■同じ時代を走ってきた同志と一緒に歌う……
――阪神・淡路大震災のチャリティソングを歌ってくれないか?
お話をいただいたわたしは、その場で快諾しました。というか、むしろ、ぜひ歌わせてほしいと、こちらからお願いしたいほどでした。
作曲家の杉本真人先生、作詞家のたきのえいじ先生が中心となって出来上がったのが、阪神・淡路AID SONG『心の糸』(1995年発売)です。
ご指名をいただいたのは、香西かおりさん、伍代夏子さん、長山洋子ちゃん、藤あや子さんとわたしの演歌5人娘(と呼ぶには、ややとうが立っておりますが……苦笑)。
レコード会社の枠を超えた企画で、当時はみんなスケジュールがびっしり。そのため、レコーディングも別々でした。
みんな揃って歌ったのは……2回? 3回? それくらいだった記憶があります。
最後に歌ったのは、2年前の9月、NHK-BSの『演歌フェス』。ただ……このときは、洋子ちゃんが病気のために出演できなくなってしまって。
それでなくても、同じ時代を走ってきた同志と一緒に歌うと、いろんな思い出が頭の中に浮かんできて……。楽しかったことも、苦しかったことも、嬉しかったことも、全部です。
目と目が合った瞬間、そういうものが全部甦り、感極まって涙腺がゆるんじゃうんですけど、このときは、“洋子ちゃん、頑張れ!” という思いもあって……。
香西さんも、夏子さんも、あや子さんも、最初から目はうるうる。特に、洋子ちゃんのパートを歌うことになったわたしは、涙をこらえるのに必死でした。
一人じゃなんにもできないけれど、5人揃えばできることがある――。
収益金は日本赤十字社に寄付させていただきました。被害に遭われた方々の思いには遠く及びませんが、力を合わせれば、少しかもしれないけれど、お役に立てることだってある。
歌うことで、皆さんが元気になっていただけるなら、勇気や希望を持っていただけるようになるなら、わたしは、これからも歌い続けます。いつまでも、変わらずに。
さかもとふゆみ
1967年3月30日生まれ 和歌山県出身 『祝い酒』『夜桜お七』など数多くのヒット曲を持ち、『また君に恋してる』は社会現象にもなった。最新シングル『ブッダのように私は死んだ』を含む、35周年記念ベスト『坂本冬美35th』が発売中
写真・中村功
構成・工藤晋
(週刊FLASH 2021年6月8日号)