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名曲散歩/山下久美子『赤道小町ドキッ』 家出娘がつかんだ栄光
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2021.03.07 16:00 最終更新日:2021.03.07 16:00
東京・神田の古いビルの2階。そこには夜な夜な紳士淑女が集まり、うんちくを披露しあう歌謡曲バーがあるという。今宵も有線から、あの名曲が流れてきた。
お客さん:お、このイントロは山下久美子の『赤道小町ドキッ』。“総立ち久美子” のキャッチフレーズが懐かしい!
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マスター:“元祖・学園祭クイーン” だね。山下久美子は大分県別府市生まれ。16歳のときに家出して、博多のライブハウスで歌っていたところを渡辺プロダクションにスカウトされ、上京した。
お客さん:アグレッシブな青春時代だねえ!
マスター:そして1982年、カネボウ化粧品のタイアップ曲である6枚目のシングル『赤道小町ドキッ』をリリース。広告代理店がタイトルを『赤道小町』と決めたうえで、シンガーは山下久美子でお願いしたい、と直々にオファーしてきたという。
お客さん:その頃すでに “総立ち久美子” と呼ばれていたから、その躍動感と『赤道小町』というタイトルはピッタリ合っているよね。
マスター:そして作詞は松本隆、作曲は細野晴臣に決まった。
お客さん:揃ったね、一流どころが!
マスター:ただ、ふたりとも超売れっ子だけに、突貫工事だったという。細野晴臣から届く曲の一部分にその都度、松本隆が歌詞を載せていくという工程を繰り返し、3日ほどで完成したそうだ。
お客さん:プロはそういう芸当ができるんだ!
マスター:しかも、レコーディングのドラムには高橋幸宏が参加する豪華版だった。この大ヒットで山下久美子の名前は日本のすみずみに知れ渡る。
お客さん:『ザ・ベストテン』(TBS系)では、なぜか象に乗って歌う姿が忘れられない。
マスター:ただ、ヒットしたのはよかったんだけど、本人はどこに行っても「あの『赤道小町』の山下久美子」と形容されることに抵抗があったという。
お客さん:『赤道小町』だけが私じゃない! っていう思いがあったのかな。
マスター:それでも、年月が経った今では『赤道小町』があってよかった、と心から思えるほど、大好きな曲になっているというよ。
お客さん:大ヒット曲をもつシンガーが必ずぶつかる壁、それを乗り越えたんだね。
おっ、次の曲は……。
文/安野智彦
『グッド!モーニング』(テレビ朝日系)などを担当する放送作家。神田で「80年代酒場 部室」を開業中
参考:山下久美子『ある愛の詩』(幻冬舎)/富澤一誠『J-POP名曲事典300曲』(ヤマハミュージックメディア)/『昭和40年男 Vol.38』(クレタパブリッシング)/TOKYOMX『ミュージック・モア』(2020年10月3日)