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貴景勝の母校「埼玉栄高校」OBは米500kgの差し入れが伝統
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2019.05.16 11:00 最終更新日:2019.05.16 11:00
全国大会の優勝回数は史上最多の54回。卒業生は豪栄道(33)、貴景勝(22)を筆頭に、関取だけで10名。幕下以下にも元横綱・大鵬の孫の納谷(19)、高校個人5冠の北の若(18)ら有望株が揃う。その数は30名を超え、埼玉栄高校出身の力士は、角界の一大勢力になっている。
「特別なことはしていません。しいて他校と違う点を挙げるなら、食事と筋力トレーニングくらいですか」と語るのは、同校を率いて30年めとなる山田道紀監督(53)だ。
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山田監督の朝は早い。現在、中学生6名、高校生16名が監督の自宅で寮生活を送っているが、給食の出る中学生を除く、16名ぶんの弁当作りが5時から始まる。朝食の用意に加え、夕食時にOBが訪問すると、30人ぶん以上の料理を作ることもある。
「僕も高校で寮生活でしたが、食事があまりおいしくなく、メニューも毎週決まっていました。これでは食欲も湧かないし、体も大きくならない。僕は手作りにこだわり、おいしいものを食べさせたいと思っている。
メニューは前の晩の残りや、唐揚げ、ウインナーなど定番のもの。ただ、味つけは飽きないように、毎日変えています。焼きそばには、桜海老やカレー粉を入れて、変化をつけたりという具合に」
とはいえ弁当に加え、夕食も手作り。これを監督に就任した1990年から、夫人の早苗さんとずっと続けてきたのだ。2人が休むのは、生徒たちが帰省する年末の3日間だけだ。
生徒たちは6時に起床し、当番制の掃除を終えて朝食。7時から1時間の朝練。その後、授業終了後に1時間半稽古し、夕食。そして、21時半から30分程度のランニングというスケジュールだ。強豪校にしては練習時間が短い。
「たとえばぶつかり稽古。相撲では、よく『もう一丁』となることが多いですが、うちではほとんど『もう一丁』はしません。
番数が少なくても、いい取組だったら、そこでやめさせる。いいイメージを持って終わらせたいからです。相撲は一番しかない。その一番に懸けることが大事だと思っていますから」
その代わり、筋力トレーニングは厳しい。四股や腕立て伏せに「どんな効果があるかイメージすることが大事だ」とアドバイスを送る。そして週に3日は、プロのトレーナーが指導する。
「15年ほど前から取り入れています。メニューは厳しいですよ。プロの力士以上、五輪選手クラスの高いレベルです。角界に進んだ卒業生も一緒にやると、ヒ~ヒ~言ってますから(笑)」
当時、まだ一般的ではなかった筋力トレーニングをいち早く導入したことで、埼玉栄高校は常勝校となった。
となれば、中学で名を挙げた生徒たちが「山田監督に教わりたい」と、集まってくる。が、「天狗」になって門を叩く生徒が多いことも事実だ。
「でも、天狗の鼻はすぐ折れます(笑)。ただ、僕は怒ってではなく、褒めて折ります。貴景勝もやんちゃ坊主で入ってきて、先輩にもタメ口。掃除も嫌々やるような子でした。
そこで僕は、『えらいな。みんなは、お前が掃除していることを知らないぞ』と褒める。すると、一生懸命掃除をするようになるんです」