エンタメ・アイドルエンタメ・アイドル

名曲散歩/沢田研二『勝手にしやがれ』 才能ある裏方のチームワークが結晶

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2021.08.22 16:00 最終更新日:2021.08.22 16:00

名曲散歩/沢田研二『勝手にしやがれ』 才能ある裏方のチームワークが結晶

 

 東京・神田の古いビルの2階。そこには夜な夜な紳士淑女が集まり、うんちくを披露しあう歌謡曲バーがあるという。今宵も有線から、あの名曲が流れてきた。

 

お客さん:お、このイントロは沢田研二の『勝手にしやがれ』。ピアノのイントロからしびれるねえ!

 

 

マスター:1977年リリース、この年のレコード大賞を受賞。作詞・阿久悠、作曲・大野克夫、89万枚を売り上げた沢田研二の代表作だ。

 

お客さん:ジュリーのむせかえるような色気が、子供にも伝わったよなあ。

 

マスター:阿久悠も自身の代表作と認める傑作中の傑作。「1970年代、男と女がまっすぐに愛することに照れた時代を歌で描いた」と後に語っている。

 

お客さん:阿久悠と大野克夫といえば、『時の過ぎゆくままに』『憎みきれないろくでなし』『サムライ』『ダーリング』など多くの楽曲をジュリーに提供したコンビだよね。

 

マスター:このコンビとともに、この頃のジュリー作品の編曲を手掛けたのが船山基紀だ。いまや大御所中の大御所だけど、当時は20代半ばの青年。

 

お客さん:まだ駆け出しだったんだ。

 

マスター:当時ヤマハに所属していた船山基紀は、ポプコンやフォークソングのアレンジが主な仕事だったため、ジュリーの音楽プロデューサーだった木崎賢治から「売れる音楽のノウハウ」を徹底的に叩き込まれたという。

 

お客さん:例えば?

 

マスター:木崎賢治は売れる曲を具体的に説明できる人だったという。「ここでタン・ターン! と上がると売れるけど、タン・ターン、と下がると売れないよ」とか。

 

お客さん:なるほど。感覚を言語化できるんだね。

 

マスター:『勝手にしやがれ』は沢田研二に相応しい派手な感じで、というオーダーを受けた船山基紀が骨太でワイルドな編曲に仕上げた。

 

お客さん:ここで信頼と実績を作り、のちに大編曲家になるわけだ!

 

マスター:当時のジュリーはシングル→アルバム→シングル→アルバムと次々にリリース、しかも出せば売れる状況だったから、船山基紀はステージ用の譜面づくり、テレビのビッグバンド用の譜面づくりと大忙し。1年中、ジュリーの仕事をしているようだったと回想している。

 

お客さん:こうした才能ある裏方のチームワークがあって、ヒット曲が生まれるんだねえ。

 

 おっ、次の曲は……。

 

文/安野智彦
『グッド!モーニング』(テレビ朝日系)などを担当する放送作家。神田で「80年代酒場 部室」を開業中

 

参考:船山基紀『ヒット曲の料理人 編曲家・船山基紀の時代』(リットーミュージック)/阿久悠『歌謡曲の時代 歌もよう人もよう』(新潮社)

続きを見る

今、あなたにおすすめの記事

エンタメ・アイドル一覧をもっと見る