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「フィッシュマンズ」のすべて…スカパラ茂木欣一×手嶋悠貴監督、今だから話せる苦悩と葛藤

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2021.07.08 20:00 最終更新日:2021.07.08 20:00

「フィッシュマンズ」のすべて…スカパラ茂木欣一×手嶋悠貴監督、今だから話せる苦悩と葛藤

(C)2021 THE FISHMANS MOVIE

 

 1991年にアルバム『Chappie, Don't Cry』でメジャーデビューし、1996年にリリースした『空中キャンプ』からの「世田谷」3部作で、ダブやエレクトロニカ要素の強い楽曲を奏で、日本の音楽シーンに独自の地位を築いたバンド、フィッシュマンズ。

 

「ブレイク前にもかかわらず所属レーベルのポリドールがフィッシュマンズ専用のレコーディングスタジオを都内に用意した」「日本初35分16秒の1曲のみ収録のアルバム『LONG SEASON』を発売」など、様々な逸話を持つフィッシュマンズ。1999年、ほとんどの楽曲を手掛けていたボーカルの佐藤伸浩氏が急逝し、バンドは世間的な大ブレイクを果たさないまま、伝説的となった。

 

 

映画:フィッシュマンズ』(7月9日より公開)は、バンド結成から現在の歩みまでを、生前の佐藤氏の貴重な映像や、現メンバー、元メンバーたちの証言で構成した172分に及ぶドキュメンタリー作品だ。このバンドがどのように楽曲を作り上げていったのか。映画では、各メンバーの葛藤を含め、その実像が赤裸々に描かれている。

 

 この作品を手掛けた手嶋悠貴監督と、フィッシュマンズのオリジナルメンバーのひとりで、現在は東京スカパラダイスオーケストラのメンバーとして活動する茂木欣一に話を聞いた。

 

――フィッシュマンズを題材に映画を撮った理由を教えてください。

 

手嶋「2018年にプロデューサーの坂井利帆さんと別の映像のお仕事をしていたら、突然『フィッシュマンズの作品を撮りたい』といわれたんです。そのときは映画になるのかさえ、決まっていなかったのですが、『とにかく動きましょう』と、すぐに茂木欣一さんと会わせてくれたんです」

 

――手嶋監督もフィッシュマンズのファンだったのですか?

 

手嶋「大学時代に『ナイトクルージング』を聴いたのが最初の出会いだったと思います。2001年のことで、もう佐藤さんは亡くなられていたのですが、ずっと好きなバンドですね」

 

――本作では、フィッシュマンズ最後のメンバーである茂木さんだけでなく、途中で脱退したメンバーまでもが、バンドの内情を語っています。この作品へ出演するには相当な覚悟が必要だったのでは、ないでしょうか。

 

茂木「『こんな機会は生涯で一度だけ』という覚悟で本作に関わりました。全メンバーやサポートメンバーがここまでフィッシュマンズについて語るのは、この映画1回限りだと思います」

 

――茂木さんや他のメンバーの方々が、そこまでこの作品に向き合えた理由を教えてください。

 

茂木「この映画の制作資金の集め方がクラウドファンディングを利用すると聞いたことですね。フィッシュマンズの音楽を愛してくれる人からお金を募るということだから、バンド的には最大限の協力をして、絶対的なオフィシャル作品を作ったほうがいいと思ったんです。

 

 2019年の1月、全メンバーに『今回だけでいいから、今まで言えなかったこと、言いづらかったことも、すべて語ってもらえないか』と話したんです」

 

――元メンバーの小嶋謙介氏(ギター担当)、HAKASE-SUN(キーボード担当)、柏原譲(ベース担当)が脱退時や脱退後の心境や苦悩を、正直に語っていて驚かされました。手嶋監督との間で、どうやって信頼関係が構築されたのでしょうか。

 

手嶋「すべては時の流れのなかの、タイミングで起きたことなのだと思います。佐藤さんの没後20年という節目の2019年に、佐藤さんの声を使ってフィッシュマンズがライブをやった。新しい何かが20年目の節目で皆さんの中に芽生えたのが、肌感覚でわかりました」

 

――音楽誌でも掲載されていないようなことが多く、驚きました。

 

手嶋「僕自身、フィッシュマンズは深堀りしてはいけないバンドだと思っていました。映画のためにいろいろと調べたのですが、初期メンバー脱退の理由や真相は記録に残っていないし、濁されていました。佐藤伸治という人間像も掴みどころなく濁されている。僕が知りたいのは、フィッシュマンズのすべてでした。それをなんとか描きたいという思いで必死でしたね。

 

 映画として撮るには、信頼関係を築くのがやはり大切だったので、本当に皆さんには、しつこくお話をうかがいました。ご本人たちも覚悟を決めて話してくださっているのが撮っていてわかりました」

 

――茂木さんや脱退したメンバーは、フィッシュマンズとしての過去を、これかで振り返る瞬間はなかったのですか。

 

茂木「やめたときの心境とか一度も話し合ったことはなかったんです。メンバーが再び集まってからも、音を奏でることに精一杯でしたし。今回の映画で初めて知ったメンバーの気持ちもたくさんあったんですよ。

 

 バンドをやめた後、ギターの小嶋さんが『最新アルバムを聴いて自分の居場所はないと思った』、脱退後のHAKASE-SUNが『佐藤君の訃報で心を病んでしまった』、ベースの譲が『エンジニアのZAKが作品により深く関わるようになり、ベースラインまで完璧なデモテープを作ってきて、ベーシストとして自分のやることがないと感じた』……。

 

 こういった元メンバーたちの証言は、僕も完成した映画を観るまで知らなかったことばかりでした。それでも、メンバーひとりひとりの中に、常にフィッシュマンズへの愛情があったということを、改めて思い知りましたね。

 

 各メンバーがフィッシュマンズを愛してないと、いいことも悪いことも、ここまでは語ってくれない。メンバーたちが語っている姿を映像で見て、それを引き出した手嶋監督は本当にすご いと思いました。今では手嶋監督こそが、誰よりもフィッシュマンズのことを知っている人物だと思います」

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