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【米国人番記者対談】大谷翔平の故障相次ぐ「二刀流」と球団との「コミュニケーション不足」…WS3連覇へ正念場の10月

スポーツ 記事投稿日:2026.10.03 06:00 最終更新日:2026.10.03 06:00

【米国人番記者対談】大谷翔平の故障相次ぐ「二刀流」と球団との「コミュニケーション不足」…WS3連覇へ正念場の10月

ポストシーズンでの復活が期待される大谷(写真・共同通信)

 

 ドジャースは5年連続のナ・リーグ西地区優勝を決め、14年連続でポストシーズン(PS)進出。9月30日(日本時間、以下同)に開幕するPSで、1998~2000年のヤンキース以来となるワールドシリーズ(WS)3連覇を目指す。

 

 その鍵を握る大谷翔平は今季、ドジャース移籍後初めて開幕から「二刀流」に挑んだものの、左膝と右上腕二頭筋の故障に苦しみ、9月には負傷者リスト(IL)入り。24日のパドレス戦で復帰をはたしたが、故障が相次いだ今季、球団のコンディション管理は適切だったのか。そして32歳となった大谷は、この先も二刀流を続けられるのか――。

 

 大谷をエンゼルス時代から追い続ける米国人番記者2人に、大谷の現在地と二刀流の行方、そしてドジャースのPSの勝算を聞いた。

 

■大谷と球団とのコミュニケーションに問題が

 

――大谷は、PSまでに100%回復するのか?

 

ビル・プランケット(以下、BP) いまの大谷については、何ひとつ、たしかなことはない。ドジャースはワイルドカードシリーズを免除されたので、さらに4日間の休みがある。そこでシミュレーションゲームをしたりしながら、タイミングを取り戻す時間を作れる。そうすれば、PSではみんなが観たい大谷に戻れるかもしれない。ただ、再び故障するリスクはつねにつきまとう。

 

ジャック・ハリス(以下、JH) 少なくとも、PSでもプレーすると思う。ただ、故障の影響でパフォーマンスが大きく落ちれば、難しい判断を強いられる。IL入り前の13試合くらいは、本来の打撃ができていなかった。PSでまたその状態になったら、「出場し続けられるか」を球団は判断しなければならない。

 

 2年前のPSで、フレディ・フリーマンが足首を痛めていたときと同じだ。最初は毎試合出られなかったが、WSまでに状態がよくなり、最終的にはWSでMVPになった。大谷についても、どうなるかはPSに入ってからじゃないかな。当初は、左膝が大きな問題だと思われていたが、いまは上腕二頭筋、あるいは腕全体のほうが心配されている。

 

BP 私は、上腕二頭筋のほうが深刻なんじゃないかと思っている。この1カ月で唯一、大谷と話せたときに、「スイングをすると上腕二頭筋が痛む」と認めた。「スイングを始めるときにも、振り終わるときにも痛む」と。膝なら2週間休めば、ある程度改善するかもしれない。ただ、リードアーム(左打者の大谷にとって右腕)を使わずにスイングすることはできない。

 

JH 上腕二頭筋だけという感じでもない。監督の話を聞いていると、腕全体の問題のようだ。IL入りの決断が遅すぎたとの声もある。

 

BP 球団と大谷のコミュニケーションがよくなかったんじゃないかと思う。大谷にも多少、責任はある。故障がどれほど悪化しているのか、球団にすべて正直に話していなかったんじゃないか。ただ、選手ならそれも当然。選手が「どこどこが痛いから試合を休ませてくれ」と言うことはない。選手はみんな故障していてもプレーしたいからね。

 

 とはいえ、投手としてはもっと早く止めるべきだったと思う。(7月15日の)オールスター明け、フィラデルフィアでブルペン投球をした後ぐらいにはね。強く投げたら、その翌日に膝が痛くなったわけだから。

 

JH 結果論で振り返れば、もっと早い段階でILに入れるべきというタイミングが何度もあったと思う。オールスター休みに治療を受けたり、いろいろ対応はしたけれど、まだ状態がよくなかった可能性があるなかで、打者として出場させ続けた。8月になっても投手復帰を目指して、ブルペン投球をしたときもあったからね。

 

 ILに入れるまで5日間待ったこと自体は、それほど大きな問題ではないと思う。でも、それまでの流れは、大谷について適切な判断をするのが難しかったことを象徴している。腕を振ったり、顔をしかめたりするまで、球団は「どこかを痛めている」と認めることに消極的だった。打席で本来の状態ではないことは明らかだったのに、それでもすぐILに入れず、「数日休ませて、また戻して」と曖昧な対応を取った。そして、戻ってきた試合で腕に何かを感じたのに、本人は翌日まで球団に伝えなかった。大谷と球団のコミュニケーションに問題があったのはたしか。その結果、PSを前に100%ではなくなり、投手としては選択肢にすら入らなくなってしまった。

 

■夏に2~3週間ほどマスコミ取材をNGに

 

――大谷だからこそ、球団の判断が難しくなったのか?

 

JH ほかの選手だったら球団は違う対応をしていたと思う。タイラー・グラスノー、ブレイク・スネル、2024年の山本由伸、2025年の佐々木朗希を見ればわかる。投手に関して、ドジャースは通常、かなり慎重だ。すぐにILに入れて、「とにかく10月(PS)に健康な状態にしよう」ということを最優先してきた。

 

――球団とのコミュニケーションだけでなく、大谷はメディアとも3週間ほど話さない時期があった。

 

JH 8月中旬から9月上旬まで、2~3週間くらい話さなかった。もちろん、故障した選手がメディアを避けるのは、彼が初めてではない。ただ、大谷が話さないことで、周囲の人たちは非常に難しい立場に置かれたと思う。とくにロバーツ監督は、質問に対して嘘をつかず、同時に大谷が明かしたくない体の状態についても、明かさないように答えなければならなかった。

 

 MLBのルール上、大谷には取材を断わる権利がある。でも、公に状況を説明しなかったことで、むしろその間「大谷に何が起きているのか」、多くの疑問と不透明感を生んだのはたしかだ。

 

BP 広報を通じて何度も取材を申し込んだ。でも、いつも「辞退させていただく」という答えしか返ってこなかった。だから、故障について具体的なことを聞けなかった。監督に聞いても、詳しいことはあまり出てこなかった。

 

――「大谷にとって二刀流は負担が大きすぎるのでは」という議論も出てきた。このオフ、球団と大谷は将来について話す必要があるのか?

 

BP 真剣な話し合いをする必要があると思う。ドジャースは10年契約を結んだときから、大谷が10年間、ずっと二刀流を続けられるとは考えていなかった。それは3年なのか? 5年なのか? 7年なのか? 彼は32歳になった。しかも、いまは毎年10月まで戦うチームにいる。エンゼルス時代の6年間は、10月が休みだった。この年齢では、フルタイムの二刀流は負担が大きすぎる。

 

 一方で、本人が二刀流を続けたいのは明らかだ。でも、ドジャースは先まわりして、大谷を守らなければいけない。たとえば、「シーズン序盤の6月までは投げるな」と言うことが必要かもしれない。そこから12試合くらい先発して、PS前にもう一度少し休ませて状態を見る。大谷がやりたいことを全部やらせるという、今年のやり方はうまくいかなかった。そこから球団は学ばなければいけない。

 

JH 球団もどう対応するか決めていないと思うが、ひとつはっきりしているのは、フルタイムの二刀流を完全にやり切れたのは、2021年と2022年しかない。今年の故障は、いまのドジャースにとって何より重要な打撃に影響した。ただ投球については、コンディションが良好なら、いまでもリーグトップクラスの投手だ。だからドジャースとしても、簡単に投手をあきらめたくはないし、本人にもその気はない。

 

 予想だけど、来年は昨年に近い形でシーズンを過ごすことを検討するんじゃないかと思う。ビルも指摘したけど、たとえば前半戦は投げずに、後半戦に向けて投手として仕上げていく。そして、10月に投手として使える状態にする。なぜなら、このチームにとって重要なのはそこだから。

 

■今季はMVPを逃すことが濃厚

 

――ドジャースにとっては、投手・大谷より打者・大谷のほうが重要になる?

 

BP ドジャースに必要なのは「投手・大谷」より「打者・大谷」なんだ。PSを戦える強力な先発陣がいるし、レギュラーシーズンを乗り切るための層の厚さもある。大谷がローテーションに加わる必要はない。

 

 必要なのは、過去2年間のようなMVPレベルの打者・大谷だ。今年はそのレベルの打者ではなかった。投手として多くのエネルギーを使い、さらに故障が積み重なってしまった。結果として、今季はMVPを逃すことが濃厚だ。

 

JH そうだね。MVPは、PCA(ピート・クロウ=アームストロング、カブス)で決まりだろう。大谷は当初、8月の投手復帰を目指した。予定どおり復帰していたら、いまの打撃成績でも4年連続MVPを受賞できていたかもしれない。

 

 今年に関しては、過去サイ・ヤング賞2度受賞のタリク・スクーバルを8月にトレードでタイガースから獲得した時点で、PSの先発枠は埋まった。大谷はその時点で打者に専念してもよかったが、それを決断したときには打席にも立てなくなっていた。球団として優先しなければならないのは、シーズンを通して彼の打撃をできるだけ高いレベルに保つこと。そして投げさせるなら、もっとも価値がある10月に投げられるようにすることだ。

 

――ドジャースは先発ローテーションが豊富。そこが、PSに向けて強みになるのか?

 

BP ここ2カ月ほど、ドジャースはいい状態とはいえなかった。にもかかわらず、私はナ・リーグの優勝候補、そしてWS制覇の最有力候補だと思っている。理由は、先発投手陣がそろっているからだ。昨年も、PSでは打線はそれほど打てなかったし、ブルペンも先発投手に助けてもらわなければならなかった。それでも全部勝った。

 

JH 9月17日のレッズ戦で、左鼠径部の張りを訴えて初回で途中降板したスネルは少し心配だけど、PSを見据えたうえで早めにマウンドを降りたのだろう。いずれにしても、ドジャースでもっとも計算できるのは、先発ローテーションだ。

 

 PSではほぼ毎試合、先発には6回、7回まで投げてもらわなければならない。ブルペンに疑問があるからだ。さらに打線にも疑問があるから、先発が失点することもできない。普通のチームなら、そこまで先発投手に求めるのは無理がある。でも、このローテーションはレベルが高い。山本、スネル、スクーバルらが本来のピッチングをしてくれるなら上までいけると思う。

 

―― 一方、ブルペンは先日もタナー・スコットがセーブ失敗。エドウィン・ディアスがマイナーで打ち込まれた。PSでは、誰がクローザーを務めるのか?

 

BP ディアスは、PSでは選手登録されないかもしれない。今年のPSで、ドジャースでいちばん多くセーブを挙げるのは誰かを予想するのは、賭けの対象にしたらおもしろいと思う。佐々木なのか、アレックス・ベシアなのか、エドガルド・エンリケスなのか?

 

JH まず、佐々木の適応を見極める必要があると思う(8月27日のブレーブス戦で、右手中指のマメが破れ、4回途中で緊急降板)。球団はずっと、マメから復帰したら最初は先発をさせたいと言ってきた。でも、もう時間がない。9月23日のパドレス戦でリリーフとして復帰した。PSでは、当然ブルペンにまわると思うし、クローザーの選択肢になるだろう。

 

BP あとは、スコットがシーズン終盤に復調して、9回をまかせられる状態になるかどうか。複数の投手を使う「クローザー・バイ・コミッティー」のような形になる可能性もある。試合展開によって、投手を使いわける形だね。現時点では、スコットか佐々木ということになると思う。

 

■先発陣がそろっているドジャースがV候補

 

――打線の状態はどうか?

 

JH 大谷のIL入りから、それまで調子が上がらなかったテオスカー・ヘルナンデスやムーキー・ベッツ、カイル・タッカーらが安定してきたのはいい兆候だ。この流れは、昨年10月と似ている。昨年のPSも、打線全体がずっと素晴らしかったわけではない。でも、ヒットやホームランが必要なときに出た。

 

BP 私も、投手陣が十分よければ、必要なのはタイムリーな得点だけだと思う。誰か1人が絶好調になって、チームを背負う必要はない。繰り返しになるが、先発投手がそっろっているなら、ドジャースが優勝候補だと思う。

 

――ただ、今季は勝率5割以上のチームに分が悪いというデータもあるが……。

 

BP そこは少し懸念がある。とくに8月は、レッドソックス、カブス、ブルワーズ、ブレーブスというPSに出場するチームに、13試合で1勝12敗だった。9月に入ってよくなったように見えるけど、ナショナルズやレッズが相手だったからね。

 

JH もちろん、PSは別だという考え方もできる。昨年、ドジャースはブルワーズにレギュラーシーズンで6戦全敗だった。リーグ優勝決定戦で顔を合わせたとき不利が予想されたけど、4勝0敗でストレート勝ち。レギュラーシーズンとPSは、まったく別物だと考えたほうがいい。

 

――最後に、今年の大谷で、もっとも印象に残った試合をひとつ挙げるとしたら?

 

BP ロッキーズ戦(5月28日)で先発し6回ノーヒットだった試合だね。しかも先頭打者ホームランも打った。あの時点では「なんだって可能なんじゃないか」と思った。もしかしたら、サイ・ヤング賞まで獲るんじゃないかと。

 

JH 私は、アリゾナでのダイヤモンドバックス戦(6月4日)だね。6回無失点、被安打2。それに打者として3安打、2四球で5度出塁した。あの試合を覚えている理由は、あれが彼にとって最高の試合だったわけではないからなんだ。投手として圧倒的だったわけでもない。奪三振は6個だけ。ホームランも打っていない。ただ、二刀流をあまりにも簡単そうにやっていた。もし、ほかの選手が同じことをやったとしたら、歴史的な一夜として扱われるだろう。でも大谷だから、「いつもの圧倒的な試合だね」という感じになってしまう。だから、僕がいちばん覚えているのはあの試合だ。

 

 

ビル・プランケット(「オレンジ・カウンティ・レジスター」)
「オレンジ・カウンティ・レジスター」のドジャース番記者。デトロイト郊外出身で、ミシガン州立大卒。1980年代から新聞記者として活動し、MLB取材歴は30年以上。ドジャース、エンゼルスの両球団を長年取材してきた。BBWAA会員で米野球殿堂の投票権を持つ。大谷翔平のドジャース移籍初年度を描いた『L.A. Story』の著者

 

ジャック・ハリス(「カリフォルニア・ポスト」)
昨シーズンまで「ロサンゼルス・タイムズ」でドジャースを担当。今年から「カリフォルニア・ポスト」に移籍し、引き続きドジャースを取材。アリゾナ州フェニックス出身。アリゾナ州立大卒。2019年に「ロサンゼルス・タイムズ」に入社し、エンゼルスの担当などを経てドジャースの番記者に。大谷をエンゼルス時代から継続して取材している

 

取材&文・EIS

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出典元: 週刊FLASH 2026年10月13日号

著者: 『FLASH』編集部

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