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白血病の権威が語る「池江璃花子」最新治療現場

スポーツ 投稿日:2019.02.28 06:00FLASH編集部

白血病の権威が語る「池江璃花子」最新治療現場

写真・JMPA

 

 競泳女子の池江璃花子選手(18)が2月12日、ツイッターで白血病を公表すると、谷口修一医師(59)のもとには取材依頼が殺到した。

 

「回診中にテレビ局からかかってきた電話で知りました。思わず『ええーっ!』と。コメントを求められたけど、ショックで解説なんかできないとお断わりした。これは本心です」(谷口医師、以下同)

 

 谷口医師は、白血病をはじめ、血液ガン治療で世界有数の実績を誇る虎の門病院(東京・港区)の血液内科チームを率いる部長である。

 

 虎の門病院には全国から患者が訪れる。ほかの医療機関では積極的治療の難しい人たちが大半を占めている。故十二代目・市川團十郎さんも、その1人。2005年に急性前骨髄球性白血病が再発し、谷口医師が担当を務めた。

 

 團十郎さんが2004年に急性前骨髄球性白血病を発症したのは、長男の十一代目・市川海老蔵襲名の前後だった。約半年後に復帰。2005年に再発。

 

「移植の説明をした後、『で、僕はいつ復帰できるんですか』と聞かれた。啞然としました。團十郎さんの頭の中には舞台しかなかった。

 

 2008年7月には、妹さんから2回めの骨髄移植を受けました。その年の10月には、ドラマに出演。2009年の1月には国立劇場の公演で昼夜の出番をこなした。びっくりしましたね。

 

 2カ月半ほどの入院期間には、いちばんきつい時期以外は廊下をうろうろしていました。リハビリのようなものでしょう。『必ず舞台に立つ』という意志がみなぎっていた。これは奇跡です」

 

 そして2011年7月、團十郎さんは全国骨髄バンク推進連絡協議会の会長に就任した。池江選手にも、團十郎さんと同じように、「復活の日」は訪れるのか。

 

「なんとも言いようがありません。治療が始まったという噂も聞こえてこないし、発表する必要もない。急性白血病の種類がわからないことには、治療のスケジュールも見えてきません。

 

 ただ、5、6カ月は入退院を繰り返さなければならないのは間違いない。十分に療養をするとなると、半年では無理かもしれません。退院の目途が7月あたりです」

 

 白血病とは血液のガンだ。大きく急性白血病と慢性白血病の2つに分けられる。

 

 血液は全身の骨の中にある骨髄で作られる。骨髄の中に存在する造血幹細胞が分化、分裂し、白血球や赤血球、血小板などになっていく。その過程で未分化な若い細胞がガン化する。

 

 これが急性白血病。池江選手が発症した病気と考えられる。急性骨髄性白血病や急性リンパ性白血病、急性前骨髄球性白血病などの種類に分けられる。

 

「急性白血病はよく知られた病気。でも、患者さんの命がなぜ危険にさらされるかは、あまり知られていません」

 

 ガン細胞の最大の特徴は、人間の予想をはるかに超えたレベルで無限に増殖することだ。白血病細胞も同じ。骨髄の中を埋め尽くす勢いで増える。

 

「これでは、正常な血液が造れなくなる。正常な赤血球や白血球、血小板が減少していけば、いずれ致命的な状態へと至ることになります」

 

 急性白血病の症状にはどんなものがあるのだろうか。赤血球が減ると、貧血になる。動悸、息切れや、得も言われぬ倦怠感が生じる。

 

 白血球が減れば、感染症のリスクが高まる。風邪のような状態で、38度くらいの発熱が1週間以上も続くことがある。血小板が減ると、出血しやすくなる。青あざが出来て、なかなか消えなかったり、歯ぐきから血が出たりする。

 

 これらの症状自体は日々の暮らしの中で誰もが経験する。急性白血病の場合、「止まらない」「続く」のがポイント。

 

「こうした症状が見られたら、必ず医療機関を受診することです。急性白血病はほかのガンと違って、『検診』で発見するのは難しい。でも、血液検査を受ければ、すぐに見つけられる。そういう意味では簡単なガンともいえます」

 

 診断がついて入院している患者は、輸血が受けられる。だから、貧血や出血で直ちに危険な状態になることはない。

 

 ただ、感染症だけは別だ。白血球は原則として輸血で補えない。感染症にかかれば、治りにくく、最悪の場合、命を落とすことになる。

 

 血液は体の中を駆け巡っている。だから、血液のガンである白血病には「早期発見」の概念はないし、「転移」もない。ほかのガンのような「病期(ステージ)」もない。

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