「ひなこちゃんは、小さいころからリーダーシップがあって、運動神経も抜群。ドッジボールをやれば、男子も捕れない球を投げるし、クラスで腕相撲をやっても、誰も勝てませんでした」(幼稚園から中学校まで一緒だった佐藤奈穂さん)
渋野日向子(20)の快進撃が止まらない。全英女子制覇が、マグレではなかったことを証明するように、先の「デサントレディース東海クラシック」では、8打差を大逆転して見事優勝。2019年シーズン、国内ツアーで、早くも3勝めを飾った。
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そんな渋野がゴルフを始めるきっかけを作ったのは、親友・奈穂さんのひと言だった。
「父がゴルフ練習場『パルグリーンGC』の支配人をしていて、小学2年の夏休みに『体験会に誰か誘ってきて』と。それで、ひなこちゃに声をかけたんです。ゴルフは初めてだったのに、スパ~ンと打つのを見て、まわりの大人は『凄い!』と驚いてました。
当時は遊び感覚で誘っただけなんですけど、こんなことになってびっくりしてます(笑)。全英で優勝したとき、『おめでとう』とLINEしたら、『ありがとう』にびっくりマークがいっぱいついたのが返ってきました」
奈穂さんの父・佐藤純さんも、その才能を絶賛する。
「4、5年生くらいになったら、大人の男性並みの飛距離が出ていました。ただ、ソフトボールもやっていたので、なんとかゴルフにも興味を持たせようと、プロの試合を観に連れていったり、一緒にラウンドしたりしましたね」
純さんは、「当時からスター性があった」と述懐する。
「そのころから、アイドルのような存在。中学時代、岡山県で開催されたステップアップツアーに出場したんですが、地元とはいえ、いちアマ選手に、凄い数のギャラリーがついたんです。ゴルフ場のスタッフも驚いていましたね」
中学に入ると、近所の「長船CC」でも腕を磨いた。
「メンバーになったのは、中学1年のときでした。『練成会』というのがあって、月に1、2回、大会を開く。女性は日向子だけでした。
当時、自分では『飛ばし屋』だと思っていたようですが、男性には負けてしまう。小技もそう。最初はよく、半べそをかいたような顔をしていましたよ。
一度だけ練成会の代表に、『自分の成績が悪かったからといって、不貞腐れた態度を取るな!』ときつく怒られたことがありました。家族会議も開かれ、両親から『ゴルフは自分の結果だから、他人に対して失礼な態度を取ってはいけない』と諭されたようで、それが今のスマイルに繫がっているのでしょう」(武上晴彦支配人)
プロテストに合格した2018年夏以降、まだ稼ぎがなかった渋野は、ゴルフ場でアルバイトを掛け持ちしていたという。武上支配人が続ける。
「うちのクラブの食堂を手伝いながら、近くのゴルフ場ではキャディのアルバイトをしていました。『お前はいっぺんにそんなに稼げるようなことにはならないんだから、下積みの仕事もちゃんと覚えておきなさい。一流プレーヤーになることは大変なんだから』と。
いまは、『とんでもないことを言ってしまった。帰ってきたら謝らなければいけないな』と、反省しているところです(笑)」
武上支配人は、渋野がプロになったとき、ある約束をしていた。それは、ジュニアのためのゴルフ教室の開催だった。だが、あっという間に渋野の環境は変わってしまった。
「1勝めを挙げたときも『やる!』と。2勝めでも『大丈夫です』と。そうしているうちに全英制覇でしょ。
『ギャラリーがたくさん来て、大変になるんじゃないか』と言っても、『やりたい。ジュニアに夢を与えることをやりたいんです』と譲らないんです。来年1月は無理でも、いつかやろうという話はしています」(同前)
立場は変わっても、志にブレはなし。「シブコ」が愛される所以だろう。
(週刊FLASH 2019年10月15日号)