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『世界ネコ歩き』岩合光昭監督が語る「ネコの社会論」室内飼いは不幸?
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2021.01.10 11:00 最終更新日:2021.01.10 11:00
ネコとネコ、ネコと人、ネコと街。まっすぐに生きるネコたちの目線で描く、人気ドキュメンタリー番組『岩合光昭の世界ネコ歩き』。2012年の放送開始以来、日本中のネコ好きはもちろん、ネコたちも(!?)テレビに釘づけになっている。
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そんな『ネコ歩き』の劇場版第2弾が、公開中だ。舞台は、ミャンマーのインレー湖と北海道の牧場。水と大地の上で繰り広げられる、ひたむきなネコたちの物語だ。半世紀以上、ライフワークとしてネコを撮り続けている岩合光昭監督(70)に、たっぷり語ってもらった。ネコの魅力とは? 撮影はどんなふうに?
――劇場版第2弾を作ることになった経緯は?
「2017年に公開した第1弾は、テレビで放送したものを再編集したものだったのですが、幸い多くの方から喜んでいただき、『今度は、まったく新しく撮ったものでやりたいな』と。
――ミャンマーと北海道、それぞれ家族の物語となっていますが。
「ネコたちの “社会生活” を撮りたかったんです。北海道では、複数の母ネコが協同保育をし、子ネコたちが自立していく姿を。ミャンマーではネコの夫婦が子育てをする姿を。
ご覧になっていただくと、わかるかと思うんですが、北海道では父ネコの存在が見えません。というのも、本来オスネコは夜に忍んできて、目的を達したらどこかへ行ってしまうもの。ネコ科で社会生活を営むのは、ライオンとイエネコだけなんです。
一方で、ミャンマーの一家は両親揃って子ネコたちの面倒を見ている。おもしろいなぁ、と思いましたね」
――北海道では、“マザコン” ネコのカーショが気になります。
「人間の感覚だと、そうなりますね(笑)。僕はいつも、『人とネコは違う生き物だ』ということを考えながら撮っているんですが、どうしても重ねてしまうこともあって。今回は、カーショでした。いいヤツなんですよ、彼は」
――撮影で苦労したことは?
「いちばん大変なのは、やっぱりネコだから(笑)。ネコが『今は撮られたくない』と思ったら、カメラを向けても無理ですね。逆に彼らがノッてるときには、驚くほど撮れたりする」
――根気も必要ですね。
「僕は、ネコへの “思いの強さ” が重要な気がしています。大好きな相手なら、待っているという感覚がなくなるんですよ。『ネコだもんね』という気持ちになる。
確かに、何時間もカメラを構えていることはあります。でもそれは、待っているわけではなくて、土地の匂いを感じたり、冷たい風が吹いたら『どこが暖かいのかな? ネコはどこに隠れているんだろう?』と想像していたり、ネコがいる環境を楽しんでいます」
――日本、とくに都会でネコを飼っている人から見ると、作品に登場する自由なネコたちを羨ましく感じます。
「完全室内飼いでも、ネコたちはけっして不幸ではないと思います。たとえ限られたスペースであっても、彼らは自由を獲得していますよ。
『ネコ歩き』では、よく外をパトロールするネコが出てきますが、家の中のネコもちゃんとパトロールしています。ただ、キャットタワーなどを置いて、上下運動だけは、できるようにしてあげてくださいね」
――では、かわいそうだと思わなくてもいい?
「もちろんです。大事なのは、比べないこと。そして、一緒にいてくれることに感謝すること。うちにもネコがいますが、僕は彼らによく言うんです。『ありがとう』、って」
いわごうみつあき
1950年11月27日生まれ 東京都出身 動物写真家。2012年からNHK BSプレミアムで『岩合光昭の世界ネコ歩き』の撮影を開始。2017年に映画『劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き コトラ家族と世界のいいコたち』を公開
●『劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き あるがままに、水と大地のネコ家族』2021年1月8日全国ロードショー
監督・撮影:岩合光昭
ナレーション:中村倫也
配給:ユナイテッド・シネマ
(C)「劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き2」製作委員会
(C)Mitsuaki Iwago
取材&文・工藤菊香
(週刊FLASH 2021年1月5日・12日合併号)