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大谷翔平、今季から“カッピングバット”採用の裏に「執拗な内角攻め」…日本代理店が明かす「NPBで高まる需要」

スポーツ 記事投稿日:2026.04.18 16:40 最終更新日:2026.04.18 16:42

大谷翔平、今季から“カッピングバット”採用の裏に「執拗な内角攻め」…日本代理店が明かす「NPBで高まる需要」

大谷翔平

 

 2026年シーズン開幕早々から、ドジャースタジアムで快音を響かせる大谷翔平が手にするのは、2023年以来使い続ける米チャンドラー社(以下C社)製のメープルバット。だが昨季までと決定的に違うのは、先端がまるでアイスのカップのようにくり抜かれている点だ。これを“カッピング”といい、公式試合用にはルール上、広さ2.54~5.1cm、深さ3.2cm以内が目安とされる。1cmくり抜けば約5gの軽量化が図れるので、最大でも約15g軽くなるだけだ。

 

 これに関して、「その微かな差こそ、コンマ0秒を争うメジャーの打席では死活問題」と語るのが、C社の日本での正規取扱店「エスアールエス」代表・宇野誠一氏。このカッピングバット採択以前、大谷がバット選びにも見せたストイックさにまずは着目する。

 

「ジャッジもそうですが、大谷さんはずっと浮気知らずだった。C社製のSO17.4というモデルを使い続けてきたんです。ただ、サイズは例年微妙に変えてきました。昨季は34.5インチ(約87.6cm)、ジャッジ同様の35インチ(約88.9センチ)のバットを併用。自身のコンディションや相手投手によって使い分けていたようです」(以下「」内は宇野氏)

 

 ところが、今季は0.5インチ(約1.3cm)短くした34インチ(約86.4cm)の以前のバットに戻し、さらにカッピングを施したのだ。重さも昨季の32オンス(約907g、35インチ仕様の場合)前後から総計50gは軽くなっているだろう。また、SO17.4はジャッジが長年使用する、幅広いスウィートスポットを持つAJ99.2に改変を加えたモデル。エンドを小さくし、グリップを24mm前後まで絞り込んだ結果、バットの重心はさらに先端に置かれ、ボールへの破壊力は増すが、ハンドリングがしづらくなる。そんな“じゃじゃ馬”にもたとえられる、長尺バットを大谷は使いこなしてきた。

 

 その絶対的信頼を寄せる“黄金の相棒”に、なぜ今、あえて改良を加えたのか。そこには昨今、大谷が苦しめられてきた、執拗な投手の内角攻めがあった。4月14日のメッツ戦で、大谷が右肩に受けた痛烈なデッドボールは記憶に新しいが、その時点ですでに3死球。開幕16試合で早くも昨季の数字に並び、シーズン最多の2024年の6個にもシーズン前半で追いつく勢いということも、内角攻めを受けている証だろう。

 

 気丈な大谷は「明日先発じゃなくてよかった。おそらく打撲だと思う。次の登板には影響しないだろう」と語り、事実、16日のメッツ戦では、6回10奪三振2安打1失点と好投し、見事今季2勝めを挙げた。5年ぶりのマウンド専念での勝利だったが、相手投手の暴投に対する大谷の警戒心がそこにも見て取れる。

 

 現にスタッツによれば、大谷に対する投手の配球は明らかに内角へ集中。内角高めへの割合は、昨季の全投球中の18%から今季は現段階でも24%へと急増し、特にカウントを取るための内角へ食い込む速球の頻度が飛躍的に高まっている。これはイコール、死球を受ける確率の高まりを示す。そして、打撃においても、外角をカバーする長さと内角を捌く操作性を天秤にかければ、バットを短くかつ軽くという選択が今般の状況下では理にかなう。カッピングによって重心を数ミリ手前に寄せることで、内角を鋭く振り抜きかつ長打を狙う姿勢を今季の大谷は見せているのだ。

 

「当然ながら、ヘッドが重ければ遠心力が加わり、芯で捉えた際の打球の推進力は増す。一方、ヘッドを軽量化すればスイングスピードは速まり、結果として打球速度も上がります。ただ、大谷さんの狙いはそこにはない。すでに打球速度は最速で188.5kmと、限界値に近いレベルに達しているからです」

 

 そして、“チャンドラー旋風”はNPBの主砲たちにも波及している。巨人の坂本勇人は昨季、C社製を購入し、マルチなどの米国製バットとともに練習で併用していた。公式戦では長年契約するSSKを使用したが、超一流選手ほどギアへの探究心は尽きない。むろん、今年から海を渡ったブルージェイズの岡本和真とホワイトソックスの村上宗隆にも請われ、宇野氏はC社製バットを提供してきた。

 

「岡本さんは2023年頃からSO17.4をテストしていましたし、村上さんからもやはり大谷モデルをベースにした特注品の発注を受け、2025年のヤクルト最終年のキャンプでは使っていましたね。村上さんはまた、3月のWBCの練習に合流した時点で、大谷さん当人のバットを借りて140mという巨大弾を放っていました。岡本さんも村上さんも現在、自身が契約する日本のメーカーも含め、各社のバットをいろいろ試している段階ですが、それぞれMLBの公式戦でもC社製を持って打席に立っています」

 

 両人が大谷に倣い、バットのくり抜きも試みた情報は宇野氏の元にも届いていないが、現在、SRSへのNPB選手からのオーダーの6割がカッピング仕様だという。

 

「当社がC社と代理店契約を結んだのが2020年。今はクライアントも5倍に増え、50人ほどのNPB選手から受注しています。当初はNPBでプレーする外国人選手のみで、今も7割を占めますから、投手が変化球を多投する日本野球に対応する意味でも、カッピングは有効なんでしょう」

 

 もともと米国製バットにおいてカッピングが主流だったわけではなく、選手によってカップあり・なしを揃えたり、どちらか一方にこだわり抜くなど様々。だが、大谷の今回の選択も多少は影響しているのかもしれない。

 

 ともあれ、こうしたバットへのこだわりはレジェンドたちにも見られた。かつて「打撃の神様」と呼ばれた川上哲治や大下弘の時代、バットの個性は赤や青など単に塗られた“色”で語られたものだが、その後、長嶋茂雄が一時愛用したのが米国ルイビルスラッガー製バットだった。かの天覧試合で放ったサヨナラ本塁打もこのバットで、同社は王貞治モデルも製作し当人に提供するなど、日本市場進出に熱心だった。

 

 現在、NPBが公認するバットメーカー33社中、アメリカ勢は6社。 MLBシェアを両者で約50%と二分するマルチとビクタスは2024年、日本のゼット社と合弁会社を設立する形で本格的な日本上陸を果たした。

 

「マルチとビクタスはじめ、多くの米メーカーは需要の大きい大学野球向けの金属バットも生産しています。千葉県内に最新のセンサーを備えた試打施設を建設し、低反発金属バットへの移行期にある巨大なアマチュア市場に魅力を感じ、花巻東など高校野球の有力校サポートにも動いている。一方のC社は今なお、最高級メープルによる木製バット作りにこだわり続ける、やや時代錯誤な会社なんです」

 

「折れないバット」の開発を目指して2009年に発足したC社は、2019年にいったん経営危機に陥りながら、同社製バットの愛用者であるヨエニス・セスペデス(元メッツなど、WBCキューバ代表)が経営権を買い取って存続したという経緯を持つ。いわば、プロの中のプロが選ぶメーカー。よって徐々に支持を集め、今ではMLBでのシェア率も10%を超えて4位に漕ぎ着けている。

 

 大谷のバットから削り取られたわずか15gの空洞には、打者たちの飽くなき探究心が詰まっている。バットはやはり打者にとって“侍の刀”と同じなのだ。となると、大谷モデルのバットをぜひ手にしてみたいものだが、かつて一般販売も行われていたSO17.4は、2023年夏季をもって終売に。小売値も約3万5000円~4万円前後だったが、転売市場では20万円を超える高値で取引され、しかも即完売が続いている。どうも使用するバットにおいてすら、大谷の神格化は止まらないようだ。

 

取材&文・鈴木隆祐 ※成績は4月17日現在、日時は日本時間

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出典元: SmartFLASH

著者: 『FLASH』編集部

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