【ドラクエ30周年】井上聡と川島明が「ドラクエは卒業アルバム！」

「ドラゴンクエスト」が誕生したのは1986年５月。ダイアナ妃が来日し、ハレー彗星が76年ぶりに地球に接近するなど「大フィーバー」が続いた年だった。あれから30年、ドラクエ熱は大人になった今も冷めることはない。

　そこで、人生で大切なことはすべてドラクエに教わったという麒麟・川島明と次長課長・井上聡の対談だ！

次長課長・井上聡（以下井上）　30周年ですか。僕はⅡから。戦闘の緊張感が今と比較にならなかったな。スライム倒して調子にのって一歩踏み込むと魔法使いからギラ！　ちょっと繁華街に出たらヤンキーに絡まれたみたいな。仲間ができたのも驚いた。

麒麟・川島明（以下川島）　サマルトリアの王子がね……。ずっとすれ違い続けて、やっと会えたってときに、「いやー探しましたよ」って言われて、殺意を覚えました。仲間になっても弱いし、なんなんだろうと。

井上　よろいムカデの集団とかにいきなり襲われたときに、王子を攻撃してくれるとホッとしたけどな。防具の一種というか。

川島　「サマルトリアのよろい」（笑）。レベル上限に近づくと能力がグングン上がる晩成型だけど、その前に皆、クリアしてた。

井上　Ⅱはいろいろ不親切だった。船を入手しても何していいかわからず、しびれくらげとかマーマンと、ずっと戦い続けたし。

川島　娯楽も地味な福引きしかなかった。 井上　でも苦労して、長い洞窟を抜けると雪景色が広がってたのは感動した。今思うと、Ⅱがいちばん好き。

　次作のⅢは社会現象を巻き起こした。発売日は平日ながら、販売店の前に徹夜の行列。学校を無断欠席した児童の補導や、ソフトの盗難・恐喝が多発した。

井上　発売日に並びに行ったら百何番めだった。そしたら、大学生のお兄ちゃんが前のほうに入れてくれて。嬉しくて、ずっと持ち歩いてたら、２日後になくした。

川島　えー！

井上　絶望だよ。もうどこも品切れ。親の知り合いも使って探してもらったら、「抱き合わせならある」って。３本セットで買ったよ。カセットに名前を書くのがどうしてもイヤで。書いとけばよかった。

川島　持ち歩いてる子いましたね。今日は外で遊ぶっていうのに持ってくる。ベンチで説明書を読んでたり。そんなんだからカツアゲされたり、セーブデータが消えたり。

井上　セーブデータはバンバン消えたな。ぼくのカセットなんか、アクエリアスをこぼしまくってネチャネチャになってたもん。

川島　全滅したとき怒りにまかせて電源を切ったら、やっぱり制裁がくるもんだなと。「別れ際の大切さ」を教えてくれました。

井上　子供のころってガムシャラ。プレイも強い剣握ってたら最強みたいな。盾なんかそっちのけで、かわのたてが長い長い。

川島　スカラとか使った記憶ない。大人になってから身を守ることの重要性がわかる。

　Ⅲの最後で主人公の正体が伝説の勇者ロトであったという種明かしがあり、「ロト３部作」が終了。４～６の「天空３部作」へ。

川島　作品としてはⅣ、Ⅴが好き。ラスボスのピサロは恋人が人間に殺されて、ダークサイドに落ちたっていう事情がある。ゲームとしてのレベルも上がったと思います。

井上　Ⅳもね、深夜から並んだんだけど、ぼく２番めだった。

川島　だいぶレベル上げましたね。

井上　同級生も並んでて、相方の河本が11番め。でも入荷が 10本しかなかった。

川島　河本さん、買えなかったんですか。

井上　買えないと思いきや、あいつ公衆電話に走って通報したんや。「未成年が夜更かしして遊んでる」って。それで同級生が代表して呼ばれてる間に販売が始まって、あいつ、買えたんだよ。

川島　ダークサイドに落ちた！　最低や。

井上　しかもあいつファミコン持ってなくて。カセット眺めて想像しかしてないって。

川島　経済事情とか教育方針とか、ほかの家庭を知るきっかけになりましたね。

井上　光岡ってやつがいて、みんながⅢやってるときにⅠやってた。しかも、モニター用のテレビで白黒やねん。「スライムとスライムベスの区別がつかん」って。

川島　ぼくは木下くん家でやってたんですけど、玄関がむっちゃウンコ臭かったんです。下駄箱に入ってる？ ってくらい。あのＢＧＭを聴いたら、その臭いも思い出します。

井上　ＢＧＭって、当時を思い出すな。

川島　あのとき、食べたチーズケーキがうまかったとか、あいつとケンカしたなとか。

井上　卒業アルバムみたいなもんやな。

いのうえさとし　40歳　1976年２月２日生まれ　岡山県 出身　お笑いコンビ「次長課長」のツッコミ担当。「モ ンハン」シリーズのヘビーユーザーとして有名だが、人気RPGはひと通りプレイしており、「お笑い界きっての ゲーム通」と称される

かわしまあきら　37歳　1979年２月３日生まれ　京都府 出身　お笑いコンビ「麒麟」のボケ担当。「人生を学んだ」 と公言するほどのドラクエ大好き芸人。ゲームやアニメなど、オタク文化全般に詳しい。先輩井上とゲームを通じた深い親交がある

（FLASHダイアモンド 2016年4月30日増刊号）