
2026年W杯の出場をすでに決めているサッカー日本代表(写真・桑原 靖)
2026年に開催されるサッカー北中米W杯は、過去最大となる48カ国の出場が決定している。その決定が下された際には、「出場国を増やすと、レベルの低下が現れる」と、国際サッカー連盟(FIFA)のなかでも疑問視する声は多かったという。ところが、米『ESPN』などの報道によると、2030年W杯は、さらに出場国が16カ国増え、64カ国で開催される可能性があるという。
2030年W杯は、100周年となる記念大会であり、南米のウルグアイ、アルゼンチン、パラグアイで大会が開催され、その後は欧州のスペインとポルトガル、アフリカのモロッコに場を移し試合がおこなわれるという。これまでも2002年の日韓大会や、2026年の米国、カナダ、メキシコによる北中米大会と、隣国による共催大会は存在してきたが、南米、欧州、アフリカと、これほどまでに移動距離のある大会は、初の試みとなる。
「出場国がさらに増えるとなれば、ワンサイドゲームが増えていくでしょう。かつてサッカーの国際試合では、どんなに実力の差があっても、『2桁得点は取らない』といった不文律のようなものがありました。相手に敬意を払うためですね。しかし、現在は得失点差が重視されていますから、各国とも『これ以上取るのは……』なんて言っていられない。とてもW杯本大会でのスコアではない、といった試合が続出するでしょう」(サッカーライター)
ではなぜ、ここまで出場国を増やすのか。
「FIFAは『W杯に参加する国や地域が増え、放映権料をはじめとする収益も増える』と語っていますが、“参加する国”がどこを指すかといえば、経済規模が大きい中国やインド、そして中東の産油国であることは間違いありません。とくに人口が世界1位のインド、2位の中国はマーケットが巨大なだけに、FIFAは何としても出てもらいたいのです。
ただ、中国は2002年の日韓大会に出場して以来、ずっと予選で負け続けており、出場が48カ国に増えた2026年大会でも予選落ちとなっています。インドに至っては、W杯に出場したことがありません。だからこそ、出場国を48から64に増やし、FIFAも『これなら出られるんじゃないか』と思っているのでしょう。なにしろアジア枠は現行の8.5枠から12.5枠へと増加する可能性がありますから」(同前)
こうした動きに、中国メディアの『捜狐』は「中国代表にとって非常に心強いニュースであり、予選突破の可能性を大きく高めるだろう」と、歓迎の意向を表明している。ただし、そう思うのは“当事者”だけで、他国は反対がほとんどだ。
元リヴァプール指揮官ユルゲン・クロップ氏は、『The Athletic』のインタビューで、試合数の増加による選手の疲労を心配しつつ、「(出場国増加は)考えたくもなかった。正直、見ただけで『ああ、私には関係ない』と思った」と、反対の姿勢を崩していない。サッカー強国が集まる欧州のサッカー関係者も、クロップ氏の意見に多くが同意している。
Xでも同様に反対の意見が多い。
《どんだけ予選やるつもりだ》
《64カ国にしたいならもう最初からトーナメントでウィナーズルーザーズで2回負けたら敗退にすりゃいいんじゃねえかな……》
《中国みたいな弱っちいチーム出して試合の質を下げることに意味ないだろ。》
2026年W杯は出場国の増加の影響で、試合数も44試合増加の計104試合となる。かりに64カ国の出場枠拡大が認められた場合は128試合の予定で、これまでおこなわれてきた32カ国の大会の、ちょうど2倍の試合数となる。
選手は厳しいシーズンを乗り越え、そしてW杯に出場する。出場国増加は、とても“選手ファースト”とはいえない。