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社会学者が解説『東大王』ブームは林修先生のおかげ
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2020.10.12 11:00 最終更新日:2020.10.12 11:00
『東大王』(TBS系)に代表されるように、「クイズの得意な東大生」をテレビで見ない日はない。
東大大学院で学び、社会学者(テレビ論)としてメディアと文化について研究する太田省一氏に話を聞いた。
「かつては、東大生といえば『学校の勉強しかできない頭のかたい人』という印象が強かったと思います。しかし『東大王』の伊沢拓司や、『今夜はナゾトレ』(フジテレビ系)の松丸亮吾に代表されるように、最近はすこし印象の違う“東大生タレント”の人気が出てきています。これほど視聴者にとって東大生を身近に感じられるようになったことは、いままでないのではないでしょうか」
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身近に感じられるとはどういうことだろう。
「彼らの人間味が感じられる部分にスポットライトが当たり出したんです。これは林修の影響が大きいと思います。東大出身でもある彼は2010年代からテレビに出始めましたが、予備校の人気講師として勉強方法を教えるだけでなく、ギャンブル好きとか人間的な部分をオープンにするスタンスを取りました。また、クイズ番組でも難しい問題に答えられず悔しがる姿も、視聴者に身近な印象を与えたと思います。
そうすることで東大生は “ただ頭がいい” から、“人間味もコミュ力もある” という印象に変わっていきました。以前とのギャップによる魅力が、好感につながったわけです。とにかく彼のブレークが、現在活躍する東大生タレントたちに道を開いたことは間違いないでしょう」
同時に、クイズ番組で問われる内容が、些末な知識から、頭の回転のよさや発想力に変わった。そこにはクイズに強い芸能人の活躍があった。
「ロザン宇治原や、メイプル超合金のカズレーザーなどはいろんなクイズ番組に引っ張りだこですよね。彼らはただ知識を披露するだけではなく、芸人のスキルを活かして、クイズ自体をエンタメ化したんです。林先生も自分の考えた問題を出したりして、クイズはただ答えるだけではなく、いろんな視点から楽しめるエンタメなんだと認知されるようになりました」
伊沢や松丸は、クイズのエンタメ化を推し進めた。
「伊沢は『QuizKnock』というクイズを題材とするWEBメディアを立ち上げ、世の中のことをクイズで見るとおもしろいということを発信し続けています。オリジナルのクイズを作るということをさらにエンタメ化したのが松丸じゃないでしょうか」
先日は『アイ・アム・冒険少年』(TBS系)に伊沢が出演した。
「無人島で船を自作して脱出するというコンセプトの番組でした。『ダ・ヴィンチの考えた設計だ』とか言って、かなり理屈っぽく解説して船出するんですけど、結局失敗しちゃうんですよ。知識をベースにしているから、成功しても失敗してもおもしろいですよね。東大生タレントはここまで進化したかと驚いた瞬間でした。ああいった番組を見ると、東大生でも失敗はするし、人間味が垣間見れますよね。ある意味、彼も “東大生” をフリにしてうまく活用しているんです」
以前にももちろん “東大生タレント” はいた。
「分野は違いますが、小沢健二も東大生だったんですよね。これまで注目される東大生っていうのは、東大生なのに美人とか、スポーツができるっていう意外性がフックになることが多かったんです。でも『東大王』ってクイズに強い東大生を見る番組じゃないですか。これは、以前の東大生の芸能人では考えられませんでした。本来の『東大生は頭がいい』という部分を軸にして、やっと認められたんです」
おおたしょういち
1960年生まれ 富山県出身 社会学者・文筆家。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビと戦後日本の関係が研究および著述のメインテーマ。それを踏まえ、現在はテレビ番組の歴史、お笑い、アイドル、ネット動画などメディアと文化に関わる諸事象について執筆活動を続けている。