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知られざる大相撲の「後援会長」どうすればなれる?何をする?

スポーツ 投稿日:2018.11.24 16:00FLASH編集部

知られざる大相撲の「後援会長」どうすればなれる?何をする?

断髪式での琴欧洲と金森さん

 

 相撲部屋にはそれぞれ、支えてくれる後援会があり、後援会長が存在する。大きな家族の一員のように相撲界と付き合っているタイプの後援会長もいれば、金森仁さんのようにスポーツのファンに近い人も。

 

 金森さんは、レスリングの伊調馨選手のパワハラ問題の際、倫理委員会のメンバーとしてマスコミを前に会見をした弁護士その人である。じつは元琴欧洲が2017年に作ったばかりの鳴戸部屋の後援会長だ。

 

 

「もともと相撲はテレビで見る程度にすぎなかったんですよ」

 

 金森さんの事務所の応接室。マスコミの前では淡々と話していた金森さんだが、相撲の話になると相好を崩す。

 

「2006年ですかね、顧問先にブルガリア大使館への出入りがある方がいまして。琴欧洲に後援会がなくて困っている、作りたいがどうだろうかという話をされたんですね。私は、そんなのやめとけよと」

 

「あ、そうなんですか?」

 

「ええ。ルールもはっきりしないし、金もいっくらでもかかる世界だと。でもね、『とりあえず琴欧洲に会うだけ会ってみてくれ』と言われまして。一度食事をしたんですね」

 

 金森さんにとっては、初めての力士との会合だったという。

 

「そこで琴欧洲が、『自分はお金を貯めてブルガリアに帰りたいんじゃなくて、将来は日本で力士を育成したい、そのために応援してくれる人を探してます』と言うんです」

 

 真面目で誠実なその人柄に打たれ、それならちょっとくらいは応援しようか、と思ったそうだ。

 

「最初は場所前の激励会から。私が10人、20人と人を集めて開催するんです。そこからだんだん深みに入っていきましてね。

 

 個人後援会を作るにあたり、周りから押し出されるような形で私が後援会長になったんです」

 

 それからは琴欧洲が引退するまで、個人の後援会長を続けた。結婚式、断髪式にも参加し、独立した後は部屋の後援会長を務めることになったという流れだ。

 

「一生懸命相撲を見るようになったのは、後援会をやるようになってからです」

 

 そこから金森さんは相撲にのめり込んでいく。

 

「毎場所2回は見に行きますが、朝の8時の序ノ口からずーっと見ますよ。やっぱり、見ていて全部面白いんです。

 

 稽古にも1、2カ月に1回ほど見学に行きますが、こういう稽古をしていて、こういう結果が出たとか。見ているとだんだん何が重要なのかがわかってくるんですね。かいなの返しだとか、足の運びとか、腕の絞りだとか。

 

 それぞれの取り口もありますよね。突っ込んでいく人、まわしを取りたい人。仕切りの時から勝負は始まっています。どう立ち合おうとしているか、目の動きですとか、いくらでも見るところはあります」

 

「スポーツとして、勝負として面白いんですね」

 

「それからその人にとってどういう一番で、どういう結果になったとかですね。6勝0敗同士の優勝がかかった一番とか、引退間近の人の一番とか。初日と中日と14日目とでは、取り口も変わってくる。緊張が取れたり、体調が変わったり」

 

「なんだか応援したくなりますね」

 

「でしょう。先場所負け越して、千秋楽パーティで泣いてたやつなんかがね、2カ月間必死に稽古して。

 

 なんでこれができないのかって悔し涙を流しながらの稽古ですよ。それで今度は勝ち越したってなれば、祝儀を渡したくなるでしょ」

 

 金森さんはにやっと笑う。後援会は1口1万円の年会費を払えば入会できる。何口も入る必要はない。ただ、個人で何かを贈るのは自由。祝儀としてお金を包む人もいれば、米や肉を贈る人もいる。

 

 なにも大金が必要なわけではない。そこにあるのは素直な気持ち、必死に頑張っている人のために何かしてやりたいという、人間誰しも抱く思いだった。

 


取材・文/二宮敦人

 

にのみやあつと
1985年生まれ。小説作品に『最後の医者は雨上がりの空に君を願う』。初のノンフィクション作品『最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常』が12万部を超えるベストセラーに

 

(週刊FLASH 2018年11月27日号)

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