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「本能寺の変」の動機は…東大教授の『麒麟がくる』結末予想

エンタメ・アイドル 投稿日:2020.09.13 11:00FLASH編集部

「本能寺の変」の動機は…東大教授の『麒麟がくる』結末予想

 

 新型コロナウイルスの影響で撮影が中断し、放送も一時休止していた大河ドラマ『麒麟がくる』が待望の再スタートした。物語後半のクライマックスは、なんといっても「本能寺の変」。そこで、東京大学史料編纂所の本郷和人教授に、「私が脚本家だったらこう書きます」という持論を語ってもらった。

 

 

 日本史の一級史料に接してきた本郷教授は、明智光秀の動機の諸説を挙げて分析する。

 

「黒幕説、野望説、怨恨説などいろいろありますが、歴史研究者からすると、どれも根拠は薄弱です。江戸時代に書かれたものも多く、(当時との)同時性がないものばかり。だから、あくまで『説』なんです。

 

 そのなかで、NHKは『非道阻止説』を採用すると思います。光秀は(織田)信長に、『平和な世の中』の実現を託していた。しかし農民を虐殺したり、朝廷には非礼を働く。『このままでは、信長は悪者になってしまう。この横暴をやめさせられるのは、私しかいない』と決意したという説です。

 

 とはいえ光秀も、比叡山の焼き討ちではみずから殺戮をしています。また、当時の朝廷は権威が失墜していたので、『朝廷を守るために立ち上がった』というのは少し無理がありますね。

 

 まあ、ドラマはフィクションですから、それはそれでアリだとは思いますが、研究論文として発表したら笑われてしまいます(笑)」

 

 では、本郷教授なら本能寺の変をどう描くのだろうか。

 

「光秀は、信長にさんざんこき使われてきたので『信長を殺せば、私もゆっくり眠れるんじゃないか』と考えて決起したんじゃないでしょうか(笑)。それはともかく、学会で認められそうなのは『四国説(※)』です。私も、この説を有力視していました。

 

 ところが最近、キリシタン史が専門の歴史学者・慶應義塾大学の浅見雅一先生が、日本では本能寺の変に関する新しい史料は見つからないといわれていたなか、腰を抜かすような史料を発見したんです」

 

ルイス・フロイスのポルトガル語の史料を浅見教授は解読した(写真・藤牧徹/アフロ)

 

 それは、ポルトガル語で書かれたイエズス会の史料を読み込んでいたときに見つかった。

 

「信長の死後、宣教師のルイス・フロイスが書き残していました。日本史の史料もそうですが、古い文字や文体で書かれているので解読が難しい。浅見先生が発見した史料も、そういった文字で書かれてあったと思います。

 

 そこには、『光秀は長男の十五郎(光慶)を守るために信長を討った』という内容の記述があったのです。十五郎は、光秀が年を取ってから授かった子供です。だからかわいがった。

 

 ここからは私の推測ですが、家康はかつて、信長の命を受けて長男の信康を切腹させています。信康は武田家に通じていたともいわれていますが、信長の長男の信忠とは比べるまでもなく優秀でした。それで、信長は信康を葬らせた。

 

 それを知っている光秀は、『十五郎も信長に殺されるのではないか』と心配した可能性が大きいと、私は思います。この史料が見つかったことで、今までの『説』がすべてチャラになった気さえします。

 

 ちなみに十五郎の身の上を心配した光秀は、坂本城でイエズス会による洗礼を十五郎に受けさせています。そして本能寺の変の直後、光秀は坂本城に向かいました」

 

 十五郎の「その後」は明確ではない。「自害した」「僧になった」などといわれている。『麒麟がくる』が、この新説で本能寺の変を描いたら、センセーションを巻き起こすことは間違いない!?

 


ほんごうかずと
1960年生まれ 東京大学史料編纂所教授。専門は日本中世史。今月『疫病の日本史』(井沢元彦氏との共著、宝島社新書)が発売

 

(※)四国説
四国統一を目指す長宗我部元親の正室は、光秀の重臣・斎藤利三の義理の妹。信長は光秀を仲介役にして「四国を収めたあかつきには、領地はすべてあなたのもの」と元親に接近。しかし信長は、この方針を撤回するだけでなく、四国征伐も企てた。面目を潰された光秀が、本能寺の変を起こしたという説

 

(週刊FLASH 2020年9月15日号)

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