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『ドラゴン桜』阿部寛の破天荒ぶりが『GTO』っぽいのに…スカッとせずモヤッとした理由

バラエティFLASH編集部
記事投稿日:2021.05.02 11:00 最終更新日:2021.07.16 16:19

『ドラゴン桜』阿部寛の破天荒ぶりが『GTO』っぽいのに…スカッとせずモヤッとした理由

 

ドラゴン桜』(TBS系)を観て一番驚いたことは、一視聴者としての自分の受け取り方だった。

 

 主人公は、2005年に放送されたシリーズ1作目と同じく元暴走族 の弁護士・桜木建二(阿部寛)。そんな彼が低偏差値高校の落ちこぼれ生徒たちを東大合格に導くという物語だ。

 

 

■元暴走族の主人公が破天荒な方法でヤンキー生徒をこらしめる

 

 先週日曜に放送された第1話では、受験の必勝メソッドなどはまだ一切出てきておらず、桜木が反抗的なヤンキー高校生を破天荒な方法で懲らしめる展開。

 

 まずはヤンキーのスマホを窓の外へ放り捨て、「殴るなら殴れよ」と言うヤンキーに壁ドンして圧をかける。次に鉄パイプ片手にヤンキーがたむろする店に乗り込むと、逃げるためにバイクで発進しようとするヤンキーの襟首を掴んで盛大にこけさせる。一歩間違えれば大ケガだ。

 

 極めつけは、逃げたヤンキーたちをバイクで追跡し、学校の校舎の中までそのバイクで追いかけまわす。校舎内の行き止まりまで追い詰めると、バイクで衝突ギリギリまで突っ込む。最終的には「お前ら、クソみてぇな人生だな」と暴言を吐いた末に、鉄パイプをヤンキーの頭めがけて振り下ろすのである。

 

 さすがに鉄パイプは寸止めさせたが、追い詰められたヤンキーは半泣きで失禁。

 

 筆者はこの第1話を見て、「え、生徒にそこまでやるのか?」と感じてしまったのだ。

 

 ……だが、こういったストーリーや表現は、過去のドラマを振り返ればさほど珍しくもない。

 

 元暴走族の主人公が教師を務めていた『GTO』(1998年/反町隆史主演/フジテレビ系)を彷彿させるが、要するにこの手の元ヤン主人公ドラマとしては王道の展開であり、逆に言えばありきたりな展開でもある。

 

■大丈夫なのか? その展開、“悪い” わけではないが “古い”

 

 さて、ここからが本題。

 

 王道であり、ありきたりでもあるストーリーだったにもかかわらず、筆者は違和感を抱きまくったのだ。もう少し自分の感情を掘り下げると、「コンプライアンス的に大丈夫なのか?」という気持ちと、「ここまでやるとリアリティがないよな」という気持ちが入り乱れていた。

 

 そして、そう感じた自分自身に驚いた。

 

 よくよく考えてみれば『GTO』が放送されていた1998年でも、主人公の乱暴すぎる振る舞いは法的にNGだったろうし、リアリティもなかったはず。しかし、当時は今回の『ドラゴン桜』に感じたような疑問は抱かなかったし、すんなりエンタメ作品として受け入れられていた。

 

 この違いは何なのか?

 

 一言で片づけるなら「時代が変わった」ということなのだろう。

 

 特にここ10年ほどで、ドラマだけでなくバラエティなどでも声高にコンプラ、コンプラと叫ばれるようになり、テレビでの表現方法の自主規制が急速に進んでいったように思う。

 

 そして、そういった制作側の自主規制が、我々視聴者にもいつの間にか刷り込まれており、20年ほど前なら純粋にエンタメ表現として楽しめたことが、今は違和感を抱いてしまうのだろう。

 

 時代の移り変わりとともに、知らぬ間に一視聴者である自分の価値観も変わっていたことに驚いた……ということである。

 

 いずれにしても、今の視聴者はああいった暴力的な問題解決方法を見ても、スカッとはせずにモヤッとしてしまうんじゃないだろうか。少なくても筆者はモヤッとした。

 

 あくまでエンタメ作品なのだから、『ドラゴン桜』のこういった演出が “悪い” とは思わない。だが、正直なところ “古い” とは思った。

 

■価値観が多様化する現代で東大合格という “正解” の押し付け

 

“古い”ということで言えば、そもそも「つべこべ言わずに東大に行け!」というテーマが時代に即してないようにも感じる。

 

 桜木は全校生徒の前でこう熱弁していた。

 

「そんなお前らがこのままなんとなく世の中に出てみろ。あっという間に薄汚い社会の渦に飲み込まれ、知らず知らずに搾取され、騙され、カモにされ、コキ使われる。一生社会の奴隷となって、もがき続け死んでいくんだ。そうならないために、一番手っ取り早い方法がある。……東大に入ることだ!」

 

 でも、東大卒の人が薄汚い社会の渦に飲み込まれることもあるだろうし、騙されて搾取されることもあるだろうし、奴隷のように働き続けることもあるだろう。東大に入ることが、それらを絶対的に回避できる方法ではないことを、今の視聴者は知っている。

 

 ――多様性が重んじられる現代だ。

 

 多様性とは、人それぞれ “正解” が違うということである。

 

 東大を目指すことを否定するつもりはないし、それがその人にとって “正解” であればなんの問題もない。

 

 しかし、東大に入ることが人生の救済方法として、ほぼ無条件で “是” とするような考え方は、今の時代どうなんだろう?

 

 東大合格は “正解” ではあるのだろうが、いくつもある “正解” のうちの一つにすぎないはず。なのに、多様化する子供たちをその “正解” にはめ込もうとしているように見えた。

 

 この作品のテーマそのものが、今の価値観に合っていないように感じるのである。

 

 先週日曜に放送された第1話は視聴率14.8%(ビデオリサーチ調べ/平均世帯視聴率/関東地区)と、4月スタートドラマのトップだったという。注目度が高いことは間違いない。

 

 第2話は今夜21時放送だ。

 

●堺屋大地

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『週刊女性PRIME』『日刊SPA!』などに寄稿中

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