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「洗脳に追い出し部屋…」ブラック企業の悲惨すぎる労働実態

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2013.07.18 07:00 最終更新日:2016.03.01 22:09

 昨年、弁護士や労働問題の専門家で創設された「ブラック企業大賞」。ブラック企業を表彰し、労働問題の啓発をするための賞だ。’12年度は、あの「ワタミ」が一般投票で選ぶ「市民賞」を受賞。’13年度の投票でも現在70%の得票率と圧倒的な“支持”を集めている。だが、飲食業界でワタミだけがブラック企業と名指しされているわけではない。今年のノミネート企業は、8企業中3企業が飲食業なのだ。

 

「就業時間は手書きで書くんです。1日の就業時間は10時間に収まるようにしないといけない。実際には休息時間を引いても、11~12時間は働いていますよ。だから、1日の労働時間のうち、1、2時間はサービス残業です。(就業時間を)10時間以上つけないのは暗黙の了解ですね。うちはまだマシなほうですが、お客さんが多い店は辛いでしょう」

 

 そう語るのは「餃子の王将」で働く20代の社員だ。今回のノミネート企業に、餃子の王将を経営する王将フードサービスが名を連ねている。男性の給与明細によると残業時間は月40時間台だが、本当の残業時間は月80時間以上に及ぶ。これは厚生労働省が通達した過労死ラインを上回る残業時間だ。実際に、半年もの間、月平均135時間以上の残業を強いられた社員がうつ病を発症し、会社を提訴している。さらに、特異なのはその過酷な新人合宿だ。

 

「起床から就寝まで、徹底してやられます。あいさつの声が小さいだけで、徹底的にしごかれる。今まで静かだった人も、人が変わったようになるんです。研修では『王将五訓』を暗唱させられる。4人一組で声を合わせなければならないんですが、合格したらしたで、喜んでいると『気を引き締めろ』と叱られる。まさに、洗脳ですよ」(同前)

 

 今回、ノミネートされた企業のなかで、特に悲惨なのはサン・チャレンジが経営する「ステーキのくいしんぼ」で起きた事例だ。

 

 渋谷センター街店の24歳の店長・和孝さん(名字は非公開)が、店舗が入るビルで自殺したのは’10年11月。

 

 渋谷労基署が売上報告書から算出した和孝さんの残業時間は、月162時間30分~227時間30分にも達していたという。亡くなった当日まで連続90日の勤務。さらに、休日にも呼び出して簡単な買い物を命じるなどの恒常的な上司の嫌がらせや、殴るなどの暴力があったことも明らかになった。

 

 和孝さんの両親は損害賠償請求の訴えを起こし現在係争中。会社側は、自殺の原因は和孝さんの個人的なことにあり、会社とは関係ないと反論している。

 

 教育業界で約5割のシェアを誇るベネッセコーポレーションも、深刻な労働問題を抱えていた。’09年、ベネッセは「人財部付」という部署を新設し、複数の社員を配属。だが、業務は単純作業と、自分を受け入れてくれる部署を探す「社内就職活動」のみ。

 

 これは実質的な「追い出し部屋」だとして、配属された女性社員が提訴。’12年には「実質的な退職勧告の場だった」として違法性が認められている。ベネッセの広報部によると、すでに女性とは和解が成立しており、「人財部付」という部署も廃止されているという。

 

 また、今回のノミネートには東北大学の名前もあがった(「ブラック企業大賞」では学校法人や官公庁も対象)。東北大学は日本有数の国立大学。

 

 だが、’07年には薬学部の助手だった男性が指導教授のパワハラと過労を苦に自殺した。指導教授に命じられ、副作用のある抗がん剤の研究に長時間1人で従事していたという。

 

 残りの’13年度「ブラック企業大賞」ノミネート企業は以下の通り――’09年10月に女性社員が過労死した「クロスカンパニー」。’10年12月、事務職の男性(23)が自殺し労災認定された「西濃運輸」。’04年3月、男性社員(30)が過労死した「東急ハンズ」。

 

 ブラック企業の経営者は肝に銘じてほしい。日本の将来を真剣に考えるなら、選挙に出るより、社会貢献に励むよりも、自分の会社の労働改善が先であると。

 

(週刊FLASH 2013年7月23・30号)

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