『サンデーモーニング』(TBS系)のご意見番として「喝!」を連発し、辛口コメントはたちまち炎上。御年79歳の張本勲は、通算最多の3085安打504本塁打319盗塁を達成した、名選手だった。
現役時代の逸話は、記録だけでなく、記憶にも残るものが多い。当時を知る、スポーツ紙記者が語った。
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「長嶋茂雄さんの監督就任1年めは、まさかの最下位。一番の原因は、『ONのN(長嶋)』を埋める選手が、いなかったことに尽きました。相手チーム首脳陣は、『王(貞治)さえ封じ込めれば勝てる』と考え、徹底的に “王封じ対策” に集中。それが、功を奏したわけです。
さらに王さんが足の怪我で苦しんだりと、巨人にとって悪いことが重なったシーズンが終わると、長嶋監督は『張本を獲得する以外、来季優勝できる道はない』と考えた。王さんの気持ちを奮い立たせ、尻を叩ける “ライバル選手” の必要性を感じ、『それは張本しかいない』と白羽の矢をたてたんです」
ところが、事は順調には運ばなかった。
「当時の読売トップ(務台光雄さん)は、張本さんの “交友関係” を気にしたんです。『もし張本を獲得したら、いっせいに週刊誌が書き立てるのではないか』と、獲得に消極的だった。
そこで、自社の社会部記者をつかって、張本さんの交友関係を調査した結果、『張本がよほどの馬鹿をしない限り、何とか対処できる』と判断し、獲得した経緯があります」
その陰には、長嶋氏の尽力もあった。
「長嶋監督は、こう言っていました。
『巨人が優勝するには、張本を入れるしかないんだ。そうすれば、間違いなくワンちゃんはよみがえる。そのために俺は、務台さんのところへ3度行って、土下座して頼んだ』
そんな長嶋監督に、張本さんは頭が上がらないのは言うまでもありません。巨人に入団してから数年間は、張本さんも頑張りました。ですが徐々に、生活面などでチャランポランな態度が出始める。
それで、『まわりの選手にいい影響を与えない。張本がいるとマイナスだ』と見なされてトレードに出されてしまったんです」
ちなみに、「生活のほうも豪快」とはいえなかったようだ。
「当時の巨人のチームメイトたちは、張本さんのドケチぶりに、こう嘆いていました。
『張本さん、いつも現金100万円ぐらい財布に入れて持ち歩いているよ。だから財布がパンパンに膨らんでいる。こっちも意地汚いわけじゃないけど、『たまには食事をおごってくれるかな』と期待する。でも、一度も誘われない。
遠征先でホテルに滞在するたび、ホテル内の自販機でビールを買って部屋でひとり飲みしたり、球団から供される夜食を人一倍食べる』
私は、その話に驚きませんでした。私も、『食事やお酒をおごった』という話を一度も聞いたことがありません」