
初戦の台湾戦で、3安打5打点の活躍の大谷(写真・桑原 靖)
WBC連覇に挑む侍ジャパンの戦いに、日本中が沸いている。1次ラウンド後に待ち受けるであろう難敵、アメリカをはじめ、ドミニカ、ベネズエラなど、厳しい戦いの連続に、侍ジャパンに必要なこととは――。
2006年の第1回大会で、投手コーチとして世界一を経験した武田一浩氏(60)。メッツを皮切りに、MLB3球団で活躍した五十嵐亮太氏(46)。NHKBSでMLB解説などを務める2人に話を聞いた。
まずは、WBCの独特の雰囲気について武田氏に聞いた。
「大会の雰囲気も独特なのですが、勝ち進むにつれ、どんどんと日の丸の重みが加わってきたことを覚えています。ただ、僕らのときは初めての大会だったので、それほど騒がれる感じでもなかった。今の代表は大変だと思います」
■準々決勝でドミニカとは当たりたくない
今回、侍ジャパンに選出された30人には、どのような印象を持ったか?
「野手16人、投手14人ですが、やはり投手が少ないというのが第一印象です。14人の内訳を見たときも先発が多く、リリーフのスペシャリストが少ないことが気になりました」(武田氏)
五十嵐氏もこれに同意する。
「投手の起用法としては、先発と第二先発、それに中継ぎ、抑えの三つに分かれます。ほかの国と比べて先発ピッチャーが多く、ブルペンのピッチャーが少ない。なかでも、ブルペンのスペシャリストが少ないと思います。ネックというか、大会前に怪我人が3人も出てしまった。試合を重ねていき、マイアミで綻びが出てこなければいいのですが……」
また、球数制限も重要なポイントとなる。1次ラウンドは65球、準々決勝は80球、準決勝以降は95球を超えてはならないというルールがある。
「マイアミでの準々決勝に先発した投手が5~6回まで行けたらいいのですが、4回までだと後ろにしわ寄せが来ます。ならば、6回以降は多くのリリーバーがいたほうがいいのですが、今回の選出は専門家が手薄なんです」(武田氏)
五十嵐氏が指摘するように、すでに3人が怪我による辞退となったが、すべて投手で、しかもリリーバーなのだ。
ならば、昨季のセ・パ各リーグのセーブ王である 松山晋也(中日)と 杉山一樹(ソフトバンク)をなぜ選ばなかったのか?
「おそらく、選ばなかったんじゃなくて、本人たちが断わったんじゃないのかなと思います。井端(弘和)監督は松山を入れたかったと思いますけどね」(五十嵐氏)
武田氏は違った見方をする。
「断わることは、まず考えられませんね。秋の強化試合などでは出場を辞退する選手はいますが、WBCの本番でそれはないでしょう。もちろん、井端監督も2人を見ていたとは思いますが、それほど注目していたわけではなかったのではないでしょうか。活躍したのも、昨季が初めてのことでしたからね」
では、野手16人に関しては、どのような印象を持っているのか。
「すごく攻撃的な野球ができるメンバーが集まった印象です。現在、長打率と出塁率を足したOPSが注目されていますが、その数字が高い選手が優先的に選ばれたなっていう感じです。これまで以上に、長打力のあるチームですね。ちょっと前だったら、日本はバントや足を絡めた“スモール・ベースボール”に活路を見出していましたが、今は世界と比較してもパワーで引けを取らない打線が組めたんじゃないのかなと感じています」(五十嵐氏)
武田氏も「かつてない重量打線が組めた」と語る。
「第1回のときは『足を使おう』という合言葉があったんですが、今の打線は大谷(翔平)以外にもホームランバッターがいるので、“スモール”をやらなくても点は取れるのではないでしょうか」
連覇に向けては1次ラウンドでは、最低でも2位突破が必要となり、本当の勝負は負けたら終わりのマイアミ・ラウンドとなる。準々決勝はベネズエラ、準決勝はドミニカが有力視されているが……。
「両チームとも強いですが、準々決勝でドミニカとは当たりたくないですね。ドミニカは、アメリカにも勝てる戦力が揃っています。とくに、打線の破壊力はすさまじい。外野陣はソト(メッツ)、ロドリゲス(マリナーズ)、タティスJr.(パドレス)ですからね。
投手陣もオールスター級が3枚揃っていて、とくにサンチェス(フィリーズ)は大谷の“天敵”として知られています。準決勝で日本と対決するとなれば、彼が先発してくるでしょう。ただし、野球が荒いというか、みんなが強振してくるので、抑えられる可能性もあります。そこを突きたいですね」(武田氏)
■今回の日本代表にはクローザーがいない
五十嵐氏も、ドミニカの強さを認める。
「外野陣だけではなく、ファーストにゲレーロJr.(ブルージェイズ)、サードにマチャド(パドレス)ですからね。投手陣もしっかりしているし、監督がプホルスです。華やかさというか、派手さがありますね(笑)」
ただし、アメリカは「その上を行く」ということが2人の共通した意見のようだ。
「確かに、アメリカの打線は誰をマークしていいかわからないくらい揃っています。加えて、今回の投手陣は過去最高だと思いますね。おそらく、剛腕・スキーンズ(パイレーツ)は決勝に先発するでしょう。そして、クローザーが予定されているミラー(パドレス)の常時160キロ後半のストレートとスライダーは、すごいというよりヤバいですね(笑)。9回に彼が出てくるまでにリードしていなければ、勝つ確率は極端に下がります」(武田氏)
五十嵐氏も、アメリカ打線の破壊力のすさまじさに舌を巻く。
「この打線を見られるっていうのは、ファンからしたらすごく興奮するというか。真のアメリカ代表ですよね。本当に、トップ中のトップが揃ったという印象ですね。捕手もウィル・スミス(ドジャース)とローリー(マリナーズ)でしょ。もう、どっちを出すんだって聞きたいくらいです」
では、連覇のカギは?
「もちろん、大谷選手の活躍がカギを握っていることは間違いない。ただ、それ以上に守備を含めた終盤の戦い方が大事ですね。たとえば、源田(壮亮・西武)より守備がうまい選手はいないなか、彼がスタメンで出ているとする。で、ビハインドの場面で彼に代打を送りにくくなるわけです。終盤の守備を考えるとね。外野の守備固めには周東(佑京・ソフトバンク)がいるからやりやすいけど、ショートはそうはいかない。その見極めですね」(五十嵐氏)
武田氏は抑えに注目する。
「これまで勝ってきたのは、点を取られなかったから。でも、今回のチームにはクローザーがいない。大勢(巨人)は僕のなかでは8回という印象なんです。個人的には伊藤大海(日本ハム)がいいと思っています。コントロールがいいから四球で崩れない。度胸もありますしね。彼なら終盤の2イニングをまかすことも可能ですから」
巷では、今回の侍ジャパンは“史上最強”との評判だ。だが、アメリカもドミニカもそれは同じ。2人は「WBC史上もっとも難しい戦いの連続になる」と、最後も口を揃えた。
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