
大橋信(写真・森田直樹/アフロスポーツ)
日本競泳界に、とてつもない “モンスター” が出現した。
9月25日、「愛知・名古屋アジア競技大会」の競泳、男子50メートル平泳ぎ決勝で、17歳の大橋信が銅メダルを獲得した。平泳ぎで3冠とはならなかったものの、大きな爪痕を残した。
前日の24日には、男子200m平泳ぎ決勝で、大橋は2分04秒83の世界新記録を樹立して金メダルを獲得している。これまでの世界記録は、中国の覃海洋が2023年世界選手権でマークした2分05秒48だったが、しゃべるとまだ幼さが残る17歳は、いきなり0秒65も更新し、人類で初めて「2分05秒の壁」を突破した。
注目すべき点は多々あるが、まずはそのサイズだ。
「選手の体は大きくなる一方で、男子であれば身長190cm台が主流になりつつあります。200m決勝で大橋と争った前世界記録保持者の渡辺一平も、身長が193cmもあります。
ところが、大橋は169cmしかなく、競泳界の流れからいけば逆行していると言えるでしょう。
サイズが小さければ、当然、200m泳ぐときの腕のかき数は大柄な選手より多くなります。たとえば身長が190cm台のトップ選手ならかき数は65回程度だと言われます。ですが、大橋は3月の日本選手権では96回にも及びました。それだけかくわけですから、17歳にしてほかの選手よりも上半身が逞しくなったのでしょう。
テレ朝の『モーニングショー』でコメントを求められた北島康介さんは、『上半身を使った速いテンポの泳ぎを200mでできるのは信じられない。世界にインパクトを与えた彼の泳ぎは、今後のロールモデルになると思う。2分5秒を切るのは異次元』とベタ褒めしています。北島さんは2008年に同種目で世界新を樹立しましたが、タイムは2分07秒51ですからね。それより2.6秒も速いわけですから、レジェンドも脱帽するしかないわけです。
しかも、アジア大会前にはコロナ感染もあり、体調は万全ではなかった。本人も今大会での目標は2分5秒台と言っていたんですがね。そのなかで世界新を出したわけですから、末恐ろしい存在ですよ」(スポーツライター)
17歳にして世界のトップに立った。2028年ロサンゼルス五輪が楽しみでしかないが、彼にも悩みはあるという。やはりサイズについてだ。
「身長169cmでこれだけ高速に腕をかく選手は、世界を見渡してもほとんどいません。となると、参考にできる選手がいないということです。今後来るかもしれないスランプへの対処法などで苦労する恐れはあるかもしれません」(前出・ライター)
一夜にして世界のトップに立った大橋。その存在を海外のトップスイマーたちも注目している。
水泳教室を開催するため、来日中だった2024年パリ五輪4冠のレオン・マルシャン(フランス)もその一人。決勝前の9月22日に取材に応じ、大橋の印象を「とても怖い。このまま成長してくれることを願っている。彼と一緒にレースすることは楽しみであり、少し怖いです」と語った。その2日後、マルシャンの印象は、現実のものとなった。
日本のこれからの競泳界隈に、楽しみがまたひとつ増えたようだ。
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