
2021年、北京五輪出場を目指して、W杯インスブルック大会に出場したボブスレー日本代表だが、男子4人乗りは26位に終わった(写真・時事通信)
日々、熱戦が続いているミラノ・コルティナ冬季五輪。日本からは選手、監督、コーチら総勢283人の選手団が参加している。だが、その様子を忸怩たる思いで見つめる選手たちがいる。ボブスレー日本代表選手たちだ。日本ボブスレー・リュージュ・スケルトン連盟は1月13日、ボブスレー男子2人乗りでの出場資格ルールを誤認し、ボブスレー男子が五輪に出場できなくなったと発表した。
この失態は海外遠征中の1月2日、他国の選手から指摘を受けて判明したという。現役の日本代表選手と2人の元代表OBが匿名を条件に、本誌の取材に応じた。
「もうなんて言うか……怒りですね。言葉になりません。こんな単純なミスなどあり得ません。この4年間の努力はなんだったのかと言いたいです」(現役代表選手)
選手たちのもとに、SNSなどで「選手も確認しろよ」「メダルを取れない競技だから、出ても仕方ないだろ」など、誹謗中傷の声が届いていた。選手たちは連盟に対し、出場できなくなった経緯の詳細を公表するよう求めた。
連盟は1月22日、ようやく『追加説明及びお詫び』と題する文書を発表した。
「そこにも書いてありましたが、選手は2025年の夏からコーチ陣に対して、『出場資格は本当にクリアしているのか』と、何度も確認していたのです。そのたびに『問題ない』と言われてきました。2年も前に出場資格の変更がおこなわれていたのに、最後までそれに気づかなかったなどということは、あってはならないでしょう。
さらに連盟は、今回、出場できなかった選手らに補償をすると文書で述べていましたが、具体的な内容についてはいまだ聞かされていません。『記者会見をして謝罪する』とも聞いていましたが、それもおこなわれていません」(前出・現役代表選手)
じつは、連盟のこうした失態は今回が初めてではなかった。元日本代表のAさんは、怒りをにじませながらこう話す。
「2024年に、ヨーロッパから北米に遠征に行くことになったのです。ところが、出発前日の夜9時になって、『そりを借りることができなくなったので北米遠征は中止する』とコーチから伝えられました。選手はみな『え、どういうこと?』という反応ですよ。なぜそんな基本的なことを怠るのか、信じられませんでした。
2021年には、北京五輪出場に必要なポイントがつかないテスト大会にもかかわらず、連盟は通常のポイントが獲得できる大会だと誤認して、出場させられたこともありました。あれがなければ、ポイントが獲得できる別の大会に出場ができて、北京五輪の出場枠を得られたと思っています。
さらに、そもそもの選手選考が不透明なことや、海外遠征時に連盟のスタッフが飲酒運転や当て逃げ事故を起こしていたことなど、我々OBはJOCの窓口に何度も通報しています。現役選手が連盟に言うと、逆に除名処分を受ける可能性があり、何も言えない状態でした。代わってOBが声を上げざるを得なかったんです」
だが、JOCからなんらかの返答があったことは一度もなかったという。別の元日本代表・Bさんはこう話す。
「私は、自分から選手を辞めますと言いました。こうした連盟の体質が変わらなければ、五輪出場はできないと思ったからです。そもそも、コーチやスタッフとまともなコミュニケーションが取れない。こんな組織でやっていても無駄だと思いました。ただ本心は、ボブスレーを続けたい。連盟の体制が一新されるのであれば、また五輪を目指したい」
JOCと連盟はこうした事態をどう受け止めているのか。本誌は連盟に、今回の誤認問題を受けて連盟の組織をどう改善していくのか、また選手への補償の内容などを質問した。連盟からは、「複数名による確認及び理事会レベルでの共有を義務付ける体制を整備するといった確認体制の構築をはじめ、情報共有手続の多重化、関係者への教育、選手への補償対応を速やかに実施してまいります」と回答があったものの、補償について具体的な内容が示されることはなかった。
一方、JOCからは連盟の組織改善について「競技団体に指導を行うか否かについては、加盟団体審査委員会の所管事項だが、開催日時は未定」とし、明言を避けた。
Aさんは最後にこう話す。
「私たちは、体重が90~100kgありますが、全員が100mを10秒台で走れる身体能力を持っています。国際的に見ても劣るものではありません。これからの日本のボブスレー界を変えるのは、いましかないと思っています。これまで平昌、北京、今回と冬季五輪3大会連続でボブスレーは出場できていません。連盟がそれでいいと思っているのであれば、即刻辞めてほしいです」
本誌取材後の2月6日、連盟から選手に「緊急ミーティングを開く」と連絡がきたという。
日本ボブスレー界は岐路に立っている。
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