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コロナの対応が世界の手本に「Jリーグ」チェアマンの英断

スポーツ 投稿日:2020.04.02 06:00FLASH編集部

コロナの対応が世界の手本に「Jリーグ」チェアマンの英断

 

 新型コロナの猛威で東京五輪をはじめ、日本のスポーツ界は、今後の展望が見通せない状況にある。だが、この異常事態を「予知」して先手を打ち続け、世界中のサッカー関係者から注目されているのが「Jリーグ」だ。

 

 今回、チェアマン・村井満氏(60)が、その背景を明かしてくれた。

 

 

「1月中旬、武漢で騒ぎになってきたとき、『これは日本にも来る』と、瞬間的に反応したんです。当時は2月8日の『富士ゼロックス スーパーカップ』の準備中で、当日配布用にマスク5万枚を手配しました。何か起きて対処するときのスピードには、気を遣っています」

 

 2月21日から始まったJリーグ開幕節では、各クラブが除菌アルコールを設置するなど、積極的な対策をおこなった。また、2月25日にJリーグが中断を決定した際も、前日に政府が使った「瀬戸際」という表現の重さを感じ取り、すぐに提案した。

 

 こうした即断ができるのは、独自の思考サイクルが、Jリーグ組織内に根づいているからだという。

 

「ビジネスで使われる概念『PDCAサイクル』(P=計画、D=実行、C=評価、A=改善)に、M=ミスを追加した『PD “M” CA』で、Jリーグを運営しています。ミスが起こるという前提がサイクルの中心なんです。

 

 ものすごいスピード感で物事を動かすとき、組織は “失敗すること” をいちばん躊躇するんです。でも、脚でボールを扱うサッカーは、本質的にミスが連発してなかなか点が入らないスポーツ。だからこそ、『Jリーグで働く人間がミスを恐れていてどうする』と、周囲に意識づけています。

 

 もうひとつは、組織内でよく『天日干し』と表現するのですが、情報というものは隠せば隠すほど、翌日の報道で書かれてしまう(笑)。だから、『魚と組織は天日にさらすと日持ちがよくなる』という意味をこめ、情報をオープンにしていこうと。

 

 今回もミスを恐れず、つねに情報を開示してきたことが、先手を打てた大きな要因だったと思います」

 

 過去に厳しい裁定を下した際の経験も、影響している。

 

「2014年に、浦和レッズサポーターによる『人種差別横断幕問題』が起きました。当時チェアマンに就任したばかりの私は、初の無観客での試合開催を裁定したんです。

 

 トップの人間は下に、『もっと調べろ』とか、もっともらしいことを言って、いくらでも決断を引き延ばせる。でも、あのときは、『こう思う』と等身大の自分をすぐに表明しなければいけないと感じたんです。

 

 何か問題が起きても本気で取り組んでいれば、自分の “思い” を表明できるはずだし、そういう姿勢が “決断” のスピードアップに繋がると思います」

 

 迅速なJリーグ中断とリーグ再開への道筋を示した、今回の「英断」に称賛の声は多い。元日本代表の水沼貴史氏(59)も、そのひとりだ。

 

「最終的なJリーグに対する評価は再開後になりますが、早い時期にコロナ感染の恐怖にさらされた日本のJリーグが『どういうプロセスをたどったか』という記録は、大袈裟かもしれませんが、他国にとっては “ガイドブック” のようなもの。海外が注目しているのは、間違いありません」

 

 3月30日にヴィッセル神戸・酒井高徳選手の感染が発表されたが、個々の選手にもケアをしている。

 

「うがい、手洗いはもちろん、毎朝の検温を義務づけていて、クラウド上で選手全員の体温がひと目でわかるようになっています。私からも、1400人の選手に徹底を呼びかけました。

 

 また、体温37.5度が2日続いたら自宅待機。4日連続なら検査を受ける。さらに陽性、陰性の場合……と、細かく手順を定めています」(村井氏)

 

 3月25日には、「J3が4月25日、J2が5月2日、J1が5月9日の再開を目指す」と発表していた。

 

「再開には、各スタジアム用に、およそサーモセンサー450台、マスク7万枚、消毒液300リットルが必要なんです。それを確保する必要日数から逆算したのが、この日程です。

 

 大規模なクラブは、感染対策に十分なリハーサルも必要なので、開催規模が小さいJ3から開幕して、J2、J1とその経験を受け渡していきます」(同前)

 

 まだ日本にも、世界が敬うリーダーシップの手本はいるのだ。

 


(週刊FLASH 2020年4月14日号)

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