「サワディーカップ、ポムチューアキラ・ニシノカップ(こんにちは、私は西野朗です)」
タイサッカー協会による “フライング発表” 騒動で、一時はぎくしゃくしたものの、西野朗氏(64)が、サッカーのタイ代表および、同国の五輪世代代表監督に就任した。西野氏への期待は大きく、監督就任も同国で連日報道されているという。
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冒頭のタイ語による挨拶は、7月21日の就任会見でのもの。最後には手を合わせる挨拶のポーズも披露し、その顔は晴れやか。だが、日本の関係者からは、行く末を案じる声もちらほらと……。
「仮にもJリーグで最多勝利数を誇る監督であり、ロシアW杯では、監督就任から日が浅かったにもかかわらず、チームをベストに導いた “英雄”です。
一方、タイはW杯に出場したことがない。西野氏が監督になっても、タイがこれまでどおり予選敗退なら、経歴に傷がつきますよ」
日本サッカー協会や西野氏の関係者からは、そういう理由で反対の声が上がっていた、とスポーツ紙記者は語る。だが、本人が「どうしても現場にいたい」と押し切って就任したという。
さらに……。
「日本からスタッフを連れていく予定はなく、まさに『単身』で乗り込むつもりだそうです」(担当記者)
64歳には厳しい海外挑戦となりそうだが、当地のサッカー事情はいかほどか。
「タイの選手はもともと非常にポテンシャルが高いんです」
そう語るのは、2019年の6月までタイリーグのノーンブア・ピチャヤFCで監督を務めるなど、タイで5チームを率いてきた神戸清雄氏(57)。
だが、その一方で日本人には信じられないくらい「ルーズ」なことが弱点になっているそうだ。
「遅刻してくる選手もいて、練習開始に全員が揃わないこともしばしば。そういうこともあり、ポテンシャルの高さのわりに、国際舞台で結果を出せなかったんです」(神戸氏)
しかし外国人監督の受け入れで、規律が重視されるようになり、タイのサッカー選手たちは変わりはじめている。
また、タイの経済成長もサッカーに好影響を与えている。タイ1部リーグで、ブリーラム・ユナイテッドに所属する元日本代表の細貝萌選手(33)はこう語る。
「ブリーラムは、立派なクラブハウスをいくつも持っていて、宿泊も可能。ヨーロッパでも一部のメガクラブを除いて、こんな施設は見たことがありません」
肝心の実力はというと−−。
「選手レベルの差が激しく、チームプレーなどにはまだ難があります。でも、チャナティップ選手(北海道コンサドーレ札幌)が、昨季のJリーグベストイレブンに選出されるなど、非常に高いテクニックを持つ選手がたくさんいる。
技術的な部分は、これまでも日本にとって脅威でした。西野さんが監督になって不足している部分が備われば、怖い存在になると思いますよ」(細貝)
西野監督がいるタイ代表は「鬼に金棒」状態。神戸氏も「W杯最終予選で同組になれば、西野監督が率いるタイ代表は間違いなく日本の脅威になるでしょう」と話す。
かつての日本の英雄が、「最強敵」として日本を迎え撃つ。そんな筋書きが現実になる日も近い。
(週刊FLASH 2019年8月13日号)