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甲子園名監督が語る「老害」と呼ばれない「現代っ子」操縦術

スポーツ 投稿日:2019.08.14 06:00FLASH編集部

甲子園名監督が語る「老害」と呼ばれない「現代っ子」操縦術

イメージ(写真・AC)

 

 今大会で101回めを迎え、新たな歴史を刻む夏の甲子園。令和の時代を迎え、高校野球はどこへ向かうのか? いまどきの高校生との接し方は? 甲子園優勝5回の横浜・渡辺元智前監督と、優勝3回の智辯和歌山・高嶋仁前監督が語り尽くす。

 

 

−−まずは、お互いの印象をお聞かせください。

 

高嶋「横浜も最初から強かったわけじゃない。渡辺さんは、やんちゃな子を預かり、監督になってから教員免許を取りに行ったりしながら、イチからチームを作った。苦労してますよね。

 

 それが采配にも出ている気がします。試合の中で出しゃばらないし、確実に勝つ野球をしますよね」

 

渡辺「よく見てますね(笑)。高嶋さんは昨年まで監督をされてましたけど、執念とか根性とか、今失われている昔のフレーズが残っている数少ない指導者だったと思います。

 

(参加校の少ない)和歌山だから、甲子園に数多く出られると言う人がいますけど、そうじゃない。監督の器が大きくなかったらできません」

 

−−監督に就任されたのは、渡辺さんが1968年、高嶋さんが1972年。当時はスパルタで、鉄拳制裁が当たり前の時代。2人とも厳しい指導で有名です。

 

高嶋「厳しく怒ったときは、その子が自宅に帰る前に車で先に行って、親に『今日はこういう指導をしました』とはっきり言うんです。『それをアカンと思うなら、どうぞ学校に言ってください。いつでもクビになります』と。

 

 そう言われたら親は、『うちの子が言うこと聞かんからや。もっと指導してくれ』となる。選手は親から聞いて『監督は来てくれたんや。この監督は信用できる』となるんです」

 

渡辺「よく似てますよ。当時の横浜はやんちゃな子の集まりでしたから、厳しく指導しました。そんなときは、どんな遠い所でもまず家に行きましたよ。親には『この子が悪いから叱るんだ』と言います。

 

 ただ同時に、『期待してるから、よくしてやろうと思うから叱るんだ』と言うと理解してくれる。昔は “愛のムチ” があった。でもそれは、信念があるからできるんです」

 

−−時代が変わり、指導法も変化していきます。どのような工夫をされましたか?

 

渡辺「ショートメールはしょっちゅう打ってますよ。威厳を出して、近寄り難い雰囲気を与えていたので、選手は胸の内を明かさない。ところが、メールを打つと返ってくるんです。

 

 典型的な例が涌井(秀章、現ロッテ)ですよ。2年の秋、横浜隼人に負けて、あまりにもふがいないので『お前なんかやめろ』と言ったら、もう口をきかない(笑)。

 

 これではいかんと思って、『松坂(大輔、現中日)の後のエースになってもらいたい。お前しかいない』と送ったら、すぐに返ってきた。こんなに早くかというぐらい(笑)。次の日に会ったら、『夏に向かって頑張ります』と」

 

高嶋「昔と違い、今の子は怒られ慣れていないですよね。頭ごなしに言ったらふて腐れる。こちらも、そういうつもりで接していかないといけません。

 

 たとえば、何か問題があったとき、呼んで話をしますよね。そのとき、選手に全部言わせるんです。途中で『それは違うやろ』とか口を挟むと、絶対本音を言わなくなる。聞くだけ聞いて、その日は終わるんです。

 

 で、次の日にまた呼んで、『俺もひと晩考えたんやけど、こう思うんやけどな』という言い方をする。そうすると、選手は「監督は考えてくれたんや」となるんです。

 

 言いたいことは言わせる。ワンクッション置く。これは心がけてましたね。こちらの気持ちをそのまま出してしまったら、選手はやっぱりついてこないです」

 

渡辺「信頼関係を築かない限り、いくらアドバイスをしても聞きません。うわべだけの愛情では、彼らは心を開かない。絆があって、初めて愛情が生きてくるんですよね」

 

高嶋「『この子には甘い言葉、この子は怒ったほうがいい』というのは、人によって違います。ふだんから観察して、性格を把握して考えて言う。アメとムチをどう使うか。それは、試合中とは違う監督の手腕。これは年の功でしょうね」

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