
大谷翔平(写真・桑原 靖)
6月30日(日本時間7月1日)現在、ア・リーグ西地区のロサンゼルス・ドジャースは86試合を消化し、56勝30敗と、2位のサンディエゴ・パドレスに12ゲーム差をつけてトップ快走中である。そのなかで大谷翔平のおもな二刀流での成績は、まず打撃部門で82試合出場、打率.296、18本塁打、50打点、6盗塁。OPS.954となっている。
OPSは打者を評価する指標のひとつで、出塁率と長打率を足した値。.900を超えれば一流打者といわれるだけに、いかにすばらしい数値かが分かる。
一方、投手部門は、13試合に先発、8勝2敗、防御率1.58、奪三振率9.72。クオリティスタート(QS)11試合となっている。
QSは先発投手が6イニング以上投げ、なおかつ自責点を3点以内に抑えたときに記録される。13先発中11試合ということは、安定感の高さを表す値だ。
「ここまで、投打ともにすばらしい成績なので、このままいけば5度めの満票によるシーズンMVPは間違いないでしょう。
ただ今季、彼個人にとっていちばん獲得したい賞はMVPではなく、最高の投手に与えられるサイ・ヤング賞ではないでしょうか。それは、彼のプレーを見ているとわかります」
と語るのは、2018年に大谷がエンゼルス入りして以来、出場したすべての試合を見続けてきたスポーツライターだ。彼がサイ・ヤング賞重視の根拠を語る。
「まず打席でのことですが、今季は“捨てる球”“捨てる打席”があるということです。どうやら疲労や点差を考え、いままでなら手を出していた球、とくに初球を悠然と見送るケースが増えました。そうなると、一球も振らずにベンチに帰っていくような“捨てる打席”につながっていくわけです。
また、これまでの彼は2ストライクに追い込まれると、必ずといっていいほどタイムをかけました。そこで呼吸を整えたり、絞り球を決めたり、その“間”を使って確認していました。ところが、タイムをかけずにアウトになるケースが増えたのです。これも“捨てる打席”のひとつです」
また「ゴロになったときの走塁も、これまでとは明らかに違う」と続ける。
「昨季までは、平凡な内野ゴロでも一塁に全力疾走するのが大谷翔平でした。彼は父・徹氏のチームで野球を始めるとき、野球ノートに約束ごとを書きましたが、そのひとつが『全力疾走』でした。その約束を20年以上経っても守り続け、昨季までは内野安打も多かったのです。
ところが今季は、平凡の内野には歩くようにして一塁へ向かい、よほど際どいタイミングでしか全力疾走をしなくなりました。また、一塁走者になったとしても、これまでなら走塁用の手袋をしっかりとはめていたんですが、今季はしなかったり、持ったままランナーになったりしているケースがあります。これも大谷の場合は珍しいこと。
ある意味『リードはしません。盗塁はしません』と受け取る相手捕手もいると聞きます。これも疲労やけがを考えてのことでしょう」
これまで、数々の異次元の成績を残してきた大谷だが、7月5日には32歳になる。念願であるサイ・ヤング賞獲得のため、何かを“捨てる”のは、当然のことなのだろう。
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