「私、人間じゃないの」
先週水曜放送の『恋はDeepに』(日本テレビ系)第4話ラストで、石原さとみ演じる主人公・渚海音が発した衝撃のフレーズだ。
番組スタート前は、海を愛する海洋学者の海音とツンデレ御曹司・蓮田倫太郎(綾野剛)のラブコメという触れ込みだった本作。しかし、第1話から海音が水槽の中にいるウツボなどの海洋生物たちと会話するシーンや、海で溺れていた倫太郎を何らかの方法で救出するシーンなどで話題を集めていた。
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ファンタジー要素のあるラブコメであることは示唆されていたが、ついに第4話で海音本人の口から人外であることがカミングアウトされた形だ。海音がどういった存在なのか、まだ具体的には定かになっていないが、SNS上では人魚説などが取りざたされている。
■30代女優が演じるには設定の詰めが甘すぎる
ツッコミどころが多々ある『恋はDeepに』だが、筆者が一番引っかかっているのが海音の主義・主張の偏りである。
本作は、倫太郎の企業が進める海中展望タワー計画を目玉とした星ヶ浜海岸のマリンリゾート開発に、海音が反対するという対立構図がストーリーの軸となっている。
海音は海に暮らす魚たちの暮らしを守るという理由で反対していたが、人魚などの人外であることがほぼ確定したため、彼女が不自然なほど徹底的に海洋生物視点で主張していた伏線が、回収されたと言えるだろう。
海音の故郷が星ヶ浜海岸で、海洋生物たちを仲間と認識しているなら、この海中展望タワー計画を阻止しようとする気持ちはわかる。
しかし、である。
海洋生物たちが仲間なのであれば、マリンリゾート計画に反対する前に、もっと人間たちの暴挙に異を唱えるべきでは……と思ってしまうのだ。
世界中の人間たちが魚介類を食べるために漁をしている。
海音からすれば、これは仲間たちへの大量虐殺行為なのではないのだろうか?
人類も広い意味では同じ地球上の仲間であるから、“人間も生きるために必死だから海洋生物を食べるのも仕方ない” という寛大なお心なのだろうか?
百歩譲って、生きるために最小限の漁をしているだけならいいが、飽食の国が必要以上に乱獲していることもある。海洋生物視点で見れば、これってマリンリゾート計画なんかより、よっぽど問題視すべきではないだろうか?
確かにマリンリゾート計画は人間が生きるために必要ではないし、ただの人間のエゴだということは否定しない。けれどマリンリゾート計画は海洋生物たちを “強制立ち退き” させる程度で、漁業での乱獲は海洋生物たちへの明確な “大量虐殺” なのではないだろうか?
――ラブコメにこういった視点を持ち込むのは野暮なのかもしれない。
けれど、海音の正体が本作の大きなキーポイントになっているのは間違いないし、ラブコメ作品といっても主演の石原は30代の大人の女優なのだから、主人公の主義・主張の筋が通っていて納得できるかは、やはり重要だ。
30代でこのファンタジー設定の役を演じ、しかもきっちり “かわいさ” で魅了している石原さとみは女優として素晴らしいと思う。だからこそ、設定の詰めの甘さは出さず、大人の女優が演じるうえで説得力のあるストーリーにしてもらいたかった。
本作のここまでの平均視聴率は、第1話10.5%、第2話8.9%、第3話は8.3%、第4話8.6%と、初回以降は8%台でやや低空飛行。
(※視聴率はビデオリサーチ調べ/平均世帯視聴率/関東地区)
海音の「私、人間じゃないの」発言の続きが気になる第5話は、9%台や10%台に乗せられるだろうか。今夜22時放送である。
●堺屋大地
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『週刊女性PRIME』『日刊SPA!』などに寄稿中