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ディープインパクト急死で…「種馬ビジネス」本当のカラクリ

スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2019.07.30 16:05 最終更新日:2019.07.30 16:06

ディープインパクト急死で…「種馬ビジネス」本当のカラクリ

 

 種牡馬として偉大だったディープインパクト。究極のギャンブルともいわれる「種馬ビジネス」の裏側とは――。

 

 1996年、鳴り物入りで輸入された種牡馬がいた。その名はラムタラ。英国ダービー、キング・ジョージ、そして凱旋門賞というヨーロッパ最高峰のレースを無敗で総ナメにしたのだから文句のつけようのない名馬だが、そのうえ血統も超のつく良血だった。凱旋門賞を勝ってそのまま引退、種牡馬となったラムタラは世界中のホースマンたちの羨望の的だった。

 

 そのラムタラが日本へやってきたのは引退の翌年のこと。トレードマネーは33億円。1口1億800万円、41口で44億円あまりの巨大シンジケートが組まれた。

 

 

 それから10年後の2006年、ラムタラはイギリスへ売却されることになった。価格は2750万円。購買額の120分の1である。なぜこのようなことが起こるのか。

 

 結論からいえば、種牡馬としてのラムタラは失敗に終わったからである。ラムタラ産駒で中央競馬の重賞レースを勝ったのはわずか2頭。GIを制した馬はいない。まったくの期待はずれだった。

 

 導入初年度は112頭の繁殖牝馬を集め、種付料も1500万円と一流だったが、2006年に種付けしたのは31頭、種付料も20万円と暴落。「種牡馬失格」の烙印を押されての売却だった。

 

「シンジケート会員の多くは損失を出しているはずです。1口1億800万円をペイするには、産駒をかなり高額で売却しなければいけませんが、馬が売れない時代でもあり、難しいでしょう。

 

 またラムタラに見合うだけの繁殖牝馬を購入するために、さらに借金を増やした牧場もあったと聞きます」(馬産地事情に詳しい競馬ライター)

 

 どんな名馬でも、産駒が走らなければ種牡馬としての価値はない。投資という観点からすれば、これほどリスクの大きな商品もないだろう。

 

 それでも生産者たちは種牡馬を探しつづける。もちろんよりよい馬を生産するためだが、それはまた莫大な富を生み出すものだからだ。種牡馬とは「究極のハイリスク・ハイリターン商品」なのだ。そのハイリターンの顕著な例が、サンデーサイレンスである。

 

 サンデーサイレンスはディープインパクトをはじめ、多くの活躍馬を出した、日本競馬史上最高の種牡馬である。ケンタッキーダービーなどを勝ち、アメリカの年度代表馬に選ばれたほどの名馬だったが、意外にも血統的な評価は低かった。

 

 そのため引退後はアメリカでシンジケートが組まれたものの会員が集まらず、日本へ売却されている。とはいえ購入金額は16億円、1口4150万円×60口=24億9000万円という当時の国内最高額でシンジケートが組まれたのだから、当然その期待は小さかろうはずはない。

 

 そして、サンデーが出した結果はその期待をはるかに上回っていた。

 

 ここで種牡馬シンジケートについて説明しておこう。シンジケートとは簡単にいえば種牡馬の共同所有。会員はその種牡馬の種付け権利と、会員以外への種付け(余勢種付け)から得た収益を配当として得ることができる。

 

 シンジケートを組むことによってラムタラやサンデーサイレンスのような高額な種牡馬を導入することができるのである。

 

 サンデーサイレンスは2002年に死ぬまで、12シーズン日本で種付けを続け、1500頭もの子供を残した。産駒は高額で取引され1億円を超えることも珍しくなく、種付料は2500万円にもなった。年間平均150頭もの牝馬に種付けすることで、サンデーは莫大な富を生み出していった。

 

 例えばある年、150頭に種付けした場合、余勢は150−60で90頭分。2500万円×90=22億5000万円。ここから諸経費を引いたとしても、シンジケート1口につき3500万円の配当を得ることができるのだ。

 

 さらに種付け権利もあるので、会員は実質6000万円以上もの利益を毎年得ることができた。サンデーを導入した社台グループの吉田照哉氏らが長者番付上位の常連になったのも、サンデーの存在があればこそだった。

 

「『種を制するものが世界を制する』という言葉がありますが、サラブレッドビジネスがまさにそうなんです。サンデーの出現によって、日本競馬界は社台グループの寡占状態にまでなっている現状です。

 

 またちょうどサンデーの時代と重なるように、多頭数種付けが可能になったことも大きい。以前は年間60頭前後が常識だったのです。

 

 しかし種牡馬の当たりはずれだけは、これは実際に産駒を走らせてみるまでわかりません。血統でも、競走成績でも、馬体でもわからないのです。馬券などよりはるかにスケールの大きな“大バクチ”といえるかもしれません」(前出の競馬ライター)

 

 ディープインパクトは2006年に引退し種牡馬となったが、その際に組まれたシンジケートは1口8500万円で60口、総額51億円といわれている。

 

 種牡馬成績は2018年まで7年連続で1位。2019年もここまで2位以下を大きく引き離して独走中だ。これまで5頭のダービー馬を輩出するなど大成功を収めているだけあって、ディープの種付け料はなんと4000万円。もちろん国内最高額だ。2018年まで毎年200頭前後に種付けしており、競走馬として1200頭以上がデビューしている。

 

 通算勝利は1900を超え、子供たちが稼ぎ出したのは513億円以上。ディープインパクトは種牡馬としても「日本史上最強馬」だったのである。

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