
横浜F・マリノス(写真・時事通信)
サッカーファンにとってショッキングなニュースが流れてきたのは、9月28日のことだった。経営再建中の日産自動車が、サッカーJ1横浜F・マリノスの株の売却を検討していることがわかった。
日産自動車は横浜F・マリノスの株を約75%保有しているが、複数の大手企業を相手に売却を打診しているという。原因は、日産自動車の業績悪化とされており、今年3月期の連結決算では12.6兆円の売り上げを記録したが、最終利益は過去最大規模の6708億円の赤字に転落していた。
経営の立て直しに向けて、スポーツ関連の事業でも見直しを進めている。
「日産自動車のなかには『経営再建中にサッカークラブの運営に携わっている場合か』といった声は多数あったようです。9月下旬には英プレミアリーグの強豪マンチェスター・シティーなどを傘下に持つシティ・フットボール・グループ(CFG)とのパートナーシップを解消していました。
また、本拠地『日産スタジアム』の命名権についても、横浜市に対し、現在の半額以下にあたる年間5000万円での契約更新を打診しましたが、市は再検討する意向を示すなど、うまくいっていなかったんです。
そうしたことから、『もしかしたら身売りか』といった噂は出ていました」(スポーツ紙サッカー担当記者)
横浜F・マリノスは、1972年に創部したJFL(日本サッカーリーグ)の日産自動車サッカー部を源流とするクラブだ。
「1980年代に入っても、JFLのチームはプロ化に消極的でしたが、日産自動車だけは高校や大学のスター選手を集めるなど、プロ化の準備をいち早く進めていました。
また、当時、日産自動車に所属していた元日本代表の木村和司氏は、1986年に導入されたプロサッカー選手登録制度『スペシャル・ライセンス・プレーヤー』の第1号選手となりました。
Jリーグでは、チーム名を横浜マリノスに変更し、1993年のリーグ開幕時に参加していた「オリジナル10」と呼ばれる10チームのひとつです(1999年に横浜フリューゲルスと合併して横浜F・マリノスに改称)。
J1のリーグ優勝回数は、鹿島アントラーズに次ぐ5回を誇り、サッカー日本一を争う天皇杯でも、日産自動車の時代とあわせて7回優勝しています。しかも『オリジナル10』のなかでは鹿島と並び、J2落ちしていない2チームのうちの1つ。
Jリーグおよび日本サッカー界を語る上で欠かせない “超名門” なんです。しかも、横浜フリューゲルスと合併していますから、もし横浜F・マリノスがなくなってしまえば『オリジナル10』から一気に2チームが消えてしまうことになります」(ベテランのサッカーライター)
“身売り話” がチーム内で知らされていたかは不明だが、今季は低迷し、監督交代も異例の2回。現時点で降格が視野に入る位置であり、厳しい残留争いに巻き込まれている。
横浜市の山中竹春市長は、29日、市役所で記者団に対し「多くの市民に長年にわたり愛着を持たれて活動してきたクラブであり、クラブのホームタウンでの活動やスタジアムの活用、それに地域との連携が継続して発展していくよう、市としても行動したい」と語ったが、先行きが不透明であることに変わりはない──。