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「健康ビッグデータ」で「認知症」の予兆がわかった!
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2017.02.27 20:00 最終更新日:2017.02.27 20:00
日本一の短命県から脱却するため、青森県は「岩木健康増進プロジェクト」として、2005年から大規模な住民合同健康診断を実施している。5時間以上かけて600項目を超える検査をするのだが、今ではのべ2万人を超える膨大なデータが集まっている。この「健康ビッグデータ」は世界にも例がなく、大きな注目を集めている。
「健康ビッグデータ」からわかったことがいくつかある。そのひとつが認知機能の低下を示す予兆だ。
現在、認知症の症状が出た場合、記憶力や精神機能を元に戻す薬は存在しない。そのため、認知機能の低下になるべく早く気づき、すぐに予防を行うことだけが認知症の進行を食い止める手段なのだ。
「岩木健康増進プロジェクト」では、認知症を診断するMMSE(ミニメンタルステート検査)と、記憶を診断するWMS-R(ウエクスラー検査)という2つの検査を実施。その結果、2014年、MMSEのスコアが60歳を境に分布がばらつくことが明らかとなった。
そこで2015年、さらに精査したところ、認知機能の低下している人の特徴として、
・(敏捷性の測定で利用される)棒反応時間が長い
・脚筋肉量が少ない
・赤血球が少ない
などの傾向がわかったという。
「健康ビッグデータ」を解析している弘前大学COI研究推進機構の村下公一教授に話を聞いた。
「まだまだこれからの研究が必要ですが、短命になってしまう生活習慣を続けていると認知症にもなりやすいのではないかと疑われます」
青森県では、こうしたデータを活用して、地域や職場などで健康づくりのリーダーとなる「健幸リーダー」や「健やか隊員」を養成するプログラムを提供するなど、地域保健活動のマンパワーを拡大させる取り組みが始まっている。
「たしかに県内ではさまざまな取り組みが始まっています。しかし、寿命を伸ばすのは数年でどうにかなるものではありません。短命県の返上のためにも、研究を10年、20年と続けていく必要があります」(前述の村下教授)
弘前大学独自の「健康ビッグデータ」が評価され、2013年には、この研究が文部科学省の推進する「革新的イノベーション創出プログラム(COI)」に選出された。
その結果、GEヘルスケアやイオン、花王、ライオン、カゴメ、楽天といった多種多様な国内外を代表する大手企業が弘前大学COIとの共同研究に名乗りをあげた。次回は弘前大学COI産学連携の現状を紹介する。