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阿部慎之助監督も複雑な心境? 1軍昇格したばかりの阪神“元巨人”投手が「防御率0.00」の大活躍

巨人・阿部監督
攻守とも隙のない戦いぶりに終始し、2023年以来となる2年ぶり7度めのセ・リーグ制覇を果たした阪神タイガース。9月7日の優勝は、1990年の巨人を1日抜いて両リーグ史上最速の記録となった。
勝因はさまざまだが、ここでは12球団イチと称される強力投手陣について触れておきたい。チーム防御率は1点台に迫る2.18で、もちろん12球団ナンバーワンの成績だ(記録はすべて9月25日現在)。
まず先発だが、才木浩人の防御率1.55はセ・リーグトップであり、村上頌樹(しょうき)の2.09は5位に位置する。だが、規定投球回数に達しているのはこの2人だけ(パ・リーグトップのソフトバンクはモイネロ、大関友久、有原航平の3人)。それでチーム防御率が2.18ということは、ブルペン陣がいかにすばらしい仕事をしているかの傍証となる。
そのなかでも「及川雅貴と石井大智は別格です」と、阪神担当記者が語る。
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「及川はチームトップの65試合に登板しているのに、防御率は0.89です。現在、17試合連続でホールドを記録していますが、これは阪神・藤川球児監督と並んでNPB記録。あと1試合で指揮官を抜きます。
石井も記録面では負けていません。ここまで51試合に登板し、1勝0敗、35ホールド、9セーブをあげていますが、現在も48試合連続無失点を継続中です。防御率は驚異の0.18です。短いイニングとはいえ、ここまで好調を維持することは賞賛に値すると思いますね。
2人はすでに球史に名を刻んでいますが、今後、どこまで記録を伸ばすか楽しみでしかありません」
ほかにも、国指定の難病「胸椎黄色靱帯(じんたい)骨化症」から復活した岩貞祐太、守護神・岩崎優(すぐる)と、他チームがうらやむ陣容になっている。
さらに「クライマックスシリーズ(CS)に向けて、おもしろい選手が出てきた」と前出の記者が続ける。
「7回以降は及川、石井、そして守護神の岩崎優がいわゆる“勝利の方程式”ですが、そこにつなぐ6回の役割として、このところ注目されているのが畠(はたけ)世周です。
畠は近大から2016年、ドラフト2位で巨人に入団し、8年間先発、中継ぎで投げてきましたが、徐々に存在感がなくなってしまっていました。右肘関節鏡視下クリーニングの手術を受けたことで、2024年の登板は1試合のみ。この時点で現役継続は難しいとさえいわれていたんです。
しかし2024年オフ、現役ドラフトで阪神に入団すると、流れが変わりました。2025年前半は2軍でじっくりと調整。その甲斐あって8月31日に1軍昇格したんですが、9月6日の対広島戦で、3年ぶりとなるホールドを記録しました。以来、10試合連続無失点、防御率は0.00と、欠かせない戦力になったんです」
巨人で失格の烙印を押されながら、阪神で復活を遂げる。その際の巨人・阿部慎之助監督の心情を、巨人担当記者が推測する。
「ともに戦った選手が、他球団に移籍して活躍するのはうれしいことです。ただし、違うリーグに行ったときの話です。本音を言えば、やはり同じリーグで活躍されては、おもしろくない。『ウチでは育てられなかったのに、向こうでは……』と、まわりに見られますからね。
しかも、巨人にとって阪神はライバル。捕手出身の阿部監督だけに、畠が阪神に行って活躍することは、複雑な心境でしょうね」
CSで巨人が勝ち上がってくれば、阪神・畠が立ちはだかることになるかもしれない。