
ヤクルト・池山隆寛監督
今オフも目玉となる補強がなく、逆にチームの象徴である村上宗隆が海を渡ってしまった。19年にもわたり、ヤクルト一筋でプレーした “ブンブン丸” の愛称でお馴染み、レジェンド・池山隆寛氏を新監督に迎えたとはいえ、多くを期待するファンはほとんどいなかった。その証拠に、野球評論家のほとんどが、今季のヤクルトは最下位と予想したーー。
ところが、いざ開幕すると、横浜DeNAをスイープし、続く広島にも連勝(1試合は雨天中止)。勢いそのままに15勝6敗と、2位阪神に1.5ゲーム差をつけて首位を走っている。21試合のなかで、連敗は4月9日の阪神戦、10日の巨人戦だけと、安定感も群を抜いている。
ここまでの予想に反した戦いぶりを、現役時代、池山監督と “イケトラコンビ” としてヤクルトの黄金期を築いた広澤克実氏は、どう見ているのか。絶好調のワケを聞いた。
「多くの評論家同様、僕も開幕前は5~6位と予想しました。『戦は算術に候』という言葉があるように、戦いの勝敗は勢いではなく、兵力・兵糧・金銭などの数量的計算に左右されます。要するに、足し算なわけです。
ヤクルトの場合は引き算しかなかった。村上はシカゴ・ホワイトソックスに移籍したし、山田哲人もケガで開幕は2軍です。みなさんが最下位と予想して当然でした。こうやって僕のところに取材があるのも、勝って驚いているからですよ(笑)」(以下「」内は広澤氏)
では、戦力的に、何がトップをキープする力となっているのか。
「まずは投手力がいいですよね。1~2点差の僅差の試合は、13勝4敗と多くをものにしています。最終回に逆転する強さもあるけれど、そこまで持ちこたえている投手陣は評価できます。
先発、中継ぎ、抑えのすべてがいい。チーム防御率2.40はセ・リーグで断トツのトップですから。新加入で抑えのホセ・キハダは、初登板から9試合連続セーブのプロ野球新記録を更新中です。抑えを確立できたのは大きいですね」
では打線はどうか。
「もちろん、山田、村上がいないのは痛いですよ。でも、現状のメンバーが、みなバットが振れていますよね。打者は、ヒットを打つとき2通りあります。
1つは相手投手の投げミスを打ってヒットにする。もう1つは、まあまあのところに投げたのに『あそこをヒットにするか?』というもの。僕が見ている限り、ヤクルトナインが打っているのは後者が多いんです。ということは、打者の好調さは一過性ではないし、相手投手にしたらショックですよ」
“振れる” 選手が多いのが今季のヤクルトの特徴だが、スタメンに名を連ねる選手で、あまり馴染みのない選手が多いのも事実である。
「ヤクルトファンならいざ知らず、いまのヤクルトは野球ファンでも名前を知らない選手が多く出ていると思うんです。でも、試合に出続けることで名前を覚えてもらえるチャンスでもある。
若いころの山田哲人がそうでした。いま打っている選手は、これからも活躍する選手に見える。そして、彼らは間違いなく顔と名前が一致する選手になる。前途洋々たるものを見ている気がします。
ただし、問題点もある。それは1年間続けてプレーしていないことです。投手も含めてね。交流戦が始まってパ・リーグのチームと対戦したとき、経験しなければわからないことがたくさん出てきます。それが彼らの血となり肉となるわけですが、もちろん、少し落ちていく可能性もあります。なので、逆に交流戦を乗り越えれば、先が見えてくると思いますね」
では、今季から指揮を執る “盟友” の池山監督についてはどう思っているのか。
「現役時代は長く一緒にプレーしましたが、 『将来監督をやるかどうか』といった感じでは見ていませんでした。当時のチームメイトの多くが監督になっていますが、みな同じです。
僕らは野村克也監督のもとでプレーする幸運を得ました。その全員が、野村監督の影響を受けています。もちろん、隆寛もそのうちの1人ですが、指揮するにあたっては野村監督の教えをそっくり受け継ぐのではなく、いいところを取り入れ、そこに彼のオリジナリティを入れているんだと思いますね。
野村門下生には “野村ノート” というバイブルがあります。監督としてわからなくなったとき、迷っているときは、見返しているんじゃないですかね。野村監督の教え子の強さって、教えを文字化しているからなんです」
2002年に現役を退いてから、ヤクルトと楽天でコーチを務めた池山監督。2020年からヤクルトの2軍監督に就任したが、2025年のシーズンは45勝76敗2分けで、イースタンリーグの最下位に沈んでいる。しかも、新規参入した「オイシックス新潟アルビレックス・ベースボール・クラブ」より順位が下だったのだ。
「昨シーズンの成績なら、ハッキリ言ってクビになってもおかしくなかったと思います。ファンからも『そんな2軍監督が1軍になっていいのか』といった否定的な声もありました。
でも、多く負けたことで多くを学んだ。『野村ノート』のなかに『勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし』という言葉があります。
これは『たまたまの好運で勝つこともあるが、負けには必ずどこかに原因がある』という教えなんです。隆寛は、この教えをしっかりと学び、反省し、糧にできたと思う。だから、いまの成績につながっていると思いますね」
『野村ノート』は、いまも教え子たちにとって心強いバイブルとなっている。
※成績は4月22日時点のもの
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