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朝乃山「目指すは勝ち越し」屈辱の5連敗をいま振り返る
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2019.07.09 06:00 最終更新日:2019.07.09 06:00
「まさか優勝だなんて、自分がいちばんびっくりしましたよ」
令和初となった先場所で、前頭八枚目から優勝をかっさらった25歳が、屈託もなく笑う。「三役未経験力士」の優勝は58年ぶり。富山県出身としては、大正5年の太刀山以来、103年ぶりとなる快挙だった。
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表彰式でトランプ大統領からトロフィーを授与された。
「デカかったです。元プロレスラーなんですよね。え? 違うんすか。でもそれくらいデカかったっす」
その前の3月場所では、勝ち越しまであと1勝というところから、まさかの5連敗で負け越しの屈辱を味わった。
「中日(8日目)に食べた、牡蠣にあたったんですよ。生とフライ、ひとつずつしか食べていないのに……。
その2日後から調子がおかしくなって、上から下から……。すいません、汚ない話で(笑)。全然力が入らない、いや、入っても危ないですから。よくあれで土俵に立ったと思いますよ」
師匠の高砂親方(63)からは大目玉を食らい、それで気持ちが大きく変わった。
「自己管理の徹底。危なそうな食べ物には手を出さない。当たり前ですけど。それで、どうせなら場所中の酒もやめようと。酒に誘われても、飲むのはサイダーで」
巡業と場所前に充実した稽古を積めたことに加え、筋トレの成果も出ていたという。
「基本は下半身。下半身を鍛えることで、前に出る力が出てきたという面もあったと思います」
心強い助っ人もいる。付け人の朝鬼神(26)は、インストラクター経験もある、元ボディビルダー。トレーニングでわからない部分があれば、質問をぶつけることができる。
優勝後は、地元でのパレードなどの多くの行事が組まれ、稽古もままならない日々を送った。今場所は自己最高位の前頭筆頭。初の横綱戦をはじめ、上位総当たりの “試練の場所” だ。
「もう優勝は過去のこと。思いきって横綱、大関に当たっていくだけです。体が固まってしまうので、場の雰囲気にのまれないようにしたい」
本人は「目指すは勝ち越し」と謙虚だが、その先には大きな夢を見据える。
「この世界に入った以上、目指すのはいちばん上。四つ相撲の看板力士、みんなの目標とされる力士になりたい」
入門時から「大器」と期待された、恵まれた体。突き押し相撲全盛のなかにあって、本格的な四つ相撲で魅せることができる、貴重な存在だ。非凡な素質が、ここへきてようやく花開こうとしている。
あさのやま
1994年3月1日生まれ 富山県出身 187センチ 177キロ 近畿大から高砂部屋入門。2016年3月初土俵。2017年9月新入幕。2019年5月場所で初の幕内優勝。敢闘賞3回、殊勲賞1回。愛称「富山の人間山脈」は、若松親方が命名。理由は「天然パーマの感じがアンドレ・ザ・ジャイアントみたい」だったから
コーディネート・金本光弘
(週刊FLASH 2019年7月23・30日号)