だが、順調に見えたリハビリに変化が見えたのは、2018年1月だ。まず、火曜日は自宅近くの散歩だけですませることが多くなり、次いで木曜日もそうなった。堅く守ってきたルーティンが崩れたのだ。
吉見氏がミスターの姿を最後に見たのは、2018年6月30日。「胆石のため7月から入院している」と巨人軍が発表したのは8月8日のことだった。
ミスターが入院してから、吉見氏は、大学病院と田園調布の自宅を張り込み続けた。そして2018年12月中旬、ミスターは退院した。
「退院後は、外出してのリハビリはしていません。その代わりに、理学療法士の男性が自宅に通うようになった。現在では長嶋さんは、サッカーボールほどの大きさの球を、麻痺している右手で投げるほどに回復しているようです。
本人はもっと体を動かしたいのか、『どうしても外を歩きたい』と言っていると聞く。ただ、以前と比べて痩せている姿を、次女の三奈ちゃんが見せたくないんでしょう」
2019年は、巨人軍の創立85周年にあたる。ミスターを開幕戦に招くのには、上層部の計算があるという。
「今季から3度めの指揮を執る原辰徳監督は、『全権監督』という条件でオファーを受けた。ただ、巨人の上層部は、なんでもかんでも原監督の思いどおりにはされたくない。
そこでミスターを引っ張り出して、原監督に歯止めをかける存在になってもらいたいのです」(前出の巨人担当記者)
そんな思惑をよそに、ミスターはリハビリに励んでいる。吉見氏の取材は、4800日を超えた。
「一茂は、一度も姿を見たことがないけどね(笑)。俺がこれだけ取材を続けられたのも、長嶋さんのすごさですよ。毎日、通うのを許してくれていた。
現役時代から長嶋さんは、熱意のある記者を拒むことはなかった。誰よりも、長嶋さんが歩く姿を見たいんです」
次のページでは、15年にわたる、ミスターの闘病史を掲載する。