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野村克也“ヤジ将軍”宣言「ボンボン監督の致命的欠陥は口にあり」
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2016.07.21 14:00 最終更新日:2016.07.21 14:00
6月20日、ソフトバンクの2年連続6度めの最高勝率で幕を閉じた交流戦。今年もパが60勝47敗1分けとセを圧倒した。過去12年間でパの勝ち越しは11度で、優勝回数も10回。なぜここまで実力差が開くのか。
「パが導入しているDH制が大きいよ。DH制だから投手は打席に立たず、ほとんど10人で野球をやるわけだ。セ本拠地の場合は、投手に代打を送ったりと、使う選手も多くなるから監督の仕事は多い。
ところが、セにはそれをこなせる力量を持つ監督がいないし、DHの起用法に迷いがみえる。打ち合いならパに分があるってことだよ。もっとも、野球は3の倍数で成り立っている競技。
9人で試合をし、1試合は9イニング。ボールは3つまでOK、アウトや三振もそう。その意味で、10人で野球をするDH制は邪道だし、大反対」
話はどうしても監督論に発展する。
「セの監督6人中、5人が外野手出身。彼らは細事、小事に目が届かない。阪神の金本知憲は、『投手のことはわからないからコーチにまかせる』と、分担制を取っているけど、自分をようわかっとるよ(笑)。
要は、ヘッド格に野球をわかっている捕手、内野手出身者を起用すればいいわけだ」
当初の巨人の貧打は予想外だった。
「天才打者ばかり集めた結果。彼らは、考えずに本能だけでやっている。そういった打者ほど料理しやすい。打撃とは頭脳の勝負、一瞬の判断だから。
俺は、日本一のヤマ張りだったと自負している。ただし、頭を使ってのこと。ヤマ勘や根拠のないヤマ張りはダメなんだよ。何も考えずに成績を残せるのが真の天才。長嶋茂雄がそうだった。
投手では、菅野智之が孤軍奮闘しとる。いい投手であることは間違いない。投手というのはツーボール、スリーワンと、カウントが投手不利になったときこそ実力が証明される。そういったカウントでどんな球を投げるか。それを見れば、その投手の実力がわかる。
ただ、菅野は速球の威力を考えると、いい投手だけど、怖さはないね。
もうひとつ気になるのが、高橋由伸監督。記者に見出しになるようなことを言わないし、選手についてもほとんど話さないという。慶應出身のボンボン監督らしいわ。
俺は昔から監督は広報も兼ねていると言ってきた。見出しになるようなことを話したし、選手の評論も語った。当然、新聞に載るわけだから、選手も監督の好き嫌いがわかる。新聞を使って刺激を与えるわけだ。
選手は、常に監督の顔色を窺っている。巨人の選手は、監督が何を考えているのか、どんな野球を目指しているのかわからないだろうな。リーダーたるもの、思ってることを口に出さないと、方向性が見えてこない。
褒める、叱るは愛情表現。ただし、怒るは感情論。まあ、彼はしゃべらないんじゃなくて、しゃべれないんだろうけどね」
その点、金本監督は「記者をうまく利用している」と認めつつも、阪神自体は「絶対強くならない」と断言する。
「阪神をダメにしているのは担当記者の存在。彼らは毎日1面で、阪神のネタを書かなければいけない。コメント欲しさに、選手の悪口は書けない。で、勝てば選手のおかげ、負ければ監督のせいとなる。結局、選手が甘やかされる。
阪神は大相撲同様、『タニマチ球団』なんだよ。一軍半レベルの選手でも夜の街でちやほやされる。遠征に行っても、夜ホテルにいるのは俺とマネージャーくらい。阪神の監督をやったのは、野球人生で最大の失敗だった(笑)。
当時、今岡誠という選手がいた。俺が退任後に首位打者、打点王を獲ったくらいだから打撃は素晴らしかった。
ところが、走塁や守備にはまったく興味を示さない。そのことを記者に話したわけ。するとその後、明らかにふてくされた態度を取りはじめた。それで、2度ほど監督室に呼んで、『思っていることを言ってみろ』と諭したけど、目も合わせない。仕方なく二軍に落とした。
しばらくしてから、岡田彰布監督に様子を聞くと、二軍でもまったくやる気を見せないと。周囲に『あいつの真似だけはするな』と言ったよ。その後、ロッテにトレードに出されたわけだけど、その今岡が今じゃ阪神の二軍作戦兼野手総合コーチなんだから」
最後に交流戦後の注目点を聞くも、長い沈黙の後、「なんだろう」と苦笑。
「見どころよりも苦言なんだけど、コリジョンルールはやめたほうがいい。捕手はホームベースを死守することが使命。命がけで守るわけだから。あれでは、ワクワクするようなクロスプレーが見られなくなってしまう。
むしろ、走者が捕手のブロック、タッチをかわす技術を磨いてほしいな。CSも同様。6年前にロッテがシーズン3位から勝ち上がって日本一になったけど、あれ、本当に日本一といえるのか。
おそらくCS導入は、観客収入など商売ありき。今のプロ野球界は、間違った方向に進んでいる。誰かが舵取りして直さないと。最近、球場に行きたくない。行くだけストレスが溜まる。俺はこれまでボヤいてきたけど、これからはヤジ将軍になったるわ!」
(週刊FLASH 2016年7月12日号)