
荒汐部屋が大阪で宿舎を置く大鳥大社(堺市)で朝稽古する若元春(写真・馬詰雅浩)
東日本大震災から15年。再び立ち上がり、復興への思いを胸に歩み続けてきたアスリートたちに、競技を続ける喜び、そして重みを聞いた。
「授業中に突然揺れ始めて、最初に思ったのはその時間の長さでした。そこからさらに激しくなり、教室の窓が落ちたり、棚が倒れたりしました。それまで経験したことのないことで、何が起きているのかわかりませんでした」
大相撲小結の若元春は当時、学法福島高校(福島県福島市)の2年だった。校庭に避難した後、自宅へ帰る道中の景色は一変していた。
「帰り道の街中が、知っている場所ではない感じでした。すべてをあきらめたように立ち尽くす人を見かけましたし、目も当てられないような光景も見ました」
家族でよく行っていた場所が津波で流される映像も目にしたが、「映画のワンシーンみたいで、現実として見ることができなかった」と振り返る。
兄の若隆元(34)が入門していた荒汐部屋(東京)に、弟の若隆景(31)とともに避難した若元春は、同年のうちに同部屋の門を叩いた。
「入門してしばらくは、あの日も降っていた雪を見たり、地震で少し揺れたりすると、当時のことを思い出してしまいました。それも時間の経過とともに薄れてきましたが、あのとき感じたことは、けっして忘れたくないと思います」
福島県を巡業などで訪れると、“大波三兄弟” には特大の声援が飛ぶ。
「地元の方々に喜んでもらい、応援していただけるのは、すごくありがたいことです。勝つだけではなく、笑顔や勇気を届けたいと思っています」
そう語る若元春は、土俵を離れると意外な一面も見せる。小学生のころから『ハリー・ポッター』が大好きで、中高ではプロレスにハマった。福島での少年時代から続く趣味の数々が、土俵の外では心のよりどころにもなっている。
「やるべきことが多すぎて……」と笑うが、3.11を迎える大阪場所の話になると、表情を引き締めた。
「その日は特別な気持ちになる? それはないです。やるべきことは変わらないので、しっかりやっていくだけです」
勝ち越しを決めた先場所の勢いを、大阪にも持ち込む構えだ。
若元春港(わかもとはるみなと)
1993年生まれ 福島県福島市出身 本名は大波港(おおなみ・みなと)。初土俵は2011年十一月場所。187cm、144kg。最高位は関脇
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