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地震雲による「地震予知」不思議と当たる理由は単純だった
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2016.11.23 20:00 最終更新日:2016.11.23 20:00
4月16日に発生した熊本地震は、余震の回数が異常だった。4月16日の未明から5月19日までの約1カ月間に、体に感じる震度1以上の地震回数は1500回を超えた。単純に割ってみると、この間平均して1日に45回以上揺れたことになる。
余震が多かった新潟県中越地震(2004年発生)でも、余震が1000回を超えるのには約1年かかったが、こちらはわずか2週間で1000回を超えた。
熊本地震はいくつかの断層が刺激し合っているために、これまで経験したことのないような異常事態が続いている。
ロンドンやニューヨークなどは地震がほとんどない。だから各家庭では壁に高価な絵皿を飾ったり、棚を作って物を置いたり、壁をフルに活用している。
しかし、日本ではそういうわけにはいかない。地震の数が半端ではないからだ。では、いったいどれくらいの数の地震が発生しているのか?
日本地震学会によれば、日本およびその周辺の地震の数は、人間が感じない小さな地震まで含めると1年に10万個以上、1日平均300個以上の地震が発生しているという。
気象庁によれば、震度1以上の有感地震は年間2000個程度ということだ。平均すれば1日5個程度である。ちなみに昨年、全国で観測された有感地震は1841回だった。
熊本地震の発生前に、ネットの掲示板に地震雲の写真投稿や観測による予告がけっこう掲載された。飛行機雲を太くしたような一筋の帯状の雲は、地震雲のなかでも有名なものだ。
その雲をもし見たら「1週間以内に地震がある」と予告してみるといい。これが不思議と当たる。
地震雲による予知を創始したのは鍵田忠三郎(1922~1994)である。
彼は1948年、奈良市で異様な雲を見て大きな地震があると直感。奈良県知事に伝えたところ2日後に福井大地震(M7.1、死者3769人、全壊家屋36184戸)が発生した。
以後、本格的に地震雲の研究に取り組み、その成果か1978年伊豆大島近海地震(M7.0)など大地震を含め、それこそ数多くの地震の予知に成功した。
鍵田は奈良市長を長く務め、衆議院議員にもなったが、マスメディアにもたびたび登場し、市長時代は地震予知の「ナマズ市長」として有名だった。
しかし、地震雲は地震と雲の関係が科学的に解明されていないこと、地震雲の判断基準が示されていないこと、また、いつ、どこで、どれくらいの規模かを特定できないことなど、その非科学性が指摘されている。
そもそも地震の予知は発生の時、場所、規模の3要素を予測す
ることにある。「1週間後に地震がくる」のような曖昧な表現では予知とはいえない。
もっともだが、曖昧とはいえ地震雲の予知はよく当たる。なぜか?
昨年、震度3以上の地震の回数は193回におよんだ。平均すると2日に1回だ。地震雲に関係なく「4~5日以内に地震がある」と予告すれば誰でも当たる確率は高い。しかしこれは予知とはいえない。
予知にはそれなりの何かが必要だ。科学的な予知ができない現状では、神秘的な地震雲を予知のツールとしてとらえたくなるのも、わからなくはない。