
松井秀喜(写真・桑原靖)
2002年11月1日。メジャー挑戦という晴れ舞台にもかかわらず、一人会見に臨んだ28歳の男の表情に笑顔はなかった。「何を言っても裏切り者と思われるかもしれませんが……」と語った重苦しい空気から24年。52歳になった松井秀喜氏が、巨人に「凱旋」を果たした。
10月23日、松井氏の新監督就任発表がおこなわれた。会見に出席した山口寿一オーナーは、就任要請の理由についてこう語った。
「いろんなことがジャイアンツにありまして、ひとつの危機だった年だと思います。そこを力強く乗り越え、強いジャイアンツにしていくには松井監督にお願いするしかない」
『いろんなこと』の最大の要因は、間違いなく阿部慎之助前監督の家族への暴行による逮捕・辞任劇だろう。
「現役監督の不祥事に、関係者のショックは相当なものでした。コンプライアンス面でもクリーンな松井さんを、山口オーナーはどうしても呼びたかったのでしょう。敵を作らず、誰からも愛される人柄は球団のイメージ回復に打ってつけです」(スポーツ紙野球デスク)
今回の新体制では、育成方針も一新されることになりそうだ。
「阿部さんは監督時代、『(若手を)育てるなんて言ってたら最下位』と口にし、チーム内から懐疑的な声もありました。橋上秀樹監督代行に交代してからは若手育成に着手し、特に入団2年めの浦田俊輔選手は今季36盗塁を記録しました。松井さんは彼のような芽が出た選手に花を咲かせる役割になるでしょう」(スポーツ紙記者)
長嶋茂雄氏から「1000日計画」と呼ばれるマンツーマン指導を受けた松井氏だが、自身の指導方針は異なる。
「ヤンキースでアーロン・ジャッジらを指導した経験もあり、若手にも一方的に指示するのではなく本人の判断に委ねるのが彼の流儀です。その手腕を買われ、元DeNA監督の中畑清さんからは11回も臨時コーチを打診されたといいます」(同)
そんな『ゴジラ流』で早くも期待がかかるのが、ドラフトで強行指名した横浜高校・織田翔希投手(18)の獲得交渉だ。
松井氏は「世界一のピッチャーになる可能性のある選手と契約できるかもしれないチャンスをいただいた」と意欲をみせた。前出のデスクは慎重な見方を示す。
「松井さんが『メジャー挑戦は巨人で経験を積んでからでも遅くない』と説得すれば、入団に傾くのではとの見方があります。ただ、織田投手はすでにドジャースと良好な関係といわれ、18歳の彼が松井さんという名前にどこまで惹かれるかは未知数です」
高校生への影響力は未知数だが、松井人気は、いまなお健在だ。
「平日昼帯の番組でプロ野球の会見が生中継されるのは超異例です。来春のキャンプなど、大谷翔平に代わって『松井巨人』がワイドショーの主役になる可能性すらあります」(在京テレビ局関係者)
かつて本誌のインタビューでは、セクシー女優のグラビアを見て大爆笑する姿を見せたこともある。
「会見では『僕には長嶋さんのような影響力はない』と謙遜していましたが、彼ならではのおおらかなユーモアは健在でしょう」(同)
背番号は、長嶋氏が第1次監督時代につけた「90」。
「(長嶋さんは)選手・長嶋茂雄がいないチームで苦労され、その半面大きな情熱で向き合ったと思っております。その気持ちを継いでいきたい」と松井氏は話した。
「今日は満面の笑顔で自分の故郷に戻ってきた」と語った『シン・ゴジラ』の逆襲が始まる。
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