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100億円vs.15億円…劇場版『エヴァ』と『ガンダム』興行収入に差がつく「観てない人にはわからない」理由
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2021.07.07 19:10 最終更新日:2021.07.07 19:11
2大ロボットアニメともいえる『エヴァンゲリオン』と『ガンダム』シリーズ。くしくも現在、両作の最新映画が公開中だ。
3月8日公開で、今もロングラン上映されている『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の興行収入は、約97.5億円(7月4日時点)と、100億円の大台間近で盛り上がっている。一方、6月11日公開の『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の興行収入は、約15億円(7月3日時点)と、大きく水をあけられているのである。
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もちろん『ガンダム』より、3カ月も前から『エヴァ』が公開されていたというアドバンテージはある。だが、『ガンダム』は公開から約3週間で15億円超だが、『エヴァ』は公開3週間時点で60億円を突破していた。
このことからも、『エヴァ』が100億円を目標にしているのに対し、『ガンダム』が20億円を目指している段階というのは、いささか寂しさを感じる方もいるのではないだろうか。じつはこの差には、いくつかの明確な理由があるのだ。
■ビジネス展開の違い……じつは『ガンダム』の売上高は驚異的
そもそも今回の両作の映画は、それぞれのシリーズにおける “立ち位置” が違う。
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』は、2007年からスタートした『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』4部作の最終作。さらに言うなら、1995年にテレビ放送が開始した『新世紀エヴァンゲリオン』をも包括した、すべての『エヴァ』シリーズを完全完結させる集大成的作品なのである。
かたや『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』は、ざっくり言うと数多くある『ガンダム』シリーズのひとつにすぎない。また、映画の3部作となる『閃光のハサウェイ』の第1部なのだ。
あくまでシリーズのひとつにすぎない今回の『ガンダム』は、全シリーズのグランドフィナーレを迎えている『エヴァ』の、お祭り的な盛り上がりには及ばないのだろう。
理由はそれだけではない。
簡単に言うと、『エヴァ』は興行収入を稼ぐために躍起になっているのだが、『ガンダム』は興行収入で記録を作るつもりは、はなから考えていないビジネスを展開しているのだ。
『エヴァ』は興行収入が70億円~80億円台に達したころから、庵野秀明総監督と主人公・碇シンジを「100億の男へ」という空気感が醸成されていた。エヴァファンが庵野&シンジを“100億の男”にするためにリピーター化していたが、それだけでなく運営側も興行収入を稼ぐための施策に余念がなかったのである。
それが如実に表われていたのが、公開から3カ月経ったころに投入された入場者特典「EVA-EXTRA-EXTRA」。これは36ページにも及ぶ冊子で、3部めにあたる『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』の前日譚が、初めて描かれた漫画も収録されているというファン垂涎の一品なのだ。
すでに劇場で3回鑑賞していた筆者も、この「EVA-EXTRA-EXTRA」ほしさに4度めの鑑賞をおこなったが、この冊子は価値ある豪華な入場者特典であると感じた。もうリピートはいいかと考えていたエヴァファンを、もう一度劇場に向かわせるのに十分なブースト効果があっただろう。『エヴァ』の運営側は、有料で販売してもいいクオリティの冊子を追加で無料配布するぐらい、なりふり構わずリピーター獲得を狙い、興行収入の記録を伸ばすことにこだわっているのだ。
では『ガンダム』はどうかというと、じつは最初から興行収入の記録を狙っているビジネスではない。『ガンダム』も入場者特典の配布はおこなっているが、基本的にはリピーター獲得を度外視した戦略を打っていたのである。
今回の『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』に限らず、近年の『ガンダム』映画の多くは、劇場で公開したその最新映画のDVDやBlu-rayを、公開初日から劇場内のショップで販売するというトリッキーなビジネス展開をしているのである。
普通はその作品の劇場公開が終わり、数カ月や1年ほど経過してからDVDやBlu-rayが発売されるのがセオリーだろう。だが近年の『ガンダム』映画は、その固定観念をぶっ壊し、劇場で観たばかりの映画をその日のうちに自宅でもDVDやBlu-rayで鑑賞できるという荒業を採用。それはもちろん、ガンダムファンにたくさんのお金を落としてもらうためだ。
今回の『ガンダム』のBlu-rayは、劇場先行通常版5000円、劇場限定版12000円の2種となっている。映画館のショップで鑑賞チケットを見せないと購入できないため、通常版購入であれば2、3回ほどリピートした金額、劇場限定版購入であれば6回ほどリピートした金額を『ガンダム』に落としていることになる。
ちなみに筆者は、『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』をかなりの傑作映画だと感じたが、劇場のリピーターにはなっていない。なぜなら、12000円の劇場限定版Blu-rayを購入し、自宅で4、5回鑑賞しているからだ。Blu-rayが販売されていなければ、2、3回は劇場に足を運んでリピートしていたことだろう。
つまり『ガンダム』は、コアなファンほどBlu-rayを購入しているため、リピーター度外視のビジネス展開をしているといえる。初めから興行収入に依存しておらず、興行収入の記録よりも現実的なカネを狙いにいっているというわけだ。
余談だが、バンダイナムコグループが発表している『ガンダム』関連事業の売上高は、2020年度が約950億円、2019年度が約780億円という破格の数字を叩き出している。『ガンダム』は映画の興行収入やBlu-rayの販売といった映像コンテンツよりも、ガンプラを始めとしたホビー系トイの売り上げが驚異的だからだろう。
――2大ロボットアニメ対決は、最新映画の興行収入では『エヴァ』がこのまま圧勝するだろうが、全体のビジネス規模でいえば、毎年毎年、何百億円という売上高を誇る『ガンダム』に軍配が上がるということだ。
●堺屋大地
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『週刊女性PRIME』『日刊SPA!』などに寄稿中