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東京で明太子が買えるのは「相撲巡業のおかげ」と角界関係者
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2019.02.14 16:00 最終更新日:2019.02.14 16:00
角界において「なんでも屋」であり「職人」でもある、世話人。作家・二宮敦人が、世話人たちへの取材を通じ、力士と裏方の「食文化」について綴った。
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食事にも資材搬入の大型トラック、その陰で世話人たちは弁当を広げる。今日のメニューはカレーライス弁当と、幕の内弁当の2種類。どちらかを選ぶということではなく、2つで1人分だ。
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「力士たちはいいけど、我々には多すぎる」と笑うのは、世話人の筆頭・白法山さんだ。
「今でこそ食事はこういうのだけど、昔はもう1台トラックがあって。鍋、釜、七輪なんかを積んでいって、現地でちゃんこを作ってたんだ」
――えっ! 材料はどうするんですか?
白法山さんの世話人仲間の、斎須さんが割り込む。
「そりゃあお前、現地調達だよ。その土地の人にどう調理するのがいいとか、教えて貰いながら。今は芸能人がテレビで宣伝すればそれが売れるけど、昔はお相撲さんがあちこち行くことで、じわじわ広がってったのよ。
アンコウなんかは当時、大阪ではあんまり食べないものだったんだ。でも俺たちはおろし方とか、食べ方を習ってるから、買い求めて食べるわけ、うまいうまいって。
するとね、2、3年経つと大阪でもアンコウの値段が上がっちゃうの。みんなが食べるようになる」
白法山さんが頷く。
「明太子なんかもそう。東京では絶対売ってなかったもん。俺が明太子をお土産に買ってったらさ、家の人がパカッと開けて『コレ腐ってんじゃねえか?』って言ったからね。それが今じゃ、ずいぶん広まった」
――お相撲さんは、旅人でもあったわけですね
「うん。1回家を出たら、帰らない時は2カ月くらい帰らないから。九州行ったり、北海道行ったり。列車で駅について、宿札ってのを貰うの。
それがその日泊まる場所なんだけど、どこだかわかんないからその辺の人に聞いてね。親切なおじさんが車で乗っけてってくれたり。
空いた時間に観光したり。宿じゃなくて、普通の人の家にも泊まったなあ、地元の名士のような人の家に。凄いご馳走が出たな」(白法山さん)
取材&文・二宮敦人
にのみやあつと
1985年生まれ。小説作品に『最後の医者は雨上がりの空に君を願う』。初のノンフィクション作品『最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常』が12万部を超えるベストセラーに
(週刊FLASH 2019年2月5日号)