞こえてきませんでした。みんな、いまの戦力から優勝は厳しいと感じていましたから。それまでの3年間も厳しいと感じていたんですが、それでも開幕前は『優勝するぞ』と気負っていた。それが、新庄さんのあのひと言でリラックスしてシーズンに入っていけました。選手間で『優勝は狙いません』発言に関して話しあったことは多々ありましたが、一様に『新庄さんらしいね。おもしろいね』といった声が多かったことを覚えています」
とはいえ、勝負に対する厳しさが足りなかったのも事実。開幕からあっという間に5連敗を喫した。ファンからは「あんな宣言するからだ」といった声があがったのは言うまでもない。
そして、開幕6連敗を阻止し、新庄監督に初勝利をプレゼントしたのが立野さんだった。2022年4月13日の西武戦に先発し、5回2失点で勝利投手となった。
「5連敗しましたが、ナインはそんなに落ち込んでおらず、噛み合っていないだけだと。いつかは勝てるといった雰囲気でした。僕が初勝利をプレゼントする形になりましたが、それは6番めのローテーション投手だったからにすぎません。
新庄監督からの言葉? じつは特別にはなくて、『ナイスピー』くらいでした(笑)。僕としては、その年の初勝利でうれしかったんですが、新庄監督は目先の勝ち負けに一喜一憂することはなく、つねに先を考えながらチーム作りをしているように感じました」
■1年苦楽をともにして、わかったことは?
実は、就任当初は話しづらさを感じていたという。
「なにしろスーパースターでしたからね。でも、話してみると、意外にというと失礼かもしれませんが気を遣ってくれるし、みなさんが思っている以上にやさしい方でした。
選手とのコミュニケーションは大事にされていましたが、話すのはグラウンドだけでしたね。内容は技術面ではなく、精神面が多かった。たとえば、先頭打者に四球を与えるなら、ヒットを打たれたほうがいいとか。とにかく緊張をほぐしてくれました。うれしかったですね。普通なら話せない存在でしたから」
1年苦楽をともにして、わかったことも多かったという。
「周りから見て感じることと、実際にチームにいて感じることは大きく違ったのではないかと思います。みなさんは『変わった人が監督になったな』と感じたでしょうけど、僕らに接するときは至って普通なんです。
メディアに対してのコメントには、ほかの監督より華がありましたが、僕らにはそういう発言はほとんどなかった。監督ミーティングもキャンプの初日に1回やるぐらいで、シーズン中はほとんどなし。反省や伝達事項などはコーチがやっていましたから。
1年一緒にやって強く思ったのは、切り替えがものすごく速いこと。勝ち負けに一喜一憂しない。3、4年先のことを考えていると感じましたね」
立野さんは、その後、右ひじの故障もあり2023年に日ハムを退団。翌シーズンには、独立リーグの日本海リーグに所属する富山GRNサンダーバーズで1年プレーし、現役を引退した。現在はテレビで日ハム戦をよく見るという。
「僕が現役のころも2ランスクイズなどやってはいたんですが、当時は『わっ、2ランスクイズ?』とスタンドはざわついたし、失敗しようものなら『ありえねぇ!』とヤジが飛んできました。
でも、いまは普通にやって、当たり前のように成功させていますよね。新庄さんにとっては、もはや奇策ではありませんから。当時から面白い作戦と思っていたし、やり続けたところにすごさを感じますね。
それが実現できるのは、すごく勉強家だからだと思う。僕もメディアを通じて、あるいはグラウンドで見る監督はわかりますが、監督室や家に帰ってから何をやっているかはわからない。
でも、そこでいろいろなデータ分析をやっているんだと思います。相手ばかりでなく、日ハムナインも。そこでの徹底した分析があるから、この選手は打順は何番で使ったら活躍できる、この選手はこういうときに使ったら活躍できるとか、わかると思うんです。
以前は、中継ぎに起用された投手が『俺、本当は先発がいいんだけどな』と感じていたようなことはありました。でも、いまはないと思うし、適材適所にうまくはまっている。だから結果が出ている。
上と下の入れ替えもスムーズですよね。9月初めに久々に1軍に復帰した今川優馬さんが即大活躍。内情を詳しく知らない人から見れば、『なんで今川?』と思うかもしれませんが、新庄さんは今川さんをちゃんと見て分析していたと思うし、だからこその活躍でした(残念ながら、その後、今川は肉離れで離脱)」
■今後、新庄監督に期待することは?
新庄は日ハムで選手として3年プレーし、監督として現在4年めを迎えている。今後、期待することは何か。
「プロですから人気面が先に注目されますが、僕は新庄さんの指導法は、もっと評価されていいと思いますね。このご時世、指導法がメチャクチャ難しいじゃないですか。昔は、高校野球では殴ってでも、みたいなことが平気でありました。
そういう意味で、新庄さんの指導法はお手本だと思うんです。暴力なんてかけ離れているし、使って育てる。それもいつ使うかを考えてまでやる。スパルタではなく、笑顔のなかで成長させる。
僕らのころの日ハムは弱かったけど、そのときいた選手を使い続けて育てあげ、いまは強い。ということは、指導法がいまの時代に合っているということだと思うんです。
新庄さんは高校野球の指導者になったらすごくおもしろいと思う。指導法はもちろんですが、メディアの使い方が抜群。いま高校野球の監督でメディアに注目されているのは、優勝インタビューで『青春って、すごく密なので』と語った仙台育英の須江航監督くらいじゃないですか。高校野球も、もっとメディアを使えばさらに盛り上がると思うんです。
育て方もメディアの使い方もうまい新庄さんが高校野球の監督をやったら、どれだけ盛り上がるか。いまはまだプロ野球の監督のほうが注目度は高いですが、新庄さんが育てた高校が甲子園に出たら、メディアは殺到するはず。そのとき、プロ野球の監督はどう思うのか。
まだ高校野球は多くの規制があって、いろんな意味で “堅い” んです。そういったことをなくせるのが新庄さんだと思いますので、もし日ハムの監督以外の道に進むなら、ぜひそうした姿を見たいですね」
たしかに、球児たちを指導する新庄監督の姿も見てみたい。
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