
日本ハム・伏見寅威(写真・時事通信)
「高校(東海大四高)では、伏見寅威(とらい)を見るためだけに12球団のスカウトが北海道入りしたことで知られた選手です。試合以外でも気配りできるので『寅威ママ』というあだ名でチーム内では呼ばれています。グッズの売り上げもトップクラス。それだけに、今回のトレードには驚きました」
こう明かすのは、北海道の高校野球関係者だ。
日本ハムと阪神が11月14日に発表したのは、衝撃的なトレードだった。日ハムの捕手・伏見と、阪神の投手・島本浩也をトレードするというのだ。日本シリーズでソフトバンクに敗れ日本一を逃した阪神と、やはりソフトバンクに競り負けてリーグ優勝を逃した日ハムとの、今季オフの初トレードになる。
もっとも伏見は、2022年に3年契約でオリックスから獲得したばかりの選手だ。それだけに、伏見が日ハムを去るというこのトレードには、SNSでも「ショックから立ち直れない」など、悲鳴があがっている。先の高校野球関係者がこう続けた。
「新庄剛志監督は来季が5年め。本人としては、少なくともリーグ優勝は絶対条件と考えているでしょう。しかし、日ハムの投手陣は先発が12球団でもトップクラスの陣容であるのに比べ、左の中継ぎとなると、900試合登板した宮西尚生(なおき)、河野竜生、上原健太、堀瑞輝くらい。期待が高かった根本悠楓(はるか)は戦力外になりました。上原は先発に回る可能性があるので、左の中継ぎはほしかったはずです。阪神からくる島本は、阪神では4番手、5番手の左で、誰かが故障しないと1軍には上がれない可能性が高い。ただ、日ハムの左腕のなかでは、それなりの安定感を見せるでしょう。来季を考えれば、日ハムにとって島本は、大きな戦力です」
とはいえ、伏見は2022年にオリックスで日本一になり、そのオフ、地元球団である日ハムで日本一になるためにFA移籍した、と公言していた。その伏見が、リーグ優勝のために必要な投手補強の為、日ハムからトレードされるというのは、皮肉な話でもある。
「11月22日のファン感謝際で、伏見がファンに気持ちを伝える予定だとも聞きます。移籍が決定した選手のファン感謝祭出席は異例です」と明かすのは、スポーツ紙記者だ。
「ペナント争いが厳しかった終盤、伏見の出場が増えました。先発投手の信頼がとくに高いので、必要な戦力なのは間違いありません。しかし、日ハムには打撃がいい田宮裕涼(ゆあ)と配球に定評がある進藤勇也の若手捕手コンビがいるうえ、今季、クリーンアップの一角を担った郡司裕也も登録は捕手。この2年間、70試合程度の出場にとどまっている伏見を交換要員にしたのは、合理的な判断ともいえます。
もっとも、阪神は今季、坂本誠志郎が正捕手を確実にし、ここ10年間の正捕手でFA資格のあった梅野隆太郎も残留を発表しています。1軍枠はあと1枠で、若手の中川勇斗(はやと)と榮枝(さかえだ)裕貴がしのぎを削る状況に、ベテランの伏見が食い込めるかは微妙。現役末期の伏見には気の毒なトレードですが、日ハムフロントの対応を見る限り、地元選手でもあり、引退後のコーチ就任くらいの手形は切られていると思いますよ」
新天地で花開くのはどちらか。
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