「自宅は素晴らしい環境でした。目の前がすぐ海で、たまにイルカが来るそうです。夕食は、奥様の手料理をご馳走になりました。そのとき、テレビに走者イチローの本塁憤死の映像が流れたんですが、その模様を立ち上がって無邪気に奥様に説明するわけです。家では野球の話なんかしないと思っていましたから、意外でしたね」
ピート・ローズ氏(75)の安打記録を抜いた3日後の6月19 日、マイアミのイチロー宅に招かれた稲葉篤紀氏(43)は、こう振り返る。
3時間ほどの宴は、驚きの連続だった。夕刻に始まった祝いの席ではワインを空け、大いに盛り上がったが……。
「夜9時過ぎでしたかね、いきなり、『稲葉さん、ちょっと失礼してトレーニングしてきます』ですからね(笑)。隣の部屋に数台のトレーニングマシンがあって、1時間半ぐらい黙々と。もう四六時中、野球のことを考えている」
メジャー3000本安打へのカウントダウンが始まり、日米のタイトルホルダーとして知られるイチロー(42)。そんな彼に2年連続で、単独インタビューをおこなっているのが、『報道ステーション』(テレビ朝日系)でスポーツキャスターを務める稲葉氏だ。
イチローは同番組内で、「稲葉さんは徳が高いから、受けないと失礼にあたる(笑)」と語っていたが、今回、稲葉氏に“素顔のイチロー”を存分に語ってもらった。
「彼はいいか悪いかをはっきり言う。そこに魅力を感じるし、共感が持てます。なにより、緊張感が違いますね」
先輩である稲葉氏に対しても、はっきり苦言を呈するのだ。選手から取材する側となった稲葉氏が、「選手の気持ちもわかるから、これは聞いてはいけないのではと悩むときがある」と言うと、「ダメじゃないですか。聞き手としては致命傷ですね」と即答。
また、「メジャー16年で3000本安打はすごい。俺なんか20年で2000ちょっとだから」と言うと、「しょぼいですね」と、ばっさり切り返される。
「ダメ出しは初めて(笑)。でもね、上下関係はちゃんと把握している。挨拶はもちろん、メールでも、必ず最後には感謝の言葉が書かれていますから」
イチローが初めて稲葉氏を知ったのは中3で、稲葉氏が中京高1年のとき。
「バッティングセンターでお見かけしたんですけど、そのとき周囲は、稲葉さんを『プロに確実に行く人』と評価していた。で、打ってる姿を見てたら、失礼ですけど、『あっ、俺もプロに行ける』と思った」と。
気になる今後だが、イチローは長く球界で活躍した門田博光氏を引き合いに出し、こんな発言を。1989年、門田氏は本塁打を放った後、ハイタッチした瞬間に肩を脱臼。このとき41歳。イチローは、「門田さん老けすぎ。でも、そう考えたら(現在42歳の自分は)くそじじいじゃん」と。
だが、稲葉氏はイチローに衰えは感じないという。16日(日本時間)からは、いよいよ後半戦がスタート。イチローの記録達成への関心は高まる。
(週刊FLASH 2016年7月26日)