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「大安」「仏滅」を信じてはいけない明確すぎる理由がわかった

ライフFLASH編集部
記事投稿日:2016.09.22 06:00 最終更新日:2016.09.25 21:19

「大安」「仏滅」を信じてはいけない明確すぎる理由がわかった

「結婚式は絶対大安に」などと、今でも多くの人が気にする六曜。しかし、六曜はまったく科学的ではないと、最近『反オカルト論』(光文社新書)を上梓したばかりの高橋昌一郎氏が指摘する。

 以下、大学の研究室で「教授」と「助手」が日常的な雑談をしている設定で、その根拠を紹介しよう。

 

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助手 大分県佐伯市が、市制10周年を記念して、2016年元日から2025年大晦日までの10年分の日記を記入できる『佐伯市10年ダイアリー』を作製したそうです。A5判400ページの冊子5万冊で、経費は2500万円。

 

 2015年末に佐伯市の全世帯に配布する予定だったのに、「六曜」が掲載されていたため、取り止めになったそうです(『西日本新聞』2015年12月26日付)。これが全部廃棄処分になったら、あまりにもったいなくて……。

 

教授 暦に「大安」や「仏滅」などを規定する「六曜」に対して、行政は「科学的根拠に基づかない迷信や因習で、偏見や差別など人権問題につながる恐れがある」と指摘する立場だからね。

 その自治体当局が、公的刊行物に「六曜」を掲載すれば、騒動になるに決まっているのに、関係者は、印刷製本が終わるまで気が付かなかったのかな……。

 

助手 2005年、滋賀県大津市職員互助会が発行し、全職員に配布した『大津市職員手帳』にも「六曜」が掲載されていたため、約3800冊が回収されたそうです。

 

教授 そもそも「六曜」は、中国の「陰陽道」の「暦占い」が室町時代に伝わったものだが、一般の暦に記載されるようになったのは江戸時代でね。

 旧暦の1月1日は「先勝」、2月1日は「友引」、3月1日は「先負」のように予め順番が決まっていて、「先勝・友引・先負・仏滅・大安・赤口」の順にローテーションを繰り返し、月末でリセットされる。

 その動きがイレギュラーで「神秘的」な印象を与えるが、旧暦月の初日以外は、機械的に「六曜」を順に当てはめているにすぎない。

 

助手 「六曜」は、現代社会にも根強く残っていますよね。結婚式場は「大安」の日から埋まっていくみたいだし、父の葬儀のときには、「友引」などとんでもないと騒いだ親戚がいたため、「仏滅」の日にしました。

 

教授 カレンダーに「大安」や「仏滅」などが記載されていると、つい気にしてしまうのが人情かもしれない。だから、そのような迷信を掲載することを止めようと行政指導しているわけだよ。

 

●真珠湾攻撃は「大安」だから勝てるはず

 

教授 これは以前、立命館大学名誉教授の安斎育郎氏から聞いた笑い話だがね……。

 日本が真珠湾を攻撃した1941年12月8日は「大安」。だから、日本の勝利は最初から約束されていると信じた人がいたそうだ。

 

助手 でも「大安」の日は、アメリカにとっても「大安」じゃないですか?

 

教授 あははは、引っ掛かったね! 日本が奇襲した8日未明、ハワイは日付変更線の向こうだから、アメリカ時間では7日。そして、この日は「仏滅」だったというわけだよ。

 

助手 すごいコジツケ!

 

教授 「大本営発表」に浮かれた当時の日本では、そんな非合理なコジツケさえ謳われたということだ。

 短期決戦でアメリカに打撃を与えたかった日本軍は、続いて1942年6月5日、ミッドウェー島を攻撃した。当時の総司令部が「六曜」を気にかけて作戦日程を選んだのかどうかは知らないが、日本時間の5日は、勝負事に先んじれば勝つという「先勝」、アメリカ時間の4日は、厄日とされる「赤口」だった。

 ところが、現実のミッドウェー海戦では日本軍が大敗し、そこから日本の悲劇が始まった。

 

助手 どんな日だって、勝つ人がいれば、負ける人もいるでしょうし、幸運な人がいれば、不運な人もいます。ですから、「日」に「吉凶」があるという考え方自体、矛盾しているとしか思えないんですが……。

 

教授 まさに、その「矛盾」に翻弄される人々を嘆いたのが、親鸞だった。
「なんと悲しいことなのか、僧侶も世俗の人々も、良い時刻や吉日を選ぶことに固執し、天や地の神を崇めて、占いや祈り事ばかりを行っているとは……」と言った。

 

助手 カレンダーに「六曜」を掲載すべきでないという理由が、よくわかりました。

 

<著者プロフィール>
 高橋昌一郎(たかはししょういちろう)

 1959年大分県生まれ。國學院大學教授。専門は論理学・哲学。ウエスタンミシガン大学数学科および哲学科卒業後、ミシガン大学大学院哲学研究科修了。主要著書は『理性の限界』『知性の限界』『感性の限界』『ゲーデルの哲学』(以上、講談社現代新書)、『東大生の論理』(ちくま新書)、『小林秀雄の哲学』(朝日新書)、『哲学ディベート』(NHKブックス)、『ノイマン・ゲーデル・チューリング』(筑摩選書)、『科学哲学のすすめ』(丸善)など。超常現象やエセ科学を究明するJAPAN SKEPTICS副会長。

 

『反オカルト論』高橋昌一郎/著

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