スポーツスポーツ

元大関・朝潮の「わが生涯最高の一番」1980年の北の湖戦

スポーツ 投稿日:2019.01.10 16:00FLASH編集部

元大関・朝潮の「わが生涯最高の一番」1980年の北の湖戦

 

「昔はいまよりも強い力士がいっぱいいたんだ」
 

 かつての猛者たちは口をそろえてこう語る。元大関・朝潮で、現・高砂親方(62)が、かつて繰り広げた、記憶に残る「名勝負」を振り返る。

 

 横綱相手だと不思議なほど強い。その半面、格下にはあっさり負けることもしばしば。「大ちゃん」こと朝潮は、そのギャップすらも愛された力士だった。

 

 

 その人気のほどは、『がんばれ!! タブチくん!!』のいしいひさいちが、「ワイはアサシオや」を夕刊紙に連載していたことでもわかるだろう。

 

「横綱キラー」を強く印象づけたのは北の湖戦。あの憎らしいほど強かった大横綱が、対・朝潮戦では、通算7勝13敗と大きく負け越している。

 

「確かに横綱相手には勝ったほうだと思うけど、秘訣なんか何もないよ。上の力士を倒すこと。それこそが、力士としてのあり方ってことじゃないのかな」

 

 とはいうものの、やはり北の湖には格別な思いがあったという。

 

「当時いちばん強い横綱だからね。いちばん倒したい相手なんだ。同じ学生相撲出身の輪島さんにも勝ちたかったけど、やっぱり北の湖さんを倒したい気持ちは強かった」

 

 特に思い出に残っているというのが、2度めの対戦となった1980年の3月場所。最初の対戦はその1年前で、寄り切りで敗れていた。

 

「俺がまだ入幕して2年めだな。その北の湖戦の前日、ある記者が『まず勝てないでしょう』なんて言ってきたから、じゃあ賭けようかってことになったんだ。負けたらメシを食わせてやる、その代わり、俺が勝ったらそのヒゲを剃ってこいって」

 

 その場所、北の湖は初日から10連勝。朝潮は7勝3敗で、好調とはいえ、横綱が圧倒的有利との見方は当然だった。しかし、立合いで思い切り当たると、激しい突っ張り合いとなり、最後は朝潮の引き落としにバランスを崩し、横綱は手をついた。

 

「次の日、その記者がヒゲを剃ってきたのを見たときは痛快だったなあ(笑)」

 

 勝っても負けても、取組後は「大ちゃん節」で記者たちを笑わせた。相撲ファンだけでなく、記者たちも大ちゃんのファンだったのだ。

 

◯朝潮(引き落とし)北の湖●【1980年3月場所11日目】

 


元大関・朝潮/現・高砂親方
(あさしお/たかさごおやかた)
1955年12月9日生まれ 高知県出身 近大から高砂部屋に入門、1978年3月初土俵。生涯戦歴564勝382敗33休。幕内優勝1回。1989年引退。親方として元横綱・朝青龍らを育てた

 

(増刊FLASH DIAMOND 2018年11月10日号)

続きを見る

スポーツ一覧をもっと見る

スポーツ 一覧を見る

今、あなたにおすすめの記事